新車大量投入に向け最大20%値上げへ 近畿日本鉄道運賃改定(2023年4月1日)

新車大量投入に向け最大20%値上げへ 近畿日本鉄道運賃改定(2023年4月1日)

近畿日本鉄道は2022年4月15日、プレスリリースにて2023年4月1日に運賃改定を行うと公表した( 鉄軌道旅客運賃の改定を申請しました )。今回はこれについて見ていく。

27年ぶりの値上げへ

今回の2023年4月1日近畿日本鉄道運賃改定では、消費税増税に伴う運賃改定を除くと1995年9月1日近畿日本鉄道運賃改定以来約27年7か月ぶりに運賃改定を行う。

改定率は定期外で17.2%、通勤定期で18.3%とかなり大幅な値上げとなる。

これにより初乗りは160円から180円に値上げしOsaka Metro並みとなるほか、けいはんな線では加算運賃まであることから、初乗り200円から220円にまで値上げする。具体的な運賃は以下の通り。

近畿日本鉄道運賃改定比較

営業キロ(km)2019/10/1
消費税率改定
2023/4/1
改定後
主な区間
1~3160180
4~6210240
7~10260300大阪難波~布施間・大阪阿部野橋~河内松原間
11~14300360大阪難波~近鉄八尾間・大阪阿部野橋~藤井寺間
15~18360430
19~22410490大阪難波~生駒間
23~26450530近鉄名古屋~桑名間
27~30500590
31~35570680大阪難波~近鉄奈良間・大阪難波~五位堂間
36~40640760京都~近鉄奈良間・近鉄名古屋~近鉄四日市間
41~45700830大阪難波~桜井間
46~50770910
51~558401000
56~609001070京都~橿原神宮前間
61~659601140
66~7010201210大阪難波~名張間・近鉄名古屋~津間
71~7510901290
76~8011601370
81~8512201450
86~9012901530近鉄名古屋~松阪間
91~9513501600
96~10014101670
101~11014701740近鉄名古屋~伊勢市間
111~12015901880
121~13017202040大阪難波~津間
131~14018302170
141~15019502310
151~16020502430
161~17021602560
171~18022902710
181~19024102860大阪難波~近鉄名古屋間
191~20025303000
201~21026403130
211~22027703280
221~23028803410
231~24030003560
241~25031103690




普通運賃は11キロ~40キロでは現行運賃より20%増(ただし1円未満切り捨て)、41キロ~190キロでは19%増(ただし1円未満切り捨て)、191キロ超では18.5%増(ただし1円未満切り捨て)としている。なお初乗り運賃180円はOsaka Metroと同額にするためで、そこから1区ごとに4区まで60円ずつ加算する等差数列として調整している。

このため長距離では多少値上げ率を緩和しているとはいえ、今回の近畿日本鉄道運賃改定では普通運賃は従来比原則2割増になると言っていい

このほか重箱の隅をつつくとすれば、南大阪線大阪阿部野橋駅2009年3月20日に駅位置を移設し河堀口との営業距離を0.1km短縮した。この影響によりは区間例にも記載した大阪阿部野橋~河内松原間は10.1kmから10kmに短縮し運賃が値下がりしているため、今回の運賃改定で元の水準に戻ることになりそうだ。

大阪難波~近鉄名古屋間が約2時間かかる特急ひのとりレギュラーシートで4,990円とほぼ5,000円ぽっきりの意味深価格となっている。ただJR東海ツアーズの東海道新幹線経由のぷらっとこだまが名古屋~新大阪間約1時間で4,600円と考えると割高に見えてしまうし、約3時間かかる高速バスの名神ハイウェイバスで3,060円で、高速バスでもWILLERなら最安2,000円から利用できてしまうことを考えると、近鉄名阪特急がどっちつかずでただ割高になってしまった感は否めない。

なお関西大手私鉄5社では1974年7月20日運賃改定で対キロ区間制を一斉導入したほか、その後全ての運賃改定日が揃っている。そう考えると2023年4月1日に近鉄が運賃改定するということは、阪急阪神京阪南海の4社も同時に運賃改定を行う可能性が高い




高い運賃水準は近距離でJR北海道並みへ

今回の2023年4月1日近畿日本鉄道運賃改定後の普通運賃は、他社と比べるとどうなるのだろうか。

もっとも初乗り普通運賃は関西大手私鉄でほぼ足並みをそろえた160円より20円高い180円に値上げし、Osaka Metroと同水準となる。いや、むしろ10km以上の区間は2割増(ただし1円未満切り捨て)であることを考えると190円に値上げしてもおかしくなかったはずで、Osaka Metroに合わせて初乗り180円にしたと言っても過言ではない。Osaka Metroの前身大阪市営地下鉄が2014年4月1日運賃改定で200円から180円に値下げしていなかったら今回の近鉄運賃改定で初乗り190円になっていてもおかしくはなかったことを考えると、近鉄の初乗り運賃を据え置かせたのは大阪市営地下鉄の運賃値下げを指示した当時の橋下徹市長様様である。

が、2区以降はOsaka Metroよりどんどん運賃が高くなってしまう。そもそもJR西日本の電車特定区間は初乗り130円、15kmまで220円の価格破壊レベルなのでもう話にならない。

結果、新しい近畿日本鉄道の普通運賃は25kmまではJR北海道幹線運賃と、50km~100kmはJR西日本幹線運賃とほぼ同じ水準となってしまった。おいおい、JR北海道はもう資金繰りが回らなさ過ぎた挙句に運賃値上げにこじつけたというのに、たった2年間赤字の大手私鉄の近鉄が近距離でJR北海道と運賃同水準はさすがに高くないか?

もっとも通学定期券の割引率は近鉄の方が高いため値段が安く抑えられているが、それでも通勤定期の半分程度の値上げ率9.2%程度の値上げを図ることとなった(まあそれでも競合するJR西日本に勝てるのだが)。




湯の山線・志摩線・吉野線では初乗り200円へ

ただ、近鉄には運賃加算区間がるため、初乗りが180円より高い区間が発生する。

鳥羽線は新線開業に伴う加算運賃、普通運賃にして10円~30円を設定しているため、初乗りは近鉄普通運賃に10円加算することとなる。これにより鳥羽線では初乗りが170円から190円に値上げすることとなる。

また湯の山線・志摩線・吉野線では近鉄基本運賃に対して20円~40円の加算額を設定しているため初乗りは近鉄普通運賃に20円加算することとなる。これにより湯の山線・志摩線・吉野線では初乗りが180円から200円に値上げすることとなる

しかもそもそも近鉄の新基本運賃ですら2007年10月1日に近鉄から分離した養老鉄道と比べても、普通運賃では15キロ以上、通勤定期では20キロ以上で近鉄基本運賃の方が高くなってしまう。しかも近鉄時代の養老線は湯の山線・志摩線・吉野線同様普通運賃で20~40円の加算運賃を設定していたため、もし養老線が近鉄のまま残っていたとしたら養老鉄道分離時と比べ初乗り運賃以外の全てで近鉄に残っていた方が高くなってしまう。

もっとも養老鉄道も運賃値上げの可能性はあるが、大規模な車両置き換えを必要としないこと、車両は中古でも構わないこと、地域鉄道事業者扱いとなるため投入費用の3分の1を国が補助してくれることから近鉄並みの大幅な運賃値上げは考えにくい。養老線沿線の皆さん、近鉄から分離してもらえてよかったね

けいはんな線、初乗り運賃は220円で東葉高速鉄道並みへ

最たるはけいはんな線。普通運賃にして40円~130円もの加算運賃を設定している。

今回の運賃改定では加算運賃には変更はないことから、けいはんな線では初乗り200円(大阪市交通局時代の地下鉄中央線とほぼ同レベル)から220円に値上げする。

また長田~生駒間の10.2kmで390円から450円に、長田~学研奈良登美ヶ丘間の18.8kmで540円から620円にそれぞれ値上げする。おいおい、もはや東葉高速鉄道並みの高額運賃なのだが

もっとも京王相模原線やJR北海道千歳線南千歳~新千歳空港間のように設備投資額の80%以上が回収されていれば加算運賃の引き下げを容易に行える(というか国土交通省から加算運賃を引き下げるよう指導が入る)のだが、けいはんな線の設備投資額の回収率はたった8%しかない。それでは到底加算運賃を引き下げようなんてことにはならない。

もっともけいはんな線が近鉄の一路線として開業したことで生駒で奈良線や生駒線に乗り換える際に別途初乗り運賃を徴収することはない。ただけいはんな線が近鉄と別会社の東大阪生駒電鉄として開業していたら東葉高速鉄道並みの高額運賃にはならなかっただろうに。




運賃改定のメインは新車の大量投入か

では今回の2023年4月1日近畿日本鉄道運賃改定はなぜ行うのだろうか。その目的の1つが一般型車両の大量置換えである。

もっとも他社では鉄道車両の置き換えを将来的に行うことを前提に運賃を組んでいるのだが、近鉄ではすでに資金繰りが良くなく、特急列車が物理的に乗り入れられず不採算路線だった養老線・北勢線・内部線・八王子線・伊賀線を分離したほか、2022年2月には13日間に渡り志摩線の終電を繰り上げ夜間の保守時間を拡大し経費節減に努めるほどにまでなってしまった。

その中でも近鉄では特急型車両の更新は徐々に進めてきたが、料金不要の一般型車両の投入は2008年を最後に行っていない。また2008年は奈良線に6両+2両の8両だけ、その前は2006年に大量投入してはいるが2007年はほぼ皆無、2008年もごくわずかであることを考えると、10両以上の新車を投入したのは2006年が最後になる。しかも2006年に大量投入したのは阪神なんば線全通に伴う直通化対応を迫られていたために製造したもので、直通対応化を伴わない車両置き換え目的でのみの新車投入は2004年が最後となる。

おかげさまでこの15年間ろくに一般型車両の投入をしなかったために車両の老朽化が進み、一般型車両1,412両中2024年までに製造後50年を超えるのは459両と32.5%にも上る。しかも製造後40年を超える置き換え予備軍も241両あり、合わせて49.6%にも上る。つまり近鉄は一般型車両の約半分が製造後40年も経過してしまうことになるのだ

伊賀鉄道ですら48年~50年程度で車両を置き換えた、というか置き換えさせるために分社化したほどなのに、会社本体がその後10年以上も老朽化車両をほぼ放置している始末である。もう通勤型新型車両を14年も投入していない近鉄だが、60年間同じ車両を使い続けるのは他の鉄道会社でも類を見ない。もはやもったいないを通り越して環境性能が悪すぎる

そこで製造後55年を経過する車両を対象に車両を置き換えべく、2024年度以降に新型通勤車両を投入することとなった。ただその車両投入資金がないため収入となる運賃を値上げし車両投入費に充てることとなる。つまり新車をつくるお金がないから運賃を値上げすると言っているようなものだ

ただよく考えてみれば新車に乗れるのは新車を投入したとに乗る乗客なので、従来車しかいない状態で運賃値上げしてしまったら不公平である。そう考えると今回の運賃値上げは新車は乗る人で公平に割り勘しましょうということになるから、単純明快で分かりやすい。




なお車両置き換えの対象は当面1974年までに製造した459両としているが、置き換え用の制作車両数はこれより減らすとしている。

そもそも近畿日本鉄道では1年~2年おきのダイヤ変更ごとに平日朝ラッシュ時を中心に減便し毎回10両~20両の運用を削減している。近畿日本鉄道では直近でも2022年9月にダイヤ変更を実施見込みであることから、その際にまた運用を減らす可能性は高い。

もっとも大阪線の10両編成は4両+2両+2両+2両で組んでいるが、新車投入時に製造費用のかかる運転台を削るため6両+4両などに再編する可能性が非常に高い。そうなると運転台がなくなった分乗車定員が増え同じ両数の場合1本あたりの定員が増えることから、供給調整として減車減便は当然行うこととなる。ただこの減車減便も運転台減少分による乗車定員拡大分程度しか行わないはずなので混雑率はそこまで上がらないはずだ。

また奈良線は直通する阪神電鉄が三宮まで近鉄8両編成が直通可能になったことで、平日も阪神芦屋を通過とすれば快速急行の8両固定編成化が可能だ。もし平日朝夕ラッシュ時も8両編成で全区間を運転するようになれば大和西大寺や阪神尼崎での増解結を減らすことができ、大きく省力化することができる。これを図るために奈良線では8両固定編成の新車を導入し、近鉄車は8両固定編成と6両固定編成のみの運転となってもおかしくはない

今回の計画では老朽車両の新車置き換えのほか、製造後30年程度が経過した車両を中心に改修工事を行う見込みだが、JR西日本で行われたN40耐久工事をしのぐ改修工事を行うことで50年はおろか60年、いやそれ以上に使用する可能性もある。昭和半ばに製造した車両を平気で60年使おうとする近鉄なんだ、2024年度以降に投入する新車は100年使う計画で製造してもおかしくはない


結び

今回の2023年4月1日近畿日本鉄道運賃改定では、車両置き換えを主目的として、近距離ではJR北海道と同水準に、中距離ではJR西日本幹線運賃と同水準にまで普通運賃を値上げすることとなり、元近鉄の養老鉄道の運賃さえも上回ることになってしまった。

今後近畿日本鉄道でどのような運賃制度を取るのか、また新車置き換えによりどのようにサービスを提供していくのか、見守ってゆきたい。

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