電特区と横浜市内と加算運賃設定へ! 相鉄JR直通線運賃設定(2019年12月予定)

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相模鉄道は2019年2月26日、プレスリリースにて2019年度下期開業予定の相鉄・JR直通線に対し加算運賃を設定すると公表した( 相鉄・JR直通線に関わる運賃認可申請について )。またJR東日本は2019年2月26日、プレスリリースにて鶴見~羽沢横浜国大間の運賃について公表した( 相鉄・JR直通線に関わるJR線区間の運賃等について )。今回はこれらについて見ていく。

相鉄第三の加算運賃導入へ

今回の2019年12月相鉄JR直通線運賃設定では、相鉄新横浜線に対し加算運賃が設定される。

2018年12月12日のプレスリリースでは、新横浜~羽沢横浜国大~西谷間に相鉄新横浜線の名称を付けるとしていたが、2019年12月の相鉄JR直通線開業時には相鉄新横浜線のうち羽沢横浜国大~西谷間しか開業せず新横浜を通らないことから、相鉄JR直通線または別の路線愛称をつけて案内するようだ。

なお、以下より運賃について具体的な数値まで用いて説明するが、運賃は全て消費税8%時の運賃であり、10%引き上げ時には以下の運賃より値上がりする可能性があるのでご容赦してご覧いただきたい(増税後運賃については首都圏はわかりきっているので別記事で出します)。

相模鉄道で加算運賃を設定するのは今回の相鉄JR直通線を含め三例目となる。1つ目はいずみ野線二俣川~いずみ中央間、2つ目はいずみ野線いずみ中央~湘南台間で、前者は距離に応じて20円(6キロまで)または40円(7キロから)、後者は一律30円となっている。




今回の相鉄JR直通線に対しても西谷~羽沢横浜国大間に30円の加算運賃を設定する。

この加算運賃30円に対しては、2013年の資料(冊子番号73ページ)にて既に相鉄線内では30円、東急線内で20円の加算運賃をとると想定されていることから、想定の範囲内なのだろう。ちなみにこの試算では、東急新横浜線開業時にも西谷~新横浜間で30円の加算運賃を徴収するとしている。

ただ、普通旅客運賃に関しては30円となっているが、通勤定期1か月は1140円、通学定期1か月は430円となっている。これを相鉄いずみ野線の加算運賃と比較すると以下のようになる。

以下の表は横スクロールできます。

相鉄加算運賃一覧
線区区間・距離普通通勤定期1か月通学定期1か月通勤定期割引率通学定期割引率
いずみ野線二俣川~いずみ中央間で6kmまで2042021065.0%82.5%
二俣川~いずみ中央間で6kmを超え9kmまで4084043065.0%82.1%
いずみ中央~湘南台間3063032065.0%82.2%
相鉄JR直通線西谷~羽沢横浜国大間30114043036.7%76.1%

単位:円




この表を見るといずみ野線と比べて定期券の割引率が低い。ただ京王相模原線の加算運賃の通勤定期券割引率が36.6~37.1%、通学定期券割引率が72.9%~73.3%であることを考えると、首都圏の加算運賃に対する定期券割引率としては法外とまでは言い切れない。相鉄としては定期券の加算運賃設定をかなり攻めたようだ。

ちなみに横浜~羽沢横浜国大間を使う需要は少ないんじゃないかと思うかもしれないが、横浜国立大学への交通アクセスは脆弱で、横浜市営地下鉄ブルーライン三ツ沢上町から1.4km、相鉄線和田町から1.2kmと鉄道アクセスが不便で、横浜市営バスも大学構内乗り入れの201系統と329系統はともに専ら朝の運転で、昼間は1時間に1本弱しか設定がなく平日しかない。するとバスを利用するとしても400mほど歩いた横浜新道バス停や岡沢町まで歩いて、昼間は20分間隔で運転しているトロリーバス廃止代替路線の202系統しかないのだ。ただ今回の相鉄JR直通線開業に伴い設置される唯一の新駅である羽沢横浜国大からだったら800mで到着できるようになる見込みだ。

ただ、横浜から羽沢横浜国大に向かうには西谷で乗り換えなくてはならないこと、運転本数も昼間毎時2本程度となる見込みであることから、横浜国立大学から横浜駅へ出るためには今まで通りの経路が無難そうだ。

次に横浜発着と羽沢横浜国大発着で比較する。対象駅は2017年度の乗降人員が3万人/日以上の駅及びプレスリリース記載の駅とした。普通旅客運賃は以下の通り。

以下の表は横スクロールできます。

横浜発着と羽沢横浜国大発着普通旅客運賃比較
IC運賃(単位:円)横浜羽沢横浜国大西谷鶴ヶ峰二俣川希望ヶ丘三ツ境瀬谷大和さがみ野海老名いずみ野湘南台
横浜225174195195226226258258278308278348
羽沢横浜国大225174204204225225225256288308276358

これを見る限り、今回の西谷~羽沢横浜国大間の加算運賃30円を設定することにより、横浜発着と羽沢横浜国大発着でほぼ同額となったようだ。

ただ、相鉄の普通運賃は初乗り3km以降は4kmずつ値上がりしていくのに対し、横浜~西谷の営業キロ(6.9km)と羽沢横浜国大~西谷(2.1km)の差は4.8kmとなっており、瀬谷のように運賃加算前で2区異なると羽沢横浜国大発着の方が30円程度安くなることがあるようだ。

また通勤定期運賃で比較すると以下のようになる。




以下の表は横スクロールできます。

横浜発着と羽沢横浜国大発着通勤旅客運賃比較
通勤1か月運賃(単位:円)横浜羽沢横浜国大西谷鶴ヶ峰二俣川希望ヶ丘三ツ境瀬谷大和さがみ野海老名いずみ野湘南台
横浜88007070766082508810909096601026010990120401038012680
羽沢横浜国大8800541067207820850088009390995010800119101009012150




なお、私鉄の場合概ね3か月定期は1か月定期の3倍から5%割り引いて10円単位切り上げた額、6か月定期は1か月定期の6倍から10%割り引いて10円単位切り上げた額となっている。

これを見るに、通勤定期券は加算運賃を設けても西谷以西のどの区間でも横浜発着より羽沢横浜国大発着の方が安くなる見込みだ。

もちろん東京都区内まで利用する場合にはJR東日本の運賃が異なるので一概に安くなるとは言えないが、相鉄単体で見たら横浜発着から羽沢横浜国大発着に振り替えられては減収につながる。加算運賃だけで見ると割引率が低いが、総じてみると妥当な価格となりそうだ。

それを考えると、いかに相鉄沿線から小田急江ノ島線や小田急小田原線経由で新宿に向かう需要を相鉄JR直通線利用に移動させるかが増収のポイントとなりそうだ。

そのあたりのダイヤの話は別の機会に本家鉄道時刻表ニュースで行うとしよう。

なお相鉄の加算運賃設定に関しては2019年3月12日まで国土交通省鉄道局にてパブリックコメントを受け付けている




電車特定区間と横浜市内指定へ

今回の2019年12月相鉄JR直通線運賃設定では、東海道本線鶴見~羽沢横浜国大間に旅客営業キロが設定される。

そもそも羽沢横浜国大には隣接してJR貨物の羽沢貨物駅があるので周辺の東海道本線には営業キロ自体は設定されていたのだが、JR東日本の旅客営業キロとして鶴見~羽沢横浜国大間に8.8kmの営業キロを設定することとなった。

なお、プレスリリースによれば鶴見は運賃計算上の分岐点としてのみ機能し、相鉄JR直通線列車は全て通過となる。

ただ、ここまでであれば仙石東北ラインの東北本線松島状態になるが、今回はそれだけではない。

まず第一に羽沢横浜国大は旅客鉄道会社6社旅客営業規則第86条に規定されている特定都区市内制度における横浜市内を適用する予定だ。

羽沢横浜国大は横浜市神奈川区に位置するため、横浜市内にしても一見問題はない。少なくとも東大阪市に所在のおおさか東線高井田中央やJR河内永和が開業11年後に大阪市内に追加指定されるよりかは

運賃計算上のJR東日本の隣駅となる鶴見も横浜市内になるため、そこから市外に出ることもなく横浜市内指定は妥当と言える。

しかし、鶴見にはホームが設置されないため、相鉄JR直通線の列車は停車しない。相鉄JR直通線の羽沢横浜国大の次の停車駅は新川崎か武蔵小杉になりそうだ。この両駅は川崎市内に所在し、特定都区市内の横浜市内は適用されない。つまり、横浜や新横浜から羽沢横浜国大にJR線で向かうには、必ず市外に出なくてはならないのだ。

さすがにここにきて新川崎や南武線武蔵小杉~鹿島田を横浜市内に入れろなんてことは向かないし、むしろ東海道新幹線利用のために新横浜に出るには2023年3月開業予定の東急新横浜線利用の方が便利になるし大宮・東北・上越方面へはかえって横浜駅から運賃計算してしまうと距離が延びてしまい損をしてしまうことから、川崎市民にとってメリットがない。

となると、JR西日本が大阪市内で認めている尼崎や久宝寺の通過特例と同様の特例を新川崎や武蔵小杉に適用するのであろう。

でも待て。そもそも横浜から羽沢横浜国大への利用なら相鉄で西谷乗り換えの方が早いし、新横浜からなら2023年3月に相鉄新横浜線が新横浜まで延伸して1駅でアクセスできるようになるから、市内主要駅に向かうのにJRである必要性が感じられない。

となると、東北・上越方面への旅行の際に羽沢横浜国大からではなく横浜駅から運賃を計算することによって、営業キロを1.7km節減できるメリットくらいだろう。

ただ相鉄JR直通線は埼京線とは直通運転を行うものの、東京駅へは直通列車を運転しない方針となったことから、東京駅へ向かうには武蔵小杉で横須賀線に乗り換える必要がある。となると羽沢横浜国大から東北新幹線・上越新幹線を使うには東京乗り換えより大宮乗り換えの方が便利そうだ。




電車特定区間指定はいかに

次に、鶴見~羽沢横浜国大間は電車特定区間に指定され、一般的なJR線の運賃より割安な運賃で利用できる。神奈川県内には東海道線大船~平塚のような昼間でも10分間隔以内で10両以上の列車がひっきりなしにやってくるところでさえも幹線運賃を適用しているのに、羽沢横浜国大に対して電車特定区間を設けたのだ。

しかも2015年の大都市交通センサスのデータによれば単線の中で最も隣駅間輸送密度が高い(99,184人/日・往復)川越線日進~西大宮間の昼間毎時3本、平日夕ラッシュ時毎時4本、平日朝ラッシュ時毎時6本より少ないのに電車特定区間に指定されるのだ。

川越線に関しては私鉄単線日本一の輸送密度を誇るものの川越線とほぼ同程度の東武野田線六実~高柳間が2020年をめどに複線化されること、近年JR線で複線化した嵯峨野線や複線化工事中の奈良線より隣駅間輸送密度が1.5倍以上あること、平日朝ラッシュ時に線路容量の関係で指扇始発の列車を設定していることから日進~川越間は複線化すべきなのだと思われるが、それを棚に上げておくとしても直通運転のする川越より需要が少ないのに羽沢横浜国大を電車特定区間に入れるとは何事か。

確かに、東京アドベンチャーラインとかいう愛称を名乗って気分は地方交通線の電車特定区間だってあるし、運賃分岐点となる鶴見を発着する列車でしか行けない平日1日9往復、土休日は1日3往復しか列車の設定がない駅でさえ電車特定区間なんだから、下には下がいるよ?

確かに横浜市内なのに設定されないというとそれはそれで問題ではあるが、電車特定区間、神奈川県内ではもう少し広げた方が良いのではないだろうか。かつて国電区間とは言われていたけど東海道線は湘南電車と時刻表公式の別称があったわけだし、藤沢は小田急が乗り入れているわけだし。



相鉄JR直通線で直通運賃はどうなる

では今回の2019年12月相鉄JR直通線運賃設定で、直通利用時の運賃はどのようになるのだろうか。

相鉄JR直通線連絡普通旅客運賃表
西谷鶴ヶ峰二俣川希望ヶ丘三ツ境瀬谷大和さがみ野海老名いずみ野湘南台
渋谷724754754775775775806838858826908
新宿724754754775775775806838858826908
東京724754754775775775806838858826908
相鉄JR直通線連絡通勤定期旅客運賃表(1か月)
西谷鶴ヶ峰二俣川希望ヶ丘三ツ境瀬谷大和さがみ野海老名いずみ野湘南台
渋谷2122022530236302431024610252002576026610277202590027960
新宿2189023200243002498025280258702643027280283902657028630
東京2122022530236302431024610252002576026610277202590027960




また比較対象のために、小田急との連絡運賃を置いて見る。

相鉄JR直通線と小田急線連絡運賃比較
西谷鶴ヶ峰二俣川希望ヶ丘三ツ境瀬谷大和さがみ野
渋谷羽沢横浜国大経由JR線724754754775775775806838
大和・下北沢経由小田急線・京王井の頭線730730709709709679535709
大和・中央林間経由小田急線・東急田園都市線678678657657657627483657
新宿羽沢横浜国大経由JR線724754754775775775806838
大和経由小田急線648648627627627597453627
さがみ野海老名
渋谷羽沢横浜国大経由JR線838858
海老名・下北沢経由小田急線・京王井の頭線751577
新宿羽沢横浜国大経由JR線838858
海老名経由小田急線668494
いずみ野湘南台
渋谷羽沢横浜国大経由JR線826908
湘南台・下北沢経由小田急線・京王井の頭線842618
湘南台・中央林間経由小田急線・東急田園都市線769545
新宿羽沢横浜国大経由JR線826908
湘南台経由小田急線759535




どうやら、普通旅客運賃を単純比較しただけでは、小田急線が直接乗り入れている駅のみならず大和などで乗り換えを必要とする場合でも小田急線経由より相鉄JR直通線経由の方が安いようだ。

次に通勤定期運賃で見ていく。

相鉄JR直通線と小田急線連絡通勤定期旅客運賃比較(1か月)
西谷鶴ヶ峰二俣川希望ヶ丘三ツ境瀬谷大和さがみ野
渋谷羽沢横浜国大経由JR線2122022530236302431024610252002576026610
大和・下北沢経由小田急線・京王井の頭線2648025890253002491023810225001823023810
大和・中央林間経由小田急線・東急田園都市線2574025150245602417023070217601749023070
新宿羽沢横浜国大経由JR線2189023200243002498025280258702643027280
大和経由小田急線2232021730211402075019650183401407019650
さがみ野海老名
渋谷羽沢横浜国大経由JR線2661027720
海老名・下北沢経由小田急線・京王井の頭線2475018460
新宿羽沢横浜国大経由JR線2728028390
海老名経由小田急線2010014520
いずみ野湘南台
渋谷羽沢横浜国大経由JR線2590027960
湘南台・下北沢経由小田急線・京王井の頭線2686019130
湘南台・中央林間経由小田急線・東急田園都市線2809020360
新宿羽沢横浜国大経由JR線2657028630
湘南台経由小田急線2292015190

これを見るに、二俣川や希望ヶ丘、いずみ野線沿線から渋谷への利用は相鉄JR直通線の方が小田急利用より安くなりそうだ。

なお、先述したように私鉄の場合概ね3か月定期は1か月定期の3倍から5%割り引いて10円単位切り上げた額、6か月定期は1か月定期の6倍から10%割り引いて10円単位切り上げた額となっているが、JR東日本の場合概ね3か月定期は1か月定期の3倍から10%割り引いて10円単位切り捨てた額、6か月定期は1か月定期の6倍から20%割り引いて10円単位切り捨てた額となっている。

つまり、1か月定期券で僅差ながら小田急経由に負けている区間は、6か月定期ならJR経由に方が勝てる可能性があるということなのだ。

つまり、対新宿においては小田急経由の方が安いことが多いが、対渋谷においては小田急経由と相鉄JR直通線経由がほぼ同額程度となる見込みだ。もちろん横浜連絡東急東横線にはかなわないのだが、詳細な運転時刻の話は本家鉄道時刻表ニュースで行うとしても、直通列車が運転されるようになる点も踏まえると、定期利用する人も多くなるのではないだろうか。


結び

今回の2019年12月相鉄JR直通線運賃設定では、相鉄では減収を抑えるために西谷~羽沢横浜国大前間で加算運賃を設定することとなった一方、JR東日本では横浜市内の駅として特定することになったほか、電車特定区間を設定することにより幹線運賃より割安な運賃で利用できるようになる。

今後この運賃で小田急や他の私鉄とどこまで競合できるのか、見守ってゆきたい。

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