山形新幹線・特急つばさ号の料金変遷

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様々な運賃・料金ルールを扱う企画。今回は特急「つばさ」号の料金変遷について見ていく。

在来線特急つばさ時代

上野駅まで乗り入れていたころは、全区間に渡り通常の特急料金(いわゆるA特急料金)が適用されていました。

しかし1982年11月15日に東北新幹線(大宮~盛岡間)が本開業すると、1往復を残し特急「つばさ」号は福島以北のみの運転に短縮、福島~山形間運転の列車も特急「やまばと」から特急「つばさ」に統合されました。

この際に上野(大宮)~福島~山形・秋田を利用するにあたり、特急料金が大幅に値上がりすることから新幹線と在来線列車に対する乗り継ぎ割引を適用しました。

この際に東北本線特急「はつかり」(盛岡~青森間)及び特急「たざわ」(盛岡~秋田間)はB特急料金が追加適用となりましたが、奥羽本線特急「つばさ」や羽越本線特急「いなほ」は引き続きA特急料金が適用されました。

特急料金は上野(大宮)~山形間の通常期指定席特急料金は2500円から3750円に、上野(大宮)~奥羽本線経由~秋田間の通常期指定席特急料金は2900円から4250円に大幅に値上がりしました。

後に1985年4月20日に、奥羽本線特急「つばさ」号と羽越本線特急「いなほ」号もB特急料金に値下げすることとなりました。これは新幹線で101キロ~400キロでの特急料金をを一律200円値上げしたのに対し401キロ以上の特急料金を値上げしなかったことから、上野~盛岡の利用では値上げせず上野~福島・新潟での利用で新幹線料金が200円値上げしてしまうことによる激変緩和措置だったと思われます。




山形新幹線山形開業時代

1992年7月1日に山形新幹線が開業、東京駅から山形まで福島で乗り換えることなく向かえるようになりました。

この際に奥羽本線は山形以南の標準軌と山形以北の狭軌に分断されることとなり、福島~山形~秋田間で運転していた奥羽本線特急「つばさ」号は山形での分断を余儀なくされました。これにより東京~福島~山形間を山形新幹線「つばさ」号、山形~新庄・秋田間を奥羽本線特急「こまくさ」号としました。

ただ、元はともに特急「つばさ」号であったため山形駅での乗り換え特例を設け、山形新幹線「つばさ」号と奥羽本線特急「こまくさ」号を同一の特急とみなすこととしました。

そこで特急料金を改めて設定することとしました。




在来線内完結の特急料金算定方法

まずは在来線区間利用時の特急料金算定方法。

山形新幹線開業前は奥羽本線福島~山形~秋田間に対してB特急料金が適用されていましたが、標準軌への改軌工事費や新型車両400系新幹線の開発費など費用がかさんでいたこと、新幹線相手に割安な特急料金を設定するわけにはいかないことから福島~山形間に関してはB特急料金区間から外すこととなりました。

B特急料金適用の原理・原則から行けば、B特急料金エリア内から1駅外まで特急を使えば、A特急料金が適用されます。しかし奥羽本線内のみで見ると山形で乗り換えが発生し利便性は低下しています。ここでウルトラCが発動しました。料金変動緩和措置で新たな料金表を別に定めたのです

山形新幹線福島~山形間開業時の通常期普通車指定席特急料金(1992年7月当時)

50キロまで 100キロまで 150キロまで 200キロまで 300キロまで
B特急料金(山形~秋田間に適用) 1120 1430 1840 2150 2350
米沢~かみのやま温泉発着のつばさ・こまくさ特急料金(福島利用時を除く) 1220 1530 1940 2250 2450
福島発着のつばさ・こまくさ特急料金 1220 1630 2040 2350 2550
A特急料金 1220 1630 2250 2560 2770

単位:円(消費税率3%当時)

上記のような特急料金となりました。

このデータは当時のJTB時刻表1992年7月号の特急料金のそれぞれの表から引用して作成したものですが、この特急料金の算定根拠は、

  • 福島発着の特急料金:福島~山形間の87.1kmはA特急料金区間を利用、残りの区間はB特急料金相当のため101キロ以上はB特急料金に100キロ以内のA特急料金とB特急料金の差額200円を加算
  • 米沢~かみのやま温泉発着(福島発着利用を除く)の特急料金:米沢~山形間の47.0kmはA特急料金区間を利用、残りの区間はB特急料金相当のため51キロ以上はB特急料金に50キロ以内のA特急料金とB特急料金の差額100円を加算、高畠~かみのやま温泉間発着はその内方で特急料金距離区分が同一であることから準用

