鉄道車両の検査と周期

  2183回閲覧

鉄道車両の検査と周期

鉄道輸送の最大の使命は、安全な大量輸送です。

このため輸送に必要な車両を点検することが国土交通省令で定められています。

この検査は自動車の車両検査と同じで、日ごろから行う車両検査と車検に相当する大がかりな検査に分かれています。

そこで今回は鉄道車両の車体検査について見ていきましょう。

鉄道車両の検査種類と内容

鉄道車両の検査は主に4つに分かれます。

仕業検査:特に運転に必要不可欠な装置とされる集電装置、台車、ブレーキなどの動作確認を行う検査。運用の途中に短時間で行う。車庫で行われることが多い。
交番検査:さらなる動作確認を行う検査。点検に1日程度かかる。運用から外して行われる。車庫で行われることが多い。
重要部検査・台車検査:鉄道車両から台車を取り外して行う検査。点検に5日~2週間程度かかる。自動車でいう車検に相当し、総合車両所など大規模な設備でのみ実施可能。多数の工程が必要なため、近年多くの鉄道車両・鉄道会社では新重要部検査と称して台車を取り外さない検査に移行している。
全般検査:すべての主要部品を取り除いて行う検査。点検に10日~3週間程度かかる(東海道新幹線N700系・N700Sで14日)。総合車両所など大規模な設備でのみ実施可能。

それぞれ国土交通省令および国土交通省への延長認可により検査までの期間・走行距離が決められており、それを超えて運転することはできない。

それでは鉄道車両の検査周期について見ていこう。




通勤電車・電車特急の車体検査周期

通勤電車や在来線特急の車体検査周期です。

両方とも電気を動力とする電車のため、車体検査については電車としてひとくくりにしています。

一般的な電車の車両検査周期は以下の通り。走行距離がかかわる台車検査を除いて期間で点検周期を決めています。

経過日数 走行距離
仕業検査/列車検査 3日~10日
交番検査 3か月
重要部検査 4年 60万km
全般検査 8年

なおJR北海道・JR東日本では在来線電車の仕業検査周期は6日以内、JR西日本では10日以内(2020年まで7日以内)としている。

とはいえ上述のものは2001年12月に国土交通省令で定められたもので、鉄道車両の部品が減り摩耗箇所が減ったため各社実験の上申請により検査周期の延長や定期検査内容の簡略化などの独自の検査周期で行うことができるようになっている。

最も多いのが重要部検査の簡略化で、新重要部検査と称して車体から台車を切り離さずに交番検査並みに少し足した点検内容としている。これにより台車と車体を切り離す手間が減り作業の簡略化・点検日数の短縮につながっている。なおこの場合重要部検査に相当する検査は全般検査で実施する。

検査周期が延伸している電車の点検だが、今回はその中でも情報が公開されているJR東日本やJR西日本について紹介する。




JR東日本新保全体系・モニタリング保全体系

在来線電車の車両の部品数が減りの摩耗が減った。

そこでJR東日本では2002年4月から新製車両について各車体検査内容を見直し、車両検査周期を伸ばすこととした。

仕業検査は変わらないが、交番検査の多くを機能保全(年)に移管したほか、重要部検査を装置保全、全般検査を車体保全に移行し一部検査周期を伸ばせなかったものを機能保全(月)や指定保全で補っている。

この検査周期延長により予備車の削減に成功、JR東日本では車両置き換え時に新製車両投入数を1本ずつ減らすことにより経費節減を図っている。

2002年4月時点での点検周期は以下の通り。

経過日数 走行距離
仕業検査 6日
機能保全(月) 90日
機能保全(年) 360日
指定保全 60万km
装置保全 120万km
車体保全 240万km

その後2019年7月から指定保全・装置保全・車体保全でさらに点検周期を伸ばした。E235系以降のモニタリング保全体系も2023年時点では以下と同様の検査周期となっている。

経過日数 走行距離
仕業検査 6日
機能保全(月)/A保全 90日
機能保全(年)/B保全 360日
指定保全/C保全 80万km
装置保全 160万km
車体保全 320万km

JR西日本の電車の検査と周期

JR西日本では1987年のJR西日本分割民営化後に新製した電車を対象に2018年4月から検査周期を延長することとした。

この際に全般検査を台車系統を点検する距離保全とそのほかを検査する期間保全に分け、すべての検査を同時に行う機会が大きく減らした。

なお仕業検査は2021年に7日以内から10日以内に延長している。

経過日数 走行距離
仕業検査 10日
機能保全(交番検査) 90日
距離保全 80万km
期間保全 120か月 120万km




過去の電車検査周期変遷

現在の電車検査周期は2001年12月より適用しているが、過去は以下のようになっていた。

鉄道車両の検査周期変遷

出典:鉄道車両のメンテナンス技術の動向

気動車の車体検査周期

気動車の車両点検内容です。

気動車は軽油を燃やして運転すること、クラッチがあり部品が多いため、台車検査に相当する重要部検査を電車より間隔を狭くしている。

経過日数 走行距離
仕業検査/列車検査 3日~10日
交番検査 3か月
重要部検査 4年 50万km
全般検査 8年

なおJR旅客6社では在来線電車の仕分検査周期は6日以内としている。




新幹線車両の車体検査周期

新幹線車両の車体検査周期です。都市鉄道より最高速度が速いため台車を中心に車体の摩耗が早いことから、点検周期を短くしています。

経過日数 走行距離
仕業検査 48時間
交番検査 30日 3万km
台車検査 18か月 60万km
全般検査 36か月 120万km

N700系・N700A・N700Sの車体検査周期

N700系・N700A・N700Sの車体検査周期です。

N700系やN700Aでは従来の700系や500系と比べ部品数を減らし摩耗部分を少なくしたことから、2015年より3月より交番検査の周期を、2022年4月より順次16両編成の台車検査・全般検査の検査周期を長くしています。

これにより東海道新幹線では車両投入を1本削減できたといわれています。

経過日数 走行距離
仕業検査 48時間
交番検査 45日 6万km
台車検査 20か月 80万km
全般検査 40か月 160万km

※N700系8両編成の台車検査周期は18か月60万km、全般検査周期は36か月120万kmのまま変わらず

E5系・H5系・E6系・E7系・W7系・E8系の車体検査周期

E5系以降の東日本系新幹線の車両検査周期です。

E5系以降、従来のE2系やE3系と比べ部品数を減らし摩耗部分を少なくしたことから、各種検査の周期を長くし交番検査以降は距離規定のみとしています。

交番検査は2019年より、台車検査と全般検査は2021年8月より検査周期を伸ばしています。

経過日数 走行距離
仕業検査 48時間
交番検査 6万km
台車検査 80万km
全般検査 160万km


結び

鉄道車両の車両検査周期は基本的に4種類あり、近年ではどんどん検査周期を延長し省力化しているほか、点検による運用離脱車の減少にもつながり運用効率が上がっています。

持続可能で安価な鉄道輸送を維持するためにも鉄道車両側の点検箇所縮小と点検周期延長は今後も行われるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました