首都圏新都市鉄道は2025年4月11日、プレスリリースにて2026年3月14日につくばエクスプレスの運賃改定を行うと公表した。今回はこれについて見ていく。
そもそも割高なつくばエクスプレスが初乗り180円に値上げへ!
今回の2026年3月14日首都圏新都市鉄道運賃改定では、つくばエクスプレスで運賃値上げを図る。
詳細は以下の通り。
改定日 営業キロ(km) |
2019/10/1 消費税率改定 |
2026/3/14 | 値上げ率 |
1~3 | 168 | 180 | 7.1% |
4~5 | 210 | 230 | 9.5% |
6~7 | 251 | 271 | 8.0% |
8~9 | 293 | 320 | 9.2% |
10~11 | 335 | 362 | 8.1% |
12~13 | 377 | 412 | 9.3% |
14~15 | 419 | 454 | 8.4% |
16~18 | 471 | 513 | 8.9% |
19~21 | 524 | 574 | 9.5% |
22~24 | 576 | 626 | 8.7% |
25~27 | 629 | 688 | 9.4% |
28~30 | 682 | 741 | 8.7% |
31~33 | 733 | 800 | 9.1% |
34~36 | 786 | 853 | 8.5% |
37~39 | 838 | 913 | 8.9% |
40~42 | 891 | 966 | 8.4% |
43~45 | 943 | 1,018 | 8.0% |
46~48 | 995 | 1,070 | 7.5% |
49~51 | 1,048 | 1,123 | 7.2% |
52~54 | 1,100 | 1,175 | 6.8% |
55~57 | 1,152 | 1,227 | 6.5% |
58~59 | 1,205 | 1,280 | 6.2% |
本体価格の運賃値上げは2005年8月24日の開業以来初となり、約20年越しの運賃改定となる。これにより初乗りはIC168円から180円に値上げし、東京都市圏の都市鉄道としては割高な設定となっている。
なお普通乗車券はおおむね8%~10%の値上げとしているが、36km超の区間はIC一律75円の値上げとなるため秋葉原~つくば間は1,205円から1,280円へ6.2%の値上げに抑えている。
JR東日本は4.7%しか運賃値上げしないのも関わらず儲かっているはずのつくばエクスプレスで値上げへ!
そもそも日本の鉄道では鉄道事業法による国土交通省への運賃上限認可申請により運賃値上げしても鉄道事業が向こう3年間赤字になる見込みがないと実質運賃値上げをできない。これは鉄道は市民生活の一部と認知されており、運賃値上げによる積み重ねで生活苦にならないようにするためである。
運賃上限認可申請書によればつくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道は2023年度実績で年間65億円の黒字となっている。しかも収支率65.3%、つまり営業係数65.3ととても経営が良いのである。つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道は儲かっているのだ。
しかもつくばエクスプレス沿線の生産年齢人口は増えており、今後も人口増加が見込まれている。利用者は今後も増え値上げしなくとも増収見込みが立っている。
一方つくばエクスプレスと競合するJR常磐線を運営するJR東日本は300億円の3年もの実質無利息社債を2回調達するほど経営繰りが傾いている。正直JR東日本は運賃値上げしないと潰れる、そのレベルまで来ている。その破産寸前の状況であるJR東日本の運賃改定率が幹線運賃で4.7%の値上げとしている。
にもかかわらずJR東日本幹線運賃を参考に運賃を設計したつくばエクスプレスがJR東日本を上回る普通運賃8.2%、通勤定期20.2%の値上げ申請を行ったのである。おいおいそもそも運賃が関東大手私鉄と比べ割高で儲かっているのに破産目前のJR東日本よりも運賃を値上げするとは。
この黒字を粉飾するために、首都圏新都市鉄道では配当金所要額を300億円という法外な設定にしてあたかも赤字が多いように見せているほか、収入原価総括表の提出がない。なぜなら収入原価総括表を提示したら黒字で運賃値上げしなくても問題ないことがすぐにばれてしまうからである。
つまりつくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道は運賃値上げのためなら粉飾してでも赤字を示したいのだ。こんな運賃値上げは許されるのだろうか。
家庭向けにはこども運賃上限IC200円設定と通学定期値下げへ!
ただ、今回の運賃改定では家庭向け対策を図っている。
まずはこどもIC運賃。鉄道のこども運賃は大人の半額が相場だが、今回の運賃改定でこどもIC運賃は13km以内では運賃据え置き、13km超では上限200円となる。これにより18km超、つまり秋葉原から南流山以北の利用で大人1人とこども1人の合計額は値下げとなる。
なおこの運賃値下げ情報も運賃上限認可として申請しているため、こどもIC運賃を200円超にすることはできない。
また通学定期運賃は約18%値下げ、こども通学定期券に至っては18km超上限5,000円とする。まあ小学生で18km超の通学定期を買う人はまれだろうが、短距離でも現在より18%の値下げとなれば役には立つだろう。
真の目的は官公庁やみなし官公庁利用の多い通勤定期の値上げか!
では今回の2026年3月14日首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス運賃改定の真の狙いは何だろうか。
そもそも沿線は常磐自動車道が近いこともありもともと車通勤が多かった。このためつくばエクスプレスの通勤定期利用者は主に役所や国立筑波大学、国立の研究所などの官公庁・みなし官公庁が多い。このため通勤定期を値上げしても支出を渋る民間企業への影響は小さく、値上げしても否応なく払ってくれる官公庁が払ってくれるのだ。今回の運賃改定で通勤定期を約20%値上げすることで官公庁・みなし官公庁からの増収を狙っているのではないだろうか。
これにより今回の2026年3月14日つくばエクスプレス運賃改定で普通運賃を8.2%、通勤定期を20.2%値上げする一方、通学定期を17.349%値上げする。
ただ官公庁の買ってくれる通勤定期だけが目的なら、普通運賃は値上げせず通勤定期だけ値上げし通学定期値下げとこどもIC運賃値下げで調整すればよいではないか。
結び
今回の2026年3月14日首都圏新都市鉄道運賃改定では、つくばエクスプレスで大人普通運賃や通勤定期で運賃値上げするに至った。
一方通学定期は軒並み値下げ、こどもIC運賃は最大200円にするなどの値下げも図っている。
つくばエクスプレスでどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
関連資料 – 鉄道事業の旅客運賃上限変更認可申請について – 首都圏新都市鉄道
関連資料 – 鉄道事業の旅客運賃上限変更認可申請書 – 国土交通省
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