JR九州は2022年4月28日、プレスリリースにて9月23日の西九州新幹線開業に合わせ特急料金を改定すると公表した( 西九州新幹線の運賃・特急料金について )。またJR九州は2022年6月17日、プレスリリースにて9月23日の西九州新幹線開業に合わせネット予約も価格改定すると公表した( 西九州新幹線開業に伴う割引きっぷについて )。今回はこれらについて見ていく。
2022年9月23Ⅰ西九州新幹線部分開業に伴うダイヤ改正はこちら!
西九州新幹線開業で営業キロ短縮へ!
今回の2022年9月23日JR九州料金改定では、西九州新幹線の開業に伴い博多〜長崎間で経路が変わるため営業キロを変更し従来より短縮する。
まずは経路変更に伴う営業キロ変更。今回開業する西九州新幹線は武雄温泉〜長崎間の実キロ66.0kmである。
が、諫早〜長崎間は市布経由の長崎本線と同一路線扱いとして同一の営業キロを用いるため、実キロの21.2kmより3.6km長い24.8kmを営業キロとして使用する。
一方で新大村〜諫早間は大村線も結んでいるのだが、こちらは同一路線として扱わない。このため新大村〜諫早間は大村線では営業キロ13.8km、地方交通線運賃算出用に用いる擬制キロ15.1kmとなる見込みだが、西九州新幹線では営業キロ12.6kmとするほか、そもそも幹線扱いなので擬制キロがない。このため、新大村〜諫早間では事前に大村線と西九州新幹線の経路を指定して発券しなければならない。
これにより西九州新幹線武雄温泉〜長崎間は実キロ66.0kmに対し、営業キロ69.6kmとなる。
これにより博多~長崎間の営業キロは153.9kmから151.5km(うち在来線81.9km、西九州新幹線66.0km)に2.4km短縮する。ただ、博多〜長崎間の運賃は2,860円のまま変わりない。
西九州新幹線開業で新幹線料金設定へ!
今回の2022年9月23日JR九州料金改定では、西九州新幹線の開業に伴い博新幹線特急料金を設定する。
今回設定する西九州新幹線の指定席特急料金はすでに開業している九州新幹線と同水準で設定する。このため50km以内は通常期1,790円、武雄温泉~長