東北新幹線の脱線車両修理費はJR北海道に請求し実質国費負担へ! スキームの整備なるか

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東北新幹線の脱線車両修理費はJR北海道に請求し実質国費負担へ スキームの整備なるか

HTB北海道テレビは2022年4月11日、プレスリリースにて2022年3月16日に発生した脱線事象の車両復旧費をJR北海道が負担する見込みだと報じた( 地震で脱線の新幹線車両 修理費負担はJR北海道に )。今回はこれについて見ていく。

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東北新幹線内での脱線車両修理費をJR北海道が負担へ

今回の最大震度6強を観測した2022年3月16日福島県沖地震の影響でH5系H2編成及びE6系Z9編成17両中16両が脱線・被災し、当該車両を通常通り運転させるには修理が必要となっている。

東北新幹線はJR東日本の管轄する路線だが、JR北海道の北海道新幹線と相互直通運転を行う関係でJR北海道のH5系も乗り入れている。今回被災した車両のうち10両はH5系であることからJR北海道所属の車両となっている。

今回の復旧にあたり車両修理費が発生するわけだが、このうちH5系10両に関しては車両を保有しているJR北海道が負担することになる見込みだと報道している。

もっとも今回の脱線事故は地震の影響とはいえJR東日本管内で起きたためJR北海道が負担するのはかわいそうと思うかもしれない。ただ、JR北海道には国からの資金援助があるため、JR北海道に請求したとしても請求分は実質全額国費負担になる。つまりJR北海道の財布は痛むことはない。

むしろJR東日本に費用負担ともなれば、国費補助もなければ2年連続で赤字で資金がないわで踏んだり蹴ったりである(もっとも万年赤字鉄道会社には国費補助としてある程度の額は出るが、全額ではないしつい3年前まで黒字だったため費用補助が出ない可能性は高い)。しかもJR東日本では他社でもほとんど行っていない実質無利子1年社債の発行や、ユーロ建て社債の発行を行うなど資金繰りは良いとは言えない。

そう考えると間接的に国費負担とするためにあえてJR北海道に請求させているのではないだろうか




今回の修理費国費負担は不公平なのか?

日本ではこれまで阪神淡路大震災や東日本大震災などの大規模な災害により鉄道も大きく被災してきたわけだが、落ち度がない自然災害であっても復旧費用は基本的に鉄道会社持ちとなっていた

もっとも自社努力だけで費用を賄え原状復帰できることも多いが、1995年1月17日の阪神淡路大震災後の同年9月1日には被災した阪急電鉄や阪神電鉄にて大幅な運賃値上げを行ったほか、JR東日本では2011年3月11日の東日本大震災で被災した気仙沼線と大船渡線のそれぞれ一部区間で鉄道としての復旧をあきらめることとなった。

ただ震度7の大規模な震災の際の復旧を自前でやらせたのに震度6強の地震で激甚災害に指定していない区域(今回の地震で激甚災害に指定した地域は福島県新地町のみであり、当該地域は東北新幹線は通っていないため激甚災害の対象外となっている)での国費負担(もっとも国費負担のスキームがないため一時的にJR北海道に請求する裏技に出ているが)で復旧するというのは不公平だと言われてしまえばそれまでかもしれない。

ただ、新幹線や通勤電車と言った国土の機軸を支える幹線鉄道であるため、不通により地域経済に大きな影響が出ている。それを踏まえると大規模な自然災害により被災した幹線鉄道を国費で復旧させること自体は矛盾はしないし、世論も納得してくれる可能性が高い

今回はJR北海道という裏技を使ったためかなりトリッキーな方法で一部国費負担としているが、今後は国土交通省が中心となって国費補助スキームを立てるべきではないだろうか。




今後地震による不通復旧時の国費負担スキームはできるのか

では地震による不通復旧時に新幹線を含む幹線鉄道で国費補助を行うスキーム(仕組みづくり・制度化)はできるのだろうか。

そもそもJR東日本と政治家・官僚との間にはかなり太いパイプがあるとされる。東京駅周辺では東京駅自体の復元工事費をねん出するために空中権移転を可能にし売買するために都市計画法及び建築基準法を国会に改正させたほどだ。

また国土交通省への上限認可が必要なICカードによる1円単位の導入やバリアフリー設備導入に伴う加算運賃の設定などもJR東日本が旗振りとなって国に働きかけ制度を制定したとされる。

災害復旧関連では只見線の上下分離の復旧のように、鉄道会社が黒字でも赤字路線では設備を県などの地方自治体に持たせることで復旧できるようになっている。そう考えると赤字ローカル線よりはるかに利用者数が多く他業種への影響も大きい新幹線を含む幹線鉄道の復旧に国費から拠出すること自体は制度設計的には問題はない。

もっともこのご時世で利用者が減っておりJR東日本が万年赤字になれば災害復旧時に国費補助が出るようにはなるが、完全民営化し一民間企業となった現在では万年赤字では株主が許さない(というか資金繰り的にそんなことを言っている場合ではない)。そう考えると、今後の将来的な自社負担を減らすためにもJR東日本主導で地震復旧時の国費負担スキームをつくりに取りかかる可能性はありそうだ


結び

今回の脱線事象に伴う車両修理費のJR北海道が負担する件は、実質的に国費負担となるためJR北海道の経営を圧迫することはまず考えられないほか、今後地震などの大規模災害時に一部を国費負担とするスキームの制作にとりかかれるカギになり得る。

今後地震の復旧の際にどのような国費負担スキームを設けるのか、見守ってゆきたい。

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