トランスポンダの設定で別駅化か 東武鉄道運賃改定(2019年3月16日)

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東武鉄道は2019年2月15日、プレスリリースにて3月15日を以て東武ワールドスクウェア発着に対する割引運賃を廃止すると公表した( 割引運賃の廃止について )。今回はこれについて見ていく。

小佐越と東武ワールドスクウェアを別駅化へ

今回の2019年3月16日東武鉄道運賃改定では、ダイヤ改正に合わせて東武ワールドスクウェア発着の割引運賃を廃止する。

この割引運賃は既に開業している小佐越と0.8km北側に位置する2017年7月22日に開業した東武ワールドスクウェア駅を運賃計算上同一駅とみなすことにより、一部の駅で東武ワールドスクウェア駅からの営業キロによる運賃計算より小佐越駅からの営業キロによる運賃計算の方が安くなる駅が存在し、割安な小佐越発着の営業キロで計算している。これが今回のプレスリリースで述べられている割引運賃である。

よって、今回の割引運賃の廃止というのは、小佐越と東武ワールドスクエアの両駅を運賃計算上別駅扱いとすることで、新高徳以南の駅への運賃計算に用いる営業キロが0.8km延びることにより、一部の駅で運賃区分が1区分値上がりすることを意味している。




では今回の運賃改定で東武ワールドスクウェアからの運賃が値上がりはどこか。プレスリリースによれば、鬼怒川線下今市、日光線静和、新栃木、家中、伊勢崎線姫宮、南羽生、佐野線佐野市、宇都宮線江曽島、野田線六実の9駅である。

実害が大きそうなのは下今市や新栃木くらいで、それ以外の駅は特に東武ワールドスクウェアからの利用者は極めて少なそうだ。

なお、割引運賃撤廃に合わせて、東武ワールドスクウェア~鬼怒川公園の利用ではきっぷで利用すると150円であるが、ICカード利用では小佐越と同一駅扱いとして165円と計算されてしまうことから、きっぷでしか利用できないことにしていた。しかし今回の運賃改定で東武ワールドスクウェア~鬼怒川公園間の利用であってもきっぷの運賃150円に対応するIC運賃である144円が引き去られることとなり、ICカードの利用を解禁する見通しだ。

また今回の運賃改定に合わせ、運賃計算上同一駅扱いをしていた小佐越~東武ワールドスクウェア間でもICカードの利用ができるようになる。




いかにして東武ワールドスクウェア発着のきっぷ・ICカードの運賃を引き去るか

今回の2019年3月16日東武鉄道運賃改定では、小佐越と東武ワールドスクウェアを運賃計算上別駅扱いとすることから、東武ワールドスクウェア発着の一部の利用で運賃が変わる。

ではどのように判定するのか。

まずはきっぷの場合。東武ワールドスクウェアは無人駅で、自動改札機の設置がない。つまり、降車する場合にはきっぷ収集箱に入れるか、混雑時に駅員が行っている有人改札で人の目で見分ければよい。せいぜい運賃が上がる駅の運賃表は張り替える必要はあるが、きっぷに関してはこれといった特別な対策は必要ない。

問題はICカード利用時だ。そもそも小佐越と東武ワールドスクウェアの両駅を2017年7月22日の開業時に運賃計算上同一駅とみなすことになったのは、ICカードの利用区間のデータベースの問題がある。

東京都市圏(首都圏)で使用可能なSuicaやPASMOなどの運賃計算には、駅間運賃のデータベースを用いる。特に東京都市圏で利用できるエリアは非常に広いため、組み合わせがいく億通りも存在する。これまで何度か利用可能エリアの拡大が図られたが、その都度データベースを更新し不具合が出ないかいく億通りの利用で検証を行ってきた。

しかしそれでは時間がかかるし更新のたびに莫大な費用が掛かる。大幅なエリア拡大であればそれに見合ったコストを支払うことができるが、単一駅の開業でこんな莫大な費用をかけられない。そのことから、2017年4月1日に開業した範囲の狭いSuica仙台エリア内の磐越西線郡山富田駅は他駅とな別の営業キロを基にした運賃で計算するのに対し、Suica首都圏エリア内の2016年3月26日開業の南武支線小田栄や2018年4月1日開業の両毛線あしかがフラワーパークの両駅は、それぞれ南武支線川崎新町と両毛線富田と運賃計算上同一駅扱いとして扱っている。そのため、今回の東武ワールドスクウェア発着の割引運賃廃止で東武ワールドスクウェアからの運賃データを追加しているとは思えない。




ではどのように扱っているのだろう。今回値上げとなった区間やICカードが利用可能になる小佐越や鬼怒川公園への運賃は鬼怒川温泉発着の運賃と同額となっている。では東武ワールドスクウェア発着を全て鬼怒川温泉発着と運賃計算上同一扱いにしたかというと、浅草~東武ワールドスクウェア間がIC1543円に値上がりしてしまうからそれはあり得ない。

では運賃のデータベースをいじらずにいかにして東武ワールドスクウェア発着のICカード運賃を正しく引き去るのだろう。

ICカードの運賃計算上東武ワールドスクウェア発着を原則小佐越発着として計算するのは変わらない。しかし、東武ワールドスクウェア設置のICカード出場機を使用した場合、今回値上げとなる9駅及び小佐越・鬼怒川公園から入場した場合のみに条件分岐(IF文)を設定して鬼怒川温泉着として端末が認識し、データベースに運賃照会をすれば、この11駅から入場した場合のみ鬼怒川温泉で下車したとICカードに記録が残り、正しい運賃が引き去れそうだ。

また東武ワールドスクウェア駅のICカード入場機で入場した場合、小佐越2駅(A列車で行こう風)という名称でサーバーに入場記録をつけたとしよう。この小佐越2駅入場の場合、原則小佐越で入場した扱いとして通るが、東武鉄道管内の先述の9駅及び小佐越・鬼怒川公園で出場する場合に限り鬼怒川温泉で入場した扱いの運賃を引き去る条件分岐(IF文)を設定して、運賃情報の入ったデータベースにアクセスさせればいいのではないか。

少なくとも100N系グランドひかりの220km/h進行のATC信号を車両に搭載したトランスポンダで230km/hに読み替えて運転するよりはるかに安全だ(というか21世紀でそんなことやったら確実に殺される。ましてやJR西日本では)。

今回の一番の幸運は、割引運賃の廃止駅に北千住や押上、栗橋などの他社線連絡駅が一切入っていないことだ。つまり、この特殊な出場処理を行う駅を東武鉄道管内のみに限定することができ、設備投資が少額で済む見込みだ。

もし今回の割引運賃の撤廃駅に他社接続駅が含まれていたのであれば、他社線内駅へも全て読み替えをお行う必要があることからも東武鉄道1社で扱える問題ではなくなり、今回の東武ワールドスクウェア発着の割引運賃廃止はなかったのかもしれない。


結び

今回の2019年3月16日東武鉄道運賃改定では、ダイヤ改正に合わせ東武ワールドスクウェア発着の運賃を小佐越とは別駅化することにより、一部区間で運賃改定を行うこととなった。

もし今回のICカード利用時の条件分岐がうまくいけば、2019年10月1日の消費税増税に伴う運賃改定で南武支線小田栄や両毛線あしかがフラワーパークなども別駅扱いで運賃計算が行えるようになる可能性がある。

今後東京都市圏のIC運賃がどのように変化していくのか、楽しみにしたい。

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