JR東日本は2022年4月5日、プレスリリースにて2023年3月に電車特定区間内に加算運賃を設定すると公表した( バリアフリー設備の整備を促進します~ホームドアは整備を拡大・加速~ )。今回はこれについて見ていく。
電車特定区間内で値上げへ
今回の2023年3月JR東日本運賃改定では、電車特定区間内に普通運賃10円の加算運賃を設定する。
JR東日本ではこれまで新線開業や特定都市鉄道整備事業計画に係る加算運賃を一切設定していない(もっとも成田空港線成田~成田空港間など加算料金を設定してもおかしくない新線開業は行っているにもかかわらず、設定がない)。しかし今回のJR東日本運賃改定では、電車特定区間内のほぼ全区間で普通運賃一律10円の加算料金を設定し事実上値上げするのである。
今回の加算運賃設定では、電車特定区間のみで利用が完結する場合に限り鉄道駅バリアフリー料金制度として普通運賃で10円、通勤定期1か月280円を設定する。
これによりバリアフリー化にかかる費用の一部を加算運賃から徴収する見込みだ。
この加算運賃は届出のみで設定ができるため、国土交通省の認可の必要がない。このため値上げの突破口としているようだ。
そもそも近年開業している新線はそもそも運賃が高く、工事費にもホームドア設置費用が織り込み済みである。このためゆりかもめは初乗りIC189円、東京都交通局日暮里舎人ライナーもIC168円とかなり高い。しかも10km程度で300円を超すなどかなり割高な設定となっている。
それに比べJR東日本は初乗りはIC136円と他の鉄道各線と同レベルではあるものの、その後は15kmまで157円、168円、220円(山手線外)とかなり安いし、20kmまでもIC308円と周辺大手私鉄と互角である。
そんな1986年9月1日の国鉄運賃改定から36年間運賃値上げを行っていないJR東日本が、しかも2020年からの旅客減で赤字となっている中で運賃収入のみからホームドア設置費用を捻出しきれるはずがない。
そう考えると、今回の普通運賃一律10円の値上げは妥当な範囲内であるし、10円の値上げで旅客がそんなに逃げることはないだろう。
この加算運賃の徴収開始により、2023年3月よりJR東日本の東京電車特定区間の初乗りはIC136円から146円に値上げする見込みだ。
なお通学定期は加算運賃の対象外としているが、こども普通運賃は5円の加算を行うことを考えると公平な負担とは言えない。そう考えると通学定期もある程度加算運賃を設定に値上げすべきだとは思うが。まあ、JR東日本の通学定期は大手私鉄と比べてもかなり割高なので、そこから値上げすれば旅客が逃げると思われるのだろう。
なお電車特定区間とその外を乗り越す場合は今回の加算運賃は設定対象外である。このため幹線運賃・地方交通線運賃の値上げはない。
これにより八王子~拝島間や千葉~稲毛海岸間などの電車特定区間相互駅間であるものの最短経路が電車特定区間運賃ではない区間は値上げをしない見込みだ。
私鉄などでも10円値上げ実施へ
今回の2023年3月~4月の全国各社運賃改定では、JR東日本同様他社でも鉄道駅バリアフリー料金制度に伴う運賃改定を行う。
現在東京都市圏で2023年3月ごろの鉄道駅バリアフリー料金制度に伴う普通運賃10円値上げを表明してるのは東京メトロ、小田急電鉄、西武鉄道で、このほか京浜急行電鉄や東武鉄道も検討するとしている。
また大阪都市圏ではOsaka Metro、阪急電車、阪神電車。京阪電車、山陽電車、神戸電鉄にて2023年4月ごろより鉄道駅バリアフリー料金制度に伴う普通運賃10円値上げを行うと表明している。
西日本各社と東京メトロは通勤定期大人1か月360円~380円程度の加算なのに対し、小田急電鉄と西武鉄道は1か月で600円のほぼ無割引で徴収する見込みだ。
なお鉄道駅バリアフリー料金制度を導入する見込みのない東急電鉄や近畿日本鉄道では運賃自体の値上げを行う。また2023年3月に開業予定の東急新横浜線・相鉄新横浜線では加算運賃を当初の予定より50円および40円引き上げることとした。
結び
今回の2023年3月JR東日本運賃改定では、会社設立以降初となる加算運賃の導入に伴い電車特定区間内で一律10円の値上げを図ることとなった。
今後JR東日本でどのような運賃を設定していくのか、見守ってゆきたい。
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