鉄道のメリットは、大量輸送です。
ただ、複線鉄道建設には専用の空間が必要となり、建設費も高くつきます。
この建設費を回収するため運賃を高額になりがちで、せっかく鉄道を作ったのに乗ってもらえないバスに負ける鉄道が存在します。また、単線で列車本数を増発できないがゆえに増発し放題のバスに負けている鉄道もあります。
では今回は一般路線バスに負ける鉄道たちについてみていきましょう。
JR東日本八戸線
八戸線は青森県の東北新幹線八戸駅と八戸市街地を結ぶ路線です。
ただ、八戸駅から八戸市街地へは八戸市営バスや南部バスが運行しており、2020年まで八戸市が調整に回り10分間隔で運行していました。いまでこそ八戸線昼間毎時1本運転では太刀打ちできていません。
埼玉高速鉄道
埼玉高速鉄道は埼玉県さいたま市と東京を結ぶ東京メトロ南北線と直通する路線で、2000年に開業しました。
国際興業バス赤20系統・赤21系統が赤羽駅東口~川口元郷駅・南鳩ヶ谷駅・鳩ヶ谷駅・新井宿駅まで伸びているのです。運転間隔は終日15分間隔と埼玉高速鉄道の昼間12分間隔とほぼ変わりありません。というか、2022年までは終日12分間隔だったことを考えると昼間は埼玉高速鉄道と同じ本数で安いバスとして機能していたのです。
しかも埼玉高速鉄道は東京メトロ南北線と直通しますが、地下鉄の運賃は割高です。一方、国際興業バスは赤羽駅でJR京浜東北線やJR埼京線に乗り継げますから、安く東京都心に行けますし、埼玉高速鉄道や地下鉄南北線ではいけない上野・東京・品川・池袋・新宿・渋谷の東京主要駅へ乗り換え回数1回で到着できてしまいます。
このため埼玉高速鉄道沿線住民は昼間はあまり埼玉高速鉄道を使わないのです。
南海多奈川線
多奈川線は大阪府岬町内で完結している路線です。
多奈川線は全線一律180円ですが、並行するように100円の岬町コミュニティバスを運行しています。
このため2023年10月21日南海電鉄ダイヤ改正で4割減便、昼間は1時間間隔となりました。
南海電鉄では将来的に多奈川線の廃線を見据えているようです。
JR西日本可部線
可部線は広島市内を南北に結ぶ路線です。
沿線人口は多いのですが、単線と最高速度65km/hという低規格により、朝夕でも最短10分間隔でしか設定できません。また新白島駅ができたとはいえ広島市の中心部である紙屋町・八丁堀に乗り入れないことから、利用が限られています。
一方、可部線沿線では広島交通や広島電鉄の路線バスが3分間隔でやってきます。しかも広島市の中心部紙屋町・八丁堀・広島バスセンターまで直通です。みんなJRの2倍の運賃がしてもバスに乗ってしまうのです。
JR西日本芸備線
芸備線は広島市内から北東方向に山の中を進む路線です。
単線ゆえ広島市内でも昼間30分間隔しかなく、紙屋町・八丁堀に乗り入れないことから5分間隔でやってくる広島交通や広島バス、広島電鉄や中国JRバスの各路線バスに負けています。これは可部線同様です。
また芸備線は三次~備後庄原間でも一般路線バスに負けています。の備北交通一般路線バス三城線が、平日は終日30分間隔、土休日は終日1時間間隔で運行しています。平日ですら1日7往復しか運行しない芸備線に勝ち目はありません。
一般路線バスに負ける鉄道は役目を終えているのか
では一般路線バスに負ける鉄道路線は役目を終えていて廃線になっても問題ない路線ばかりなのでしょうか。
もっとも南海多奈川線は短距離ゆえ廃線にしてバス代替にしても差し支えないでしょう。元気な高校生であれば南海本線みさき公園駅まで自転車でこげばいいので電車の本数と同じバスの運行本数を用意する必要はありません。
一方で2023年以降バスの乗務員不足が運行ダイヤに影響し、全国各地で減便が相次いでいます。
バスは乗務員1人当たりで運べる旅客は高々80人ですが、列車であれば2両ワンマン運転や4両ツーマン運転で乗務員1人当たり300人程度まで運ぶことができます。つまり鉄道なら少ない乗務員で旅客を運ぶことができるのです。
実際に北海道札幌市では北海道中央バス各路線のうち地下鉄と並行する区間をを平日昼間に大きく減便し地下鉄と乗継させることで地下鉄の通っていない区間での減便を防いでいるほか、JR西日本もバスからの利用転換を見据えて芸備線三次~備後庄原間は当分の間存続する方針であるとしています。
バスに負ける鉄道路線はバスの乗務員不足による減便を最小限に抑えることができる切り札になるかもしれないのです。
結び
日本には高速バスではなく、一般路線バスに負けている路線がいくつか存在します。
存続の危機に立っている路線もありますので、いまいちど鉄道について考え直してみてはいかがでしょうか?
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