福岡から鹿児島への鉄道での移動は、今日では九州新幹線一本で向かうことができます。
しかし、新幹線ができる前は在来線特急「有明」後の「かもめ」か結んでいたほか、九州新幹線部分開業時には乗り換えが必要となっていました。
今回はその変遷について見ていきます。
在来線特急つばめ時代
まずは在来線特急時代から。
特急「有明」(門司港~西鹿児島間)が登場したのは1967年10月1日ダイヤ改正でした。しかし1978年10月1日改定で多くの特急料金特例が列車ごとではなく区間ごとに集約され、特定運賃で利用できる区間が最も多いのは九州になりました。
そこで国鉄では1982年4月20日料金改定よりB特急料金を導入、全国の特急料金と比べて割安な特急料金を設定しました。その際に初めて導入された区間が、房総各線と特急踊り子、及び九州島内内の全ての特急に適用となりました。
かくして、特急「有明」を含む全ての特急列車は、1982年4月20日よりB特急料金適用となったのです。
その後国鉄分割民営化を経てJR九州に継承されたのち、1992年7月15日ダイヤ改正で特急「有明」のうち西鹿児島発着を特急「つばめ」に改称しました。
九州新幹線新八代~鹿児島中央間開業時代
2004年3月13日から2011年3月11日まで、九州新幹線は新八代~鹿児島中央間しか開業していなかったことから、ほかの新幹線と独立していました。
九州新幹線部分開業前は、博多~西鹿児島(鹿児島中央間)にて鹿児島本線特急「つばめ」号が毎時1本程度運転されていました。しかし2004年3月13日に九州新幹線が部分開業することとなり、乗り換えが必須となります。その手間を軽減させようと、九州新幹線「つばめ」号と鹿児島本線特急「リレーつばめ」号を新八代で対面接続する措置が取られ、旅客営業規則第57条の3第5項にて同一列車とみなして運用していました。
そのため、新たに直通の特急料金を設定することになったのです。
以下の表は横スクロールできます。
熊本 | 大牟田 | 久留米 | 博多 | ||||
25キロまで | 50キロまで | 100キロまで | 150キロまで | 200キロまで | 300キロまで | ||
新八代から | 800 | 1100 | 1420 | 1870 | 2180 | 2390 | |
新水俣~川内 | 2180 | 2380 | 2620 | 2870 | 3230 | 3480 | 3650 |
鹿児島中央 | 2910 | 2960 | 3200 | 3450 | 3810 | 4060 | 4230 |
単位:円、自由席特急料金は乗り継いでも500円引
なお、新八代から25km以内の駅に特急「リレーつばめ」の停車駅はなく、設定は形式的なものとなっています。
なお、単純合計との差額は以下のようになります。
新八代から | 25キロまで | 50キロまで | 100キロまで | 150キロまで | 200キロまで | 300キロまで |
新水俣~川内 | 600 | 660 | 730 | 820 | 880 | 920 |
鹿児島中央 | 750 | 810 | 880 | 970 | 1030 | 1070 |
単位:円
これを見る限り、遠距離になるほど割引が効くようになっているようです。
この割引料金の設定は、1つは九州新幹線と在来線特急の指定席特急料金をそれぞれ単純合算してしまうと、普通車指定席と普通車自由席お差額を2回徴収してしまうことになり、差額1回分の500円は割り引く必要が生じたことが挙げられます。
なお普通車指定席利用時の計算式は、
- 九州新幹線普通車指定席料金×0.8(10円未満端数切捨て)+在来線特急料金×0.8(10円未満端数切捨て)
となっています。
この計算式による特定の特急料金ともし九州新幹線が新八代で乗継割引を適用した場合の料金(つまり鹿児島本線特急「リレーつばめ」の料金が半額)と比べると、新八代から熊本など100kmまではこの通しの特急料金の方が安く、150キロまでは鹿児島中央利用時のみ安い一方、博多など150キロを超えてしまうと通しの特急料金の方が割高になりました。つまり、博多から鹿児島中央への利用でより多くの料金を取りたかったようです。
山陽新幹線との乗継割引の算定方法ですが、当時九州島内の在来線特急とも乗継割引がありましたので、山陽新幹線から博多連絡で熊本に向かう際には、博多~熊本間の特急「リレーつばめ」ないし特急「有明」の料金は半額となっていました。
しかし熊本で乗り継ぎ割引が効くのに鹿児島中央で効かないという理論が通るはずもなく、こちらも在来線特急に対して乗継割引が設定されました。
しかし特急「リレーつばめ」区間では特急料金を半額にしましたが、九州新幹線は割引なしの単純合算としました。このため普通車指定席利用では上述の連絡特急料金利用と比べ、新水俣~川内発着で210円、鹿児島中央発着では60円しか安くならず、とても半額割り引いているとは言えない状況となりました。
ただ、この場合普通車指定席の差額の半額と全額が加算されており、一つの列車扱いなのに指定席が1.5回分求められています。
九州新幹線博多開業時代
2011年3月12日には九州新幹線博多~新八代間が延伸し、山陽新幹線と直通運転を行うこととなりました。
このため鹿児島本線特急「リレーつばめ」は廃止、博多から鹿児島中央まで一枚の三角表から算出することとなりました。
なお山陽新幹線と九州島内在来線特急の乗継割引に関しては九州新幹線鹿児島ルート全通と同じ2011年3月12日を以て全面廃止となりました。一方で、九州新幹線の列車が直通する新大阪までの指定席特急料金は自由席と比べ510円(当時)しか変わらないよう、割引が設定されました。旅客営業規則上でもこの一つの列車区間の拡大は明記されています。
結び
この特急料金特例は、九州新幹線鹿児島ルート部分開業時の7年間のみ存在した今となっては幻の料金制度です。
しかし2023年3月には九州新幹線長崎ルートの部分開業により、新幹線と在来線の連絡特急券制度が復活する可能性は大いにあります。
その際には、上述の計算式から算出された特急料金が適用されるようになるものと思います(乗継割引はすでに廃止されているので1.5回分事件は起きるはずがありません)。
もし九州新幹線長崎ルートでも同様の特急料金表を見かけたら、昔鹿児島ルートでもやってたなと思い返してみてはいかがでしょうか。
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