JR東日本は2024年12月6日、プレスリリースにて2026年3月に運賃を改定すると公表した。今回はこれについて見ていく。
具体的な運賃を記載!JR東日本運賃変遷はこちら!
幹線運賃統一で東京近郊大幅値上げへ!
今回の2026年3月14日JR東日本運賃改定では、全線で運賃値上げを行う。
今回の運賃改定ではJR東日本の運賃表を4表から2表に再編し簡素化する。具体的には電車特定区間と山手線内の運賃表を幹線運賃表に統合する。
課金してでも着席したい富裕層ブルジョワが多くいる東京近郊で運賃をぼったくるようにも見える。が、国土交通省では鉄道運賃表は基本1本としており(換算キロなどの調整をして1本でも可能)、1996年1月20日運賃改定でJR九州とJR四国が地方交通線専用運賃表を取り上げられたのも(JR北海道は運賃改定を行わないJR東日本と当時地方交通線海峡線で連絡していたためその兼ね合いで残さざるを得なかった)、会社分割で大幅な運賃改定を目論んでいる南海電鉄が2025年4月1日の泉北高速鉄道合併で運賃表を一本化するのもそのためである(なお運賃の本体価格を変えない場合は京成電鉄のように既得権益で複数あっても黙認している模様)。このため今回の山手線内と電車特定区間内の運賃表削除は国土交通省の方針と言えそうだ。
これにより青梅線・五日市線~八王子最遠中央線・横浜線方面の電車特定区間運賃と幹線運賃混乱地域も解消する見込みだ。
今回の運賃改定では、線区種別ごとに以下のような値上げ率となる。
運賃区分 | 普通運賃 | 通勤定期 | 通学定期 |
幹線 | 4.4% | 7.2% | 変化なし |
地方交通線 | 5.2% | 10.1% | 変化なし |
電車特定区間 | 10.4% | 13.3% | 8.0% |
山手線内 | 16.4% | 22.9% | 16.8% |
このように山手線内と電車特定区間内で大幅に値上げするほか、通勤定期を普通運賃以上に値上げすることとした。
また具体的な1kmあたりの賃率変化は以下の通り。
運賃区分 | 改定前(km/円) | 改定後(km/円) | 値上げ率 |
幹線300km以内 | 16.20円 | 16.96円 | 4.7% |
幹線300km超600km以内 | 12.85円 | 13.45円 | 4.7% |
幹線600km超 | 7.05円 | 7.05円 | 変化ないが、往復割引廃止で実質11.1% |
電車特定区間300km以内 | 15.30円 | 16.96円 | 10.8% |
電車特定区間300km超600km以内 | 12.15円 | 13.45円 | 10.7% |
山手線内300km以内 | 13.25円 | 16.96円 | 28.0% |
地方交通線273km以内 | 17.80円 | 18.66円 | 4.8% |
地方交通線273km超546km以内 | 14.10円 | 14.80円 | 5.0% |
地方交通線546km超 | 7.70円 | 7.70円 | 変化ないが、往復割引廃止で実質11.1% |
なお2020年から2023年の間に物価が約20%値上げしている一方で、多くの区間で運賃値上げを11%以内に抑えていること、また幹線・地方交通線では通学定期を据え置くことからかなり配慮していると言える。
一方で山手線内の10km超の区間では普通運賃が28%値上げすることになるなど物価以上の値上げとなっている。このためもはや東京23区内では山手線や総武線より東京メトロや都営地下鉄などの地下鉄を使った方が安くなる。
これにより地方交通線/幹線は1.099倍から1.100倍となる。
割安な特定運賃は一部廃止で大幅値上げ!
