鉄道運賃改定の仕組み ルールを知れば安価な理由が分かる

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鉄道運賃改定の仕組み ルールを知れば安値な理由が分かる

鉄道やバスを利用する際に支払う必要がある運賃・料金。

この運賃・料金改定は、鉄道事業者・バス事業者が単独判断で行うことはできません。これは、公共交通機関を無尽蔵に値上げされては、市民生活に大きく差し障るからです。そして無尽蔵な値上げを防ぐための仕組みがあります。

今回は鉄道やバスの運賃・料金改定の仕組みについて見ていきます。

運賃・料金の改定に必要な認可と届出

認可は、きちんと書式に合わせた方法で計算した上で国土交通省に申請することです。一応国土交通省の審査はありますが、規定に従ったものであれば基本的に許可が出ます。

一方届出は鉄道・バス事業者の言い値で価格設定できます。このためよほどの法外なことがない限り国土交通省から許可が出ます。

このことから、変更に必要な手間は認可の方が届出より圧倒的に多く、かつハードルも高くなっています

では以下に認可の必要があるもの、届出が必要なものを整理します。

認可が必要なもの

  • 運賃の上限引き上げ(定期外・定期・多くの加算運賃)
  • 新幹線特急料金(自由席相当額)の上限引き上げ

届出が必要なもの

  • 運賃上限内での割安な特定運賃の設定
  • 鉄道駅バリアフリー料金制度による加算運賃(実質上限1乗車10円、通勤定期1か月600円)
  • 沿線自治体の合意のうえでのローカル線運賃引き上げ(予定)
  • 新幹線特急料金上限内での割安な料金設定(東海道・山陽新幹線「のぞみ」および山陽新幹線「みずほ」が相当)
  • 新幹線以外の特急料金
  • 座席指定料金
  • グリーン車などの優等車料金

では認可や届出において必要なものをまとめましょう。




運賃上限認可に必要な条件

先日したように、運賃上限変更認可制度は安価な鉄道・バス運賃を維持するために作られています。

もっともその中には、今後3年間で必要な費用とそれに見合うだけの資金を集められるだけの運賃値上げに留めることとしていますが、そもそもそれらの設備投資は本当に必要なのか、そして申請年度の推計値を含む過去3年間に十分な資金が集められないことを証明しなければなりません。

このことから事実上過去3年間(申請年度推測可)の通算赤字を証明できないと運賃値上げができません

これは普通運賃・定期運賃の値上げは市民生活への影響が大きいため、できるだけ安価に抑えようとしているためです。このため易々と値上げできないようにするために事実上の条件を設け厳しい規制を敷いているのです。このため認可申請は書類だけで20ページを超えることがほとんどです

この運賃上限認可に過去3年間の通算赤字が条件となったのは1997年からですが、以降日本全国のほとんどの鉄道各社で20年以上運賃値上げを行えず据え置いていました。これにより物価と比べ運賃が相対的に安価となり、安い運賃で鉄道が利用できていたのです

が、この20年での過疎化や2020年以降の急激な利用減少に伴い、2018年から地方鉄道を中心に徐々に運賃値上げ、大都市でも2022年以降順次運賃を値上げしています。




新幹線特急料金の認可と届出

新幹線特急料金は、鉄道事業法内の認可と届出の取り決め上、以下のようになっています・

  • 新幹線特急料金…自由席利用時の無割引料金、認可が必要
  • 座席指定料金…指定席利用時と自由席利用時の差額、届出が必要

つまり、JR各社旅客営業規則とは異なり、新幹線普通車自由席は運賃と新幹線特急料金で利用でき、普通車指定席はそれに座席指定料金、グリーン車はグリーン料金を加算するとしています。

なお新幹線特急料金の上限は「のぞみ」「はやぶさ」号等と東海道山陽新幹線・東北新幹線のその他の列車は別に定めた割高な料金を設定しています。「はやぶさ」の新幹線特急料金上限は現行実施の料金と同額ですが、「のぞみ」の新幹線特急料金上限は1992年~2003年まで使用していた現在よりも割高な料金をそのまま使用していおり、現行の実施料金は上限料金より割安に設定しています。このため東海道山陽新幹線「のぞみ」「みずほ」は料金上限まで届出のみで値上げすることが可能です。




新線開業における運賃・加算運賃・新幹線特急料金の認可

また、新線を開業する際の運賃や料金の設定にも国土交通省の認可が必要です。

ただし開業前で過去3年間の収支は出ていないため、運賃や加算運賃の設定の際には需要予測を行うほか、新幹線の場合は過去の慣例による料金設定を認可書類に記載することが多くなっています。

このため、認可申請書を提出する前に国土交通省や鉄道運輸機構と何度か打ち合わせを行ってその中で決めることが定石となっています。

北陸新幹線金沢延伸時の新幹線特急料金認可では、JR東日本とJR西日本が北陸新幹線をそれぞれの会社で別線として認可書類作成中に事前に国土交通省と調整したところ、完全別算の場合は認可を棄却する方針であると回答があったため認可書類を1路線扱いとして修正してから提出しています。

なおこれらの認可申請について、広く一般から意見を募集するためパブリックコメントを募集しています。2018年頃からはWEB上でも行えるなっています。

届出に必要なもの

では、届出に対して必要なものは何でしょうか?

認可の際には過去3年間の赤字を証明する資料や今後3年間での収支予測などをしなくてはなりません。が、届出の場合は至極単純に「この料金をいつから何円から何円に変更します」とさえ記載して提出すれば通ります。はっきり言って最低表紙1ページ、本文1ページで済みます。このため届出は手間はほとんどかからず、変更が容易にできます

2020年以降の旅客減の対応としてすぐに料金値上げできるものとして届出のみで値上げができる在来線特急料金やグリーン料金の値上げをお行ったのはこのためです。

またJR旅客各社では快速列車の座席指定料金は通常期530円としているところをJR西日本新快速AシートやJR北海道千歳線快速エアポート指定席uシートで840円徴収できるのも、それぞれ国土交通省への届出を行っているためです。

ただ、JR西日本の新快速は12両中11両以上が、JR北海道千歳線快速エアポートは6両中5両が座席指定料金の必要のない運賃のみで利用できる自由席です。ようは通勤電車と同様に乗れますし実際に使われていますから、ほとんどの人がAシートやuシートを使用する必要がないのです。このため市民生活に大きく影響しないことからも全国水準より高い料金値上げの届出による許可が下りているものと思われます。


結び

鉄道の運賃値上げには国土交通省の認可が必要となり、低廉な価格に抑えられています。

2018年以降、地方ローカル線から徐々に運賃値上げが始まっていますが、自民生活に影響が出ないよう最小限に抑える仕組みとして働いています。

今後持続可能な鉄道運営を行う上でどのように変化しているのか注目です。

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