JR北海道は2024年6月28日、プレスリリースにて2025年4月1日に運賃改定を行うと公表した。今回はこれについて見ていく。
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5年半ぶりの値上げへ!
今回の2025年4月1日JR北海道運賃改定では、2019年10月1日運賃改定以来約5年6か月ぶりに運賃改定を行う。
今回の運賃改定内容は以下の通り。
営業キロ (1km未満端数切り上げ) |
2019/10/1運賃改定 | 2025/4/1運賃改定 | 値上げ率 |
1~3 | 200 | 210 | 5.0% |
4~6 | 250 | 270 | 8.0% |
幹線 7~10 |
290 | 310 | 6.9% |
地方交通線 7~10 |
300 | 320 | 6.7% |
11~15 | 340 | 360 | 5.9% |
16~20 | 440 | 470 | 6.8% |
21~25 | 540 | 580 | 7.4% |
26~30 | 640 | 680 | 6.3% |
31~35 | 750 | 800 | 6.7% |
36~40 | 860 | 920 | 7.0% |
41~45 | 970 | 1040 | 7.2% |
46~50 | 1130 | 1210 | 7.1% |
51~60 | 1290 | 1380 | 7.0% |
61~70 | 1490 | 1590 | 6.7% |
71~80 | 1680 | 1800 | 7.1% |
81~90 | 1890 | 2020 | 6.9% |
91~100 | 2100 | 2240 | 6.7% |
地方交通線 92~100 |
2320 | 2480 | 6.9% |
101~120 | 2420 | 2530 | 4.5% |
121~140 | 2860 | 3080 | 7.7% |
141~160 | 3190 | 3520 | 10.3% |
161~180 | 3630 | 3960 | 9.1% |
181~200 | 4070 | 4400 | 8.1% |
201~220 | 4510 | 4840 | 7.3% |
221~240 | 4840 | 5170 | 6.8% |
241~260 | 5280 | 5610 | 6.3% |
261~280 | 5610 | 5940 | 5.9% |
281~300 | 5940 | 6270 | 5.6% |
301~320 | 6270 | 6600 | 5.3% |
321~340 | 6490 | 6820 | 5.1% |
341~360 | 6820 | 7150 | 4.8% |
361~380 | 7150 | 7480 | 4.6% |
381~400 | 7370 | 7700 | 4.5% |
401~420 | 7700 | 8030 | 4.3% |
421~440 | 7920 | 8250 | 4.2% |
441~460 | 8250 | 8580 | 4.0% |
461~480 | 8470 | 8800 | 3.9% |
481~500 | 8800 | 9130 | 3.8% |
501~520 | 9130 | 9460 | 3.6% |
521~540 | 9350 | 9680 | 3.5% |
541~560 | 9680 | 10010 | 3.4% |
561~580 | 9900 | 10230 | 3.3% |
581~600 | 10230 | 10560 | 3.2% |
地方交通線 547~582 |
10450 | 10780 | 3.2% |
今回の運賃改定でJR北海道の初乗り運賃は200円から210円に10円値上げすることとなった。
100kmまでは対キロ区間制なことは変わりないほか、200kmまでは幹線は1kmあたり19.70円から21.16円に10.5%値上げ、地方交通線は21.60円から23.11円に7.0%値上げすることとした。なお200km超の区間でも最大1kmあたり幹線で0.16円、地方交通線で0.55円値上げしていることになっているが、幹線と地方交通線の帳尻を300kmで合わせるためのものだろう。
普通運賃は6.6%の値上げとなる。2019年10月1日運賃改定と合わせて税抜価格で約20%の値上げとしている。もっとも近年の物価高で酒類問わず軒並み20%程度値上げしているので、もともと経営基盤の弱く貯金がなかったJR北海道が合わせて20%値上げするのは問題ないだろう。
またJR東日本との差額は以下の通り。
営業キロ | 税率10%時加算額 | 2025/4/1 |
1~3 | – | – |
4~6 | – | – |
7~10 | – | – |
11~15 | 100 | 120 |
16~20 | 110 | 140 |
21~25 | 120 | 160 |
26~30 | 130 | 170 |
31~35 | 160 | 210 |
36~40 | 180 | 240 |
41~45 | 200 | 270 |
46~50 | 270 | 350 |
51~60 | 300 | 390 |
61~70 | 320 | 420 |
71~80 | 340 | 460 |
81~90 | 370 | 500 |
91~100 | 410 | 550 |
101~120 | 440 | 550 |
121~140 | 550 | 770 |
141~160 | 550 | 880 |
161~180 | 550 | 880 |
181~200 | 660 | 990 |
201~ | 770 | 1100 |
このように今回の2025年4月1日運賃改定をもってJR北海道とJR東日本の差額は770円から1,100円にまで開くこととなった。
幹線と地方交通線の運賃差是正へ!