であるものと思われます。

本来であればA特急料金をそのまま適用していいものを、あえてA特急料金とB特急料金の中間の料金を設定することとした背景には、山形連絡利用時に乗り換えが必須となることから利便性が低下するため、極力料金を抑えようとしたのではないかと思われます。




東北新幹線と連絡利用時の特急料金算定方法

山形新幹線「つばさ」号は日本初の新幹線と在来線を直通する列車として設定されたました。

特急料金は新幹線・新幹線以外ともに旅客営業規則第125条に定められていますが、新幹線は三角表により特急料金が決められているのに対し、在来線特急は対キロ区間制で決められています。制定当初、新幹線と新幹線以外の区間を直通する列車の運転は想定されていなかったのです。

そこで、山形新幹線の福島を跨ぐ利用に対して特急料金を新たに設定することとしました。山形新幹線開業前まで運転されていた特急「つばさ」号は奥羽本線を走る何の変哲もない在来線特急だったため、福島駅での東北新幹線との乗り継ぎには旅客営業規則57条の2及び第126条の2により乗継割引が適用され、在来線特急を特急料金を半額(5割引)にしていました。

しかし山形新幹線に開業時には、在来線区間の特急料金が値上げしたのみならず、福島駅での奥羽本線への乗継割引を廃止し、新たに設定した割引特急料金を加算することとなったのです

新幹線との通常期普通車指定席乗継特急料金比較(1992年6月と同年7月)

50キロまで 100キロまで 150キロまで 200キロまで 300キロまで 備考
山形新幹線開業前の福島連絡特急つばさ号(1992年6月まで) 560 710 920 1070 1170 自由席利用時は250円引き
福島連絡山形新幹線利用・山形連絡特急こまくさ号(1992年7月以降) 850 1140 1350 1500 1600 自由席利用時は350円引き
値上げ額 290 430 430 430 430

単位:円(消費税率3%当時)

上記のような特急料金となりました。

このデータは先程同様当時のJTB時刻表1992年7月号の特急料金のそれぞれの表から引用・計算して作成したものですが、この特急料金の算定根拠は、

  • 100キロまで(福島~山形間87.1km以内):山形新幹線区間のみの利用のため、A特急料金を3割引き(10円未満端数切捨て)した割引特急料金を東北新幹線の特急料金に加算
  • 100キロ超え(福島~天童間100.4km以遠):山形駅で特急「こまくさ」に乗り継ぐ利用であるため、山形から先の区間については100キロまでのA特急料金を3割引き(10円未満端数切捨て)した額にB特急料金から100キロまでのA特急料金の差額の半額(5割引・10円未満四捨五入)を加算したものを割引特急料金とし、東北新幹線の特急料金に加算

であるものと思われます。

こちらも値上げによる差額を見ると50キロ以上は全て差額が通常期普通車指定席利用で430円となっており、極力値上げさせようとしなかったようです。




山形新幹線新庄開業時代

その後、1999年12月4日には山形新幹線が新庄まで延伸することとなりました。

また同時に、奥羽本線特急「こまくさ」は新庄~秋田間に短縮され、料金不要の快速列車に格下げされました。

このことから、山形~秋田間全てにおいてB特急料金指定を解除することとなりました。

これにより山形新幹線を利用する際の特急料金は、奥羽本線内であれば全区間A特急料金、東北新幹線との連絡時にはA特急料金を3割引き(10円未満端数切捨て)した割引特急料金を東北新幹線の特急料金に加算する形となり、1997年3月22日開業の秋田新幹線とほぼ同等の制度となりました。

この後は消費税増税による値上げこそあったものの、それ以外での値上げは制度変更は実施されていません。

もし今でも特急「こまくさ」が新庄~秋田間の特急列車として設定されていたら、福島~秋田間の利用はB特急料金の490円増し、東北新幹線乗り継ぎ時は720円の値上げ額のままだったのでしょう。


結び

今回は、奥羽本線特急「つばさ」号及び山形新幹線「つばさ」号の特急料金変遷について、投稿時点にして約37年前から振り返ってきました。

山形新幹線の特急料金なんて奥羽本線内利用はA特急料金の適用で、東北新幹線と乗り継ぐ場合には表の特急料金足せばいいんでしょとお思いの方が多いと思います。

しかし歴史を紐解けば現在の特急料金にたどり着くまでに、幾多もの変化とその制度を考え着くまでの努力があるのです。

今度山形新幹線を見かけた際や何らかの形で山形が取り上げられた際には、そんな歴史もあったんだなと振り返っていただけると幸いです。

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