また今回の2026年3月14日JR東日本運賃改定では、電車特定区間より安かった特定運賃区間を削減し最大で幹線相当とすることで大幅な値上げを図る。
特定運賃の値上げ内容は以下の通り。
区間 | 2023/3/18 | 2026/3/14 | 値上げ率 | 備考 |
東京-西船橋間 | 318 | 341 | 7.2% | |
上野-成田間のうち50kmを超える区間 (常磐線・成田線経由) |
935 | 1,221 | 30.6% | 廃止 |
新宿-八王子間のうち30kmを超える区間 | 492 | 616 | 25.2% | |
新宿-高尾間のうち35kmを超える区間 | 571 | 715 | 25.2% | |
新宿-拝島間のうち30kmを超える区間 | 483 | 528 | 9.3% | |
渋谷-吉祥寺間 | 230 | 281 | 22.2% | |
渋谷-横浜間のうち25kmを超える区間 | 406 | 440 | 8.4% | |
渋谷-桜木町間のうち30kmを超える区間 | 483 | 616 | 27.5% | 廃止 |
品川-横浜間のうち15kmを超える区間 | 303 | 341 | 12.5% | |
品川-逗子間のうち45kmを超える区間 | 736 | 803 | 9.1% | |
新橋-逗子間のうち50kmを超える区間 | 824 | 902 | 9.5% | |
新橋-衣笠間のうち50km超59km以内 | 824 | 1,034 | 25.5% | 廃止 |
浜松町-横須賀間 | 824 | 1,034 | 25.5% | 廃止 |
新橋-久里浜間のうち60kmを超える区間 | 945 | 1,221 | 29.2% | 廃止 |
横浜-逗子間のうち20kmを超える区間 | 356 | 440 | 23.6% | |
横浜-田浦間のうち30kmを超える区間 | 483 | 616 | 27.5% | 廃止 |
単位:円
このように特定運賃区間では特定区間廃止区間のみならず京王電鉄と競合する区間で物価上昇を大きく上回る20%超の値上げを行い、最大で30%値上げに至っている区間もある。
また特定運賃を存続している区間でも渋谷-吉祥寺間を除く全区間が新しい幹線運賃の価格に一致する価格があり、かつ本来相当する距離に対する価格の1区前の価格となっている(渋谷-吉祥寺間のみ半区前)。つまりもし次回JR東日本が運賃改定しようものなら特定区間の割安運賃を全廃できるようになっているといえるだろう。
幹線・地方交通線ICカード運賃がきっぷより安いか同額に!
また今回の2026年3月14日JR東日本運賃改定では、きっぷの運賃の算定方法を管内で統一する。
IC運賃は依然1円刻みだが、きっぷの運賃は山手線内含む電車特定区間内ではIC運賃を10円単位で切り上げ、幹線・地方交通線では10円単位四捨五入としていたためきっぷの運賃の方がICカードの運賃より安いことが100km以内で多々ある(なお100km超はICカード運賃が10円単位のため同額)。が、今回の運賃改定で幹線・地方交通線もIC運賃の10円単位切り上げとすることで、100km以内ではICカード利用の方が安くなるようになる。
この補償も踏まえてか、JR東日本では2030年までにSuicaエリアを管内全域に広げることで全エリアでICカード運賃を適用できるようにする見込みだ。もっとも国土交通省から言われたのだろうが、そんなことするならSuicaエリア外を廃線や第三セクター転換した方が楽だと思うし、地域交通的にも普通列車を中心に増発できるので利便性が上がるのだが。
このほか同日2026年3月14日JR東日本運賃改定に合わせ往復割引と連続乗車券を取りやめる。往復割引は片道600km超の区間で同一区間を往復同時購入すると運賃を1割引きする制度だが、この廃止で遠距離ではさらに値上げとなる。
結び
今回の2026年3月14日JR東日本運賃改定では、国土交通省の運賃指針に基づき電車特定区間内と山手線内を廃止し幹線運賃に統合、東京近郊を中心に大幅な値上げを図ることとなった。
今後JR東日本でどのような運賃改定を図るのか、見守ってゆきたい。
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関連情報:運賃改定の申請のお知らせ – JR東日本
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