JR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本の4社は2023年4月14日、プレスリリースにて2024年3月15日をもって新幹線と在来線特急の乗継割引をすべて廃止すると公表した( 新幹線と在来線特急列車との「乗継割引」の廃止について )。今回はこれについて見ていく。
乗継割引完全廃止へ
今回の2024年3月16日JR旅客各社料金改定では、新幹線と在来線特急列車を乗り継ぐ際に特急料金を半額に割り引く乗り継ぎ割引制度を廃止する。
乗り継ぎ割引は1965年10月1日の東海道新幹線増発により東海道線特急・急行・準急列車を縮小し新大阪乗り継ぎを強化する一方、従来の直通利用者の特急料金激変緩和措置として導入したことに始まる。が、その後新幹線の相次ぐ開業で新幹線だけでも多くの都市に行けるようになったこと、長距離移動者はごく一部を除いて喜んでお金を出してくれるので市場経済的に安くする必要性がないこと(心理学的にもお金を払った方が幸福度が高い)、世間一般に新幹線はそこらへんの電車とは別物という認識が多数を占めている利用者個人のネット予約を含むきっぷの購入しやすさ向上の観点から新幹線と在来線列車の料金券を完全に分離することとしたものである。
JR東日本では「新幹線と在来線特急列車を乗り継いだ場合に、在来線の特急・急行料金、指定席料金が半額となる「乗継割引」の取扱いを終了します」としているが、他3社ではいずれも「新幹線と在来線特急列車とを次の駅で乗り継いだ場合に適用される「乗継割引」について廃止します。」としている。これを原義通り読み解くと、JR東日本は乗り継ぎ割引を一切廃止すると読めるが、JR東海・JR西日本・JR北海道は特急列車との乗り継ぎ割引はやめるが急行列車との乗継割引について何も記載がないので急行列車だけ乗継割引が存続するのではないかとも読める。が、JR東日本とJR北海道はともに新青森駅を乗り継ぎ割引設定駅としていることから片方だけ急行を認めるとは考えにくいこと、JR旅客6社旅客営業規則第57条の2で乗継急行券として包括規定していることを考えると条文ごと全削除と考えるのがふつうだろう。
そうなると、新幹線と在来線列車の料金割引全廃止と考えるのが定石だろう。
この乗継割引廃止により在来線特急列車の運転区間により指定席利用で630円~1,480円程度の値上げが見込まれる。この中でも利用者が多そうな区間が東京・名古屋~東海道新幹線~新大阪~特急くろしお~和歌山方面と新大阪~東海道新幹線~名古屋~特急しなの~松本・長野である。双方とも2社にまたがっているため割引きっぷを発売しにくく、特急「くろしお」は2022年3月12日に全車指定席化したほか特急「しなの」も2016年3月26日ダイヤ改正で大阪発着の1往復を廃止することで安値で行ける手段を減らしている。しかも日本航空やフジドリームエアラインズなどの航空機と競合していることから、多少客逃れしてもおかしくはないだろう。
JR東海で特定特急料金区間拡大か!
また今回の乗り継ぎ割引廃止に合わせ、JR東海在来線特急で割安な特定特急料金区間を拡大する可能性がある。
JR東海管内では在来線特急のほぼすべての区間で自由席を30kmまで330円、50kmまで660円と所定の760円より割安に利用できる。ただし、比較的在来線特急列車の本数が多く新幹線接続駅を含む特急「ふじかわ」静岡~富士間、特急「しなの」名古屋~多治見間、特急「ひだ」名古屋~岐阜間およびJR西日本車両で運転する特急「しらさぎ」名古屋~米原間は対象外となっている。
もっともこれらの区間は毎時3本以上の普通列車を運転しているので普通列車でも問題なく乗れるため割安な料金設定をしているとも言えるのだが、それ以上に新幹線と乗継割引を適用してしまうと在来線特急料金が半額になってしまい手取りが減ってしまうのも挙げられる。もっとも東海道新幹線と豊橋で連絡する飯田線特急「伊那路」や名古屋で連絡する紀勢本線特急「南紀」はそれどころではないほど利用者数が少ないので乗り継ぎ割引適用期間でも自由席特急料金30km以内330円として新幹線と乗継時にはたった160円で利用できる破格の安値をしているのだが、比較的利用者の多い特急列車ではあえてやる必要はない。
が、今回の2024年3月16日料金改定で新幹線と在来線特急にとの乗継割引が全面廃止となれば、JR東海ほぼ全線で適用している50km以内の割安料金を設定しない理由の1つが消える。
また実際に2011年3月12日にJR九州がJR西日本山陽新幹線との乗り継ぎ割引を廃止する際には九州島内の特急料金を2割程度値下げしており、九州島内利用では値下げとなったほか山陽新幹線乗継でも値上げ幅を多くの区間で500円程度に収めているほか遠くても1,000円以内に抑えている。そうなると比較的財務状況に余裕のあるJR東海で50km以内の在来線特急特定料金区間をJR東海管内全域に拡大してもおかしくはないだろう。
一方、2020年以降の急速な旅客減により大きくダメージを受けたJR東日本やJR西日本は値下げの余裕はないし、JR東日本は羽越本線特急「いなほ」や奥羽本線特急「つがる」を割安なB特急料金から除外して200円程度の値上げを図る可能性もあるだろう。
今後乗車券も新幹線と在来線で分離か
今回の2024年3月16日JR旅客各社料金改定で新幹線と在来線特急との乗継割引を廃止するが、その理由の多くを公式プレスリリースではネット予約への移行としている。
ネット予約は、JR東日本のえきねっとやJR西日本のe5489であれば通しで買えはするが、基本的に割引はない。一方、割安商品は新幹線駅相互間のみ利用可能で、在来線とは完全別運賃としていることがほとんどである。
JR旅客各社がネット予約への移行を促していることを考えると、きっぷ乗車券も新幹線と在来線を分離するのも時間の問題だろう。
結び
今回の2024年3月16日JR旅客各社料金改定で新幹線と在来線特急との乗継割引を廃止することとした。
今後JR旅客各社でどのようにきっぷを扱いネット予約を充実させるのか、見守ってゆきたい。
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