鉄道各社やバス会社が発行する回数券。たいていの場合11枚つづりを10枚分の値段で発売することが多く、普通にきっぷを買うより安くなっています。
バスでは2000年以降、鉄道では2019年以降廃止が相次ぐ回数券ですが、なぜ発売していたのでしょうか。
なぜ鉄道各社は回数券を発売していたのか
そもそもなぜ鉄道各社・バス各社は回数券を発売していたのでしょうか。
その最大の原因は1回利用の単価が安く、都度支払いであることです。
鉄道やバスの運賃は10円単位が多く、硬貨がかさばりやすいほか、鉄道事業者はおつりも大量に用意しなければなりません。
これを回避するために国鉄では100km超の区間は10円単位ではなく100円単位とすることでお釣りの発生を少なくしようとしました。
ただ絶対的利用者数の多い近距離区間ではそうはいきません。そこで10枚分のねだんを前売りすれば100円単位での発行になるのでお釣りを減らせると考えたのです。
ただ、無割引で前売りしただけでは旅客に得がありません。そこで10枚分のねだんで11枚のきっぷが付いてくる商品を開発し、回数乗車券と名付けることとしたのです。
なお定期券も同様で、毎回乗車券購入で1か月に40回お釣りを用意するより1カ月に1回発行した方がお釣りを用意する回数が減るためです。
また運賃変動制のバスの回数券の場合、さまざまな運賃の券を組み合わせて1,000円で発売することが多いですが、それも釣銭を減らすためです。
いずれにせよ回数券の発売目的は、釣銭を減らすことでした。
なぜ鉄道各社は回数券を廃止するのか
ではなぜ2000年以降鉄道・バス各社は回数券を廃止することとしたのでしょうか。
そもそも回数券の設定理由は釣銭を減らすことでした。ただ、回数券は11枚つづりという観点上同一区間または同一運賃区間での利用に限られていたことから区間外利用時などは従来通り小銭できっぷを買う必要があったのです。
それを打破するために券売機に入る金券であるオレンジカードやメトロカードを発売しましたが、小銭が必要なくなったとはいえきっぷに引き換える必要があったほか、きっぷ発売額未満の残金使用時には小銭が必要でした。
そこで2000年ごろまでにイオカードやJスルーカード、パスネット、スルッとKANSAIなどの自動改札機に直接投入できるカードを導入、のちに2枚投入を実装して小銭を使う場面を大きく減らします。
きわめつけは導入コストが大きく抑えられたICカードの全国普及です。リユースできるカードを1000円単位で預け入れることで小銭を使わせることを防いだほか、これまでのカード類と比べて低コストで導入できるため全国に広まりました。これにより地方鉄道でもICカードが導入したことで日本全国の鉄道で回数券の一番の意義であった小銭削減の意味合いが薄れたのです。
こうなっては回数券を発売して割り引く意味が鉄道会社としてはなくなります。このまま割り引いたままでは鉄道会社が本来獲得できた収入が減ってしまいます。そこでICカードが十分普及した2019年ごろより小銭を減らすという役割がICカードレベルでは期待できない回数券を廃止することとしたのです。
結び
回数券は小銭の扱いを減らすために鉄道会社が投入した策でした。が、ICカードの普及により小銭の用意が大きく減って回数券の意義がなくなったほか、割引を必要とする回数券を維持する理由もないことから増収目的で回数券を廃止することとしました。
クレジットカードのタッチ決済などの新たな乗車券も開発・社会実験中ですが、いずれにせよ今後回数券が賦活することは難しいでしょう。
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