1997年以降、運賃値上げを行う際に利用する運賃上限認可。この認可を受けるためには過去3年間の通算赤字が事実上必要となっています。なぜ必要となったのでしょうか。
1996年までは来期1年間の赤字見込みで十分だった
そもそも鉄道運賃の値上げには国土交通省への認可申請を行い国土交通省から認可を受ける必要があります。これは、多くの人が使う公共交通機関で値上げを行うと家計に負担となり、値上げにより知らぬ間に生活苦になることを極力防ぐためです。
ただはっきり言って1996年までは運賃値上げは事実上青天井状態でした。というのは、設備投資をこれだけ行う必要があるので運賃値上げをさせてくれと書いて提出すれば、たいてい認可され運賃を値上げしていました。
これは日本で一番の路線網を持っていた日本国有鉄道、通称国鉄が万年累積赤字で、1~2年に一度運賃・料金値上げを行っていたこともあります。
が、1996年1月20日に事件が起きます。1987年4月1日に国策による国鉄分割民営化によって旅客事業はJR旅客6社に継承しましたが、その際に国鉄時代と同様全国一律のサービスを維持するとしていました。が、1996年1月20日にJR北海道・JR四国・JR九州の3社のみが運賃改定を実施、全国一律運賃ではなくなってしまったのです。
これにより国策をたった10年で破られてしまったため怒り心頭の運輸省が運賃の引き上げに際し事実上の規制強化を図ることとしたのです。その条件が、過去3年間の通算赤字を証明することとしたのです。
この1997年の運賃上限認可制度の変更により、その後20年ほどほとんどの鉄道事業者で運賃値上げを行わず、運賃を据え置かざるを得なくなりました。
国土交通省ではこのご時世での利用減少を理由とする運賃値上げは事実上許容しないとしています。が、旅客輸送が戻り始めた2021年度以降横ばい傾向となっていることから、2021年度~2023年度(当年度推測値含む)で運賃値上げを立て続けに申請する可能性が高くなります。そうなると、2024年以降に運賃値上げが多くの事業者で行われることになるでしょう。
結び
鉄道運賃は、簡単に値上げできないようにさまざまな策をとっています。
それでも運賃を値上げしなければならないということは、企業努力でコストカットしても吸収しきれないほどに至っていることを意味しているのです。
公共交通機関である鉄道の維持について、金銭面でも考える必要があるのは間違いないでしょう。
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