割引縮小は都営地下鉄との乗継利用にも波及か 京急電鉄空港線加算運賃引き下げ(2019年10月1日)

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京急電鉄は2019年2月19日、プレスリリースにて10月1日に空港線に対して実施されている加算運賃を引き下げると公表した( 加算運賃の引下げ実施に関するお知らせ )。今回はこれについて見ていく。

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空港線加算運賃大幅値下げへ

今回の2019年10月1日京急電鉄運賃改定では、空港線天空橋~羽田空港国内線ターミナル間に対して設定されている加算運賃が普通乗車券で170円から50円に値下がりし、120円安くなる。

加算運賃の引き下げは、2006年12月16日に名鉄豊田線で、2018年3月17日に京王相模原線で実施されたことがあるが、それぞれ最大60円引き下げ、20円引き下げとなっている。しかし今回の京急電鉄の加算運賃引き下げ幅は120円となっており、過去に類を見ないものとなっている。

これにより消費税増税が実施されないのであればプレスリリースの記載の通り品川~羽田空港国内線ターミナル間はIC287円、泉岳寺~羽田空港国内線ターミナル間はIC328円、京急川崎~羽田空港国内線ターミナル間はIC287円、横浜~羽田空港国内線ターミナル間はIC358円に引き下げられることになる。これにより天空橋でいったん下車すると安くなる生産性のない制度が無くなる見込みだ。

ちなみに横浜~羽田空港国内線第一ターミナルは京浜急行の電車で昼間のエアポート急行利用で所要時間は26~28分、京浜急行のバスなら24~30分となっている。しかもバスは片道580円と電車の加算運賃引き下げ前より102円高いものの、往復乗車券960円と電車と4円しか変わらない。しかも昼間はともに毎時6本(10分間隔)の運転となっている。しかし今回の電車の加算運賃引き下げで電車は120円値引きされることから、バスが値下げに耐え切れず減便される可能性が高そうだ。

いや、京浜急行グループとしてもエアポート急行に空席があること、バスの運転手不足が深刻なことからできればバスより電車への移動に切り替えてほしいわけで、むしろバスから電車にシフトしてほしいところなのだろう。

一方、対品川では乗車人員的に東京モノレールとほぼ互角の戦いをしているようだ。運賃は東京モノレールが浜松町~羽田空港第1ビル間でIC483円と京急の品川~羽田空港国内線ターミナル間より現行でも76円高いほか、加算運賃引き下げ後は196円も高くなる。

JR東日本の場合、電車特定区間では1区上がると75円~90円程度値上がりする。このため、東京駅より北側では品川から京急連絡よりも浜松町から東京モノレール連絡の方が安かったりする。京浜東北線王子の場合、浜松町まではIC216円であるが、品川まではIC302円となり86円高くなる。かくして羽田空港に行くには浜松町から東京モノレールに乗り換えた方が2018年2月現在では10円安くなる。

しかし今回の京急の加算運賃値下げで京急経由が120円も安くなることから、王子からも浜松町経由より品川経由の方が110円安くなる。これでは東京モノレールから京急に利用が移動するのは間違いないだろう。

となると、品川方面の快特・エアポート快特が混雑する可能性が高い。増発を行ってほしいところだが、行うとすれば品川~京急蒲田間で運転される毎時3本の普通車を泉岳寺~羽田空港間のエアポート急行に格上げさせるのが一番で、急行停車駅から早く品川にたどり着けるほか、空港線快特通過駅各駅から昼間の品川直通列車が復活することになり利便性が高まる。

列車の設定に当たり平和島で本線快特に抜かされる必要が生じるが、泉岳寺・品川~羽田空港間では先着を維持できる。また横浜方面のエアポート急行毎時6本のうち毎時3本を京急川崎~羽田空港間快特運転とすれば、所要時間短縮につなげることができる。このような策を図れば利便性向上につながりそうだ。




加算運賃引き下げも割引運賃制度存続へ

また2019年10月1日京急電鉄運賃改定では、空港線加算運賃引き下げにもかかわらず各種割引運賃は存続する。

まずは空港線内(京急蒲田~羽田空港間)利用に伴う運賃割引について。京急蒲田~羽田空港を利用の場合、国際線・国内線とも普通乗車券で基本運賃から30円割引をしていたが、今回の運賃改定で加算運賃自体が120円割り引かれるにも拘わらず割引制度を廃止する。

またプレスリリースに記載はないが、そのほかの羽田空港発着の割引制度が縮小される可能性は極めて高い。

京浜急行電鉄の旅客営業規則によれば、現在羽田空港発着で適用されている割引制度は2つ。1つは都営地下鉄との接続で60円割引。2つ目は都営浅草線・京成線経由で成田空港発着で90円割引となっている。なおこのほかに京急線から都営浅草線・京成押上線経由北総線利用で60円~70円割引があるのだが、京急側に割引がなく都営地下鉄発着でも適用となるため今回は除外する。

これら割引はともに京急が30円、東京都交通局が30円、成田空港発着に限り京成電鉄が30円割引している。成田空港発着に関しては京成本線経由の場合2018年現在も140円の加算運賃が取られているため90円割引でも基本運賃の合算より高くなるが、都営地下鉄~羽田空港利用の場合加算運賃が50円に引き下げられることから60円値下げしてしまうと基本運賃の合算より10円安くなってしまう。そうなると都営地下鉄各駅から利用した場合羽田空港第3ターミナル発着より空港線糀谷~天空橋発着の方が運賃が高く成り得るのだ

これを防ぐため京急では羽田空港第3ターミナル発着より運賃が高く成り得る空港線糀谷~天空橋間を対象に「羽田みらいきっぷ」を発売し、遠方の方が運賃が安くなる現象を抑えようとしている。ただ京急がやる気がないのは空港線糀谷~天空橋間でしか発売していないこと及び裏が白いきっぷのため自動改札に対応していないのだ。まぁやる気がないと言われればそれまでなのだが…

ただ、そうなると都営線内で期間限定で発売している羽田空港往復きっぷ(1,020円)が、泉岳寺から2018年2月現在でIC216円区間の場合はそのままIC乗車券で入場した方が安くなる。これでは多くの区間で往復きっぷとほぼ同額か安値になるので、羽田空港往復きっぷは900円に値下がりすることとなった。もっとも往復240円値下がりしたのに比べると片道分しか値下がりしていないと言われればそれまでだが。

また、地方でも影響が出る可能性がある。このプレスリリースが出た直後の2019年2月20日には3月20日を以て大分空港と米子空港での京急乗車券の発売を終了するなど、維持費用削減に努めている。

また京急では羽田京急きっぷを地方空港を発着するバスと連携して発売しているが、今回の加算運賃片道120円・往復240円値下げによりきっぷの発売額引き下げを行わない限り往復切符を使用した方が高くなる場合がある。秋田・富山・ハウステンボス(長崎空港経由)では割引額が240円を下回っており、料金改定するか発売廃止をするかが迫られる見込みだ。


結び

今回の2019年10月1日京急電鉄運賃改定では、空港線内での加算運賃が120円割り引かれることとなり、多くの区間で現行より運賃が値下げされる可能性が高く、京浜急行の電車の利用率が高くなる可能性がある。

一方で、企画きっぷが縮小・廃止される可能性があり、実質値上げになってしまう可能性も否定できない。

今後京急が対羽田空港戦略においてどのように立っていくのか、見守ってゆきたい。

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