JR西日本は2022年8月19日、プレスリリースにて2023年4月1日に大阪電車特定区間全域にて鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃を設定すると公表した( 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用してバリアフリー設備の整備を加速してまいります )。今回はこれについて見ていく。
大阪電車特定区間で10円値上げへ
今回の2023年4月1日JR西日本運賃改定では、特定運賃の一部引き上げや大阪電車特定区間内での鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃を徴収することとなった。
もっとも大阪都市圏でも東京都市圏でも2023年3月~4月に鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃10円を設定する事業者が多いため、今回の導入は他社と同時期の実施と言えるだろう。
もっともほとんどの鉄道会社では全線に設定するとしているが、あまたのローカル線をかかえるため全駅にてホームドアを設置する必要はないJR東日本やJR西日本ではともに電車特定区間内相互駅間利用時のみで導入するとした。逆を言えば、乗降駅のうち片方でも電車特定区間から1駅でも出れば鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃は徴収しない。
大阪電車特定区間は大阪環状線・JRゆめ咲線・JR東西線・おおさか東線全線のほか、JR京都線京都~大阪間、JR神戸線大阪~神戸~西明石間、大和路線JR難波~奈良間、阪和線天王寺~東羽衣・和歌山間、学研都市線京橋~長尾間が含まれる。
なおJR西日本では同日、大阪近郊の割安な特定運賃を一部値上げするとしている。大阪~神戸間などは10円値上げかつ特定運賃区間の値上げにより二重の値上げとなる見込みだ。
ただ、JR西日本ではJR宝塚線や琵琶湖線、JR奈良線など電車特定区間外であっても大都市から近く需要が多い区間が多々ある。このためJR西日本では2025年より大阪電車特定区間外の一部区間にも鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃10円を設定するとしたのだ!
これにより2025年頃には鉄道駅バリアフリー料金制度適用区間は先述の大阪電車特定区間内に加え、琵琶湖線野洲~京都間、嵯峨野線京都~亀岡間、JR奈良線京都~城陽間、学研都市線長尾~松井山手間、JR宝塚線尼崎~新三田間、JR神戸線西明石~姫路~網干間、関西空港線全線が含まれる。
この電車特定区間外の鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃は電車特定区間内と比べ2年程度遅くなる。この導入する時期に差を設ける理由について、JR西日本では「整備対象エリアの運賃体系の共通化も課題であり、今後、検討を進めてまいります」としている。そう考えると2025年度までに大阪電車特定区間内外で共通の運賃制度とする可能性が高い。
整備対象エリアの運賃体系の共通化で幹線運賃へ値上げか
では整備対象エリアの運賃体系の共通化とはいったい何を指すのだろうか。
そもそも電車特定区間は1986年9月1日国鉄最後の運賃改定で電車特定区間内のみ運賃値上げを免れたために相対的に幹線運賃より安くなったのだが、JR西日本が国鉄の運賃体系を継承し消費増税以外での値上げを行ってこなかったために36年も電車特定区間運賃と幹線運賃で運賃差が生じている。
その後1998年までの関西大手私鉄の大幅な値上げにより15kmまではJR西日本無双状態となっており、電車特定区間はおろか幹線運賃でも大手私鉄と比べ圧倒的に安い。そう考えると15kmまでの電車特定区間運賃から幹線運賃への引き上げ(普通運賃にして20円~30円の値上げ)は積極的に行うだろう。
また大手私鉄との競合区間において、従来から特定運賃を敷いている区間についてはそのまま敷き続ければいいし、電車特定区間運賃から幹線運賃に引き上げることにより競合大手私鉄との運賃差が広がるようであれば旧電車特定区間運賃を特定運賃として新たに設定すればいい。
またこのご時世での利用客減少に伴いJR西日本では収益増強を図る必要がある。JR西日本管内で2020年以降特急列車の全車指定化による実質値上げ、2023年のB特急料金廃止による割高なA特急料金への統合、山陽新幹線「のぞみ」「みずほ」新幹線特急料金値上げ、岡山以西での新幹線と在来線特急列車の乗継割引廃止などの届出だけで済む数多くの値上げ策を図っていることを考えると、電車特定区間外の鉄道駅バリアフリー料金設定エリア内で幹線運賃から値下げするとは思えない。そう考えると大阪環状線内を含む電車特定区間の幹線運賃への値上げは避けられなさそうだ。
もし大阪電車特定区間内の運賃を幹線運賃と同一とすれば、大阪電車特定区間という言葉は青春18きっぷの0時越え特例くらいでしか見なくなるだろう。あ、青春18きっぷ自体が廃止になれば大阪電車特定区間という概念自体が要らなくなるのか。
鉄道駅バリアフリー料金制度エリア外でも基本運賃値上げか
またJR西日本では2025年度の鉄道駅バリアフリー料金制度適用区間拡大に合わせ、鉄道駅バリアフリー料金設定区間外で基本運賃を値上げする可能性がある。
JR西日本の運賃値上げは過去5年以内に社長会見でも言及があることから、可能性は十分あるだろう。
2025年度の鉄道駅バリアフリー料金制度エリア拡大後基本運賃を現状と同一とした場合、幹線運賃区間設定区間で鉄道駅バリアフリー料金制度適用内外で10円の加算運賃の差が生まれてしまうし、場合によってはエリア外の駅の方が10円安くなるということもあり得る。
鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃徴収区間外では現状運賃よりも値上げする可能性がある。そう考えると鉄道駅バリアフリー料金制度エリア外利用で普通運賃を10%程度引き上げてもおかしくはないのではないだろうか。
ただそうなると、比較的利用が多いのに鉄道駅バリアフリー料金制度のエリア外となる学研都市線大住・京田辺・同志社前の3駅は大幅な値上げを行うということなのだろうか?せめて同志社前までは幹線運賃で維持しても良いのではないかとは思うが、競合する私鉄がないため値上げしても乗ってくれると踏んでいるのだろう。
結び
今回の2023年4月1日JR西日本運賃改定では大阪電車特定区間内で鉄道駅バリアフリー料金制度に十ナウ10円値上げを図るほか、2025年JR西日本運賃改定では鉄道駅バリアフリー料金制度エリア内は幹線運賃以上への値上げを図る見込みのほか、エリア外でも基本運賃を値上げする可能性がある。
今後JR西日本でどのような増収策を練るのか、見守ってゆきたい。
コメント