また今回の2025年4月1日JR北海道運賃改定では、幹線と地方交通線の運賃格差を是正している。
地方交通線は幹線の1.1倍を基準に算出するとしており、日本国有鉄道から発足した1987年4月1日のJR北海道発足当初は17.8/16.2=1.099倍となっていた。1996年1月20日運賃改定では19.6/17.85=1.098倍とほぼ変わらなかったが、2019年4月1日運賃改定で21.6/19.7=1.096倍、今回の2025年4月1日運賃改定では23.11/21.16=1.092倍にまで格差が小さくなっている。9.9%増しから9.2%増しに6.5%も幹線と地方交通線の格差が是正しているのである。
ただ、運賃収入が少なく今後の見直しを検討している輸送密度2,000人/日・往復未満の黄線区のうち、根室本線滝川~富良野間および釧路~根室間、室蘭本線岩見沢~沼ノ端間はいずれも割安な幹線運賃となっている。少しでも増収するために地方交通線運賃に引き上げた方が良いのではないだろうか。
また札幌発着では函館本線と千歳線は幹線だが、学園都市線は地方交通線運賃で割高となっているし、札幌発着の場合桑園を境に幹線と地方交通線をまたぐのでなおさら割高になりやすい。実際札幌~当別間は全線地方交通線なら27.5kmで28km以内680円のところ、幹線と地方交通線をまたぐため運賃計算キロ30.1km適用幹線運賃35km以内800円と120円も割高になるのである。
2025年4月1日JR西日本運賃改定で大阪近郊で運賃格差の是正をするのだから札幌近郊でも運賃を統一すべきだったのではないだろうか。
ただこの幹線と地方交通線の格差是正により札沼線で認可外の違法な高値運賃を実施している。
新千歳空港発着あまり値上げならず観光客からカネを巻き上げられず
また今回の2025年4月1日JR北海道運賃改定では、新千歳空港発着の運賃は大きく値上げをしなかった。
札幌~新千歳空港間の運賃は1,150円から1,230円へ80円の値上げにとどまる。2019年9月30日まで1.070円であったことを考えると80円ずつ値上げしていることになる。
一方札幌市内~新千歳空港間で競合する高速バスは、2018年まで1,000円だったのに対し2024年時点で1,300円~1,400円に大幅に値上げしている。札幌駅前までは1,300円でそこから少し過ぎると1,400円であることを踏まえるともっと値上げしたいはずなのだ。
にもかかわらず今回のJR北海道運賃改定をもってでさえも札幌~新千歳空港間は1,230円と高速バスより安い。このため高速バスは安直な値上げができずお互いに貧乏くじを引いていることになる。
また新千歳空港発着用は観光目的で札幌・小樽へ向かうためのものだから、運賃をもっと値上げしていいはずだ。むしろ新千歳空港発着を値上げしてほかのエリアの値上げを抑えることで道民生活への負担を小さくすることができる。
そう考えると千歳線南千歳~新千歳空港間には加算運賃20円のほかに空港設備利用加算料金として200円~500円程度加算しても良いのではないだろうか。正直札幌~新千歳空港間が1,730円に値上げしても乗ってくれるし、高速バスも1,600円~1,800円程度に値上げできるのでお互い増収を図ることができることから財力に余裕ができるようになり安全投資もできる。新千歳空港発着はもっと値上げすべきだろう。
異例の定期券大幅値上げへ!
ただ、今回の運賃改定では普通運賃は6.6%の値上げにとどめたのに、通学定期は10.5%、通勤定期は22.5%も値上げを図ることとしたのである。
近年の運賃改定では子どものいる家庭の家計負担軽減のために通学定期は普通運賃よりも値上げ率を下げることで値上げの影響を受けにくくしていることが多い。また通勤定期も普通運賃+1.0%程度までの値上げにとどめることが多い。定期券は市民成果鵜に影響が出るため、観光客が良く使う普通運賃より値上げを抑えることが多いのだ。
また国鉄やJR旅客各社の過去の運賃改定を見るに多くの場合定期券の割引率を変えていないため、運賃と同率に定期券を値上げしてきた。
ただ今回の2025年4月1日JR北海道運賃改定を見ると通学定期・通勤定期は普通運賃より大幅に値上げすることしたのである。
なによりJR北海道が姑息なのが、プレスリリースに普通運賃の値上げは記載しているものの定期券の値上げ率を記載していないことである。おいおい、隠れてこそこそしてるんじゃないぞJR北海道。やるなら堂々と言えよ。
ではなぜこのような普通運賃よりも通勤定期・通学定期を値上げすることとしたのか。
そもそも札幌近郊を除いてJR北海道の普通列車が競合しているのはバスである。バスは定期券割引率が低く、通勤定期では週5日往復しても元が取れないところまである。
一方JRの定期券は通勤定期が大幅に安く、通学定期もバスと比べると安い。もっとも東京・名古屋・大阪近郊では私鉄があり私鉄の通学定期は破格の安値なのでかなわないことが多いが、北海道内に私鉄は存在しないのでJR北海道より通学定期が安いのはせいぜい札幌市交通局の地下鉄くらいしかない。
このため定期券を値上げしてもほかの交通機関に流れることはないと踏んで値上げしているのだろう。
ただ、それでは高校スクールバスや親の送り迎えの自家用車に流れてしまうのではないだろうか。おっしゃる通りで、もしそれで利用客数が減れば減車ができるし輸送密度が減れば廃線にすることだってできる。そもそもJR北海道は全線赤字なので客が減れば廃止にした方が儲かるのだ。
そう考えると通学定期の値上げはあえてJR北海道を選ばせないことにより廃線を加速させるようとしているもではないだろうか。
結び
今回の2025年4月1日JR北海道運賃改定では、普通運賃を6.6%値上げし初乗り210円とするほか、通学定期は10.5%、通勤定期は22.5%も値上げを図ることで、観光客にとって値上げはそこまででもない一方で道民の負担が増え市民生活に大きく影響をもたらすこととなった。
今後JR北海道でどのようなダイヤ改正を実施していくのか、見守ってゆきたい。
札沼線で運賃ぼったくりか!JR北海道運賃の鉄道事業法違反疑いはこちら!
関連資料 – 運賃改定の申請について – JR北海道
関連資料 – 運賃改定のお知らせ – JR北海道
関連資料 – 北海道旅客鉄道株式会社の鉄道事業の旅客運賃の上限変更認可申請書 – 国土交通省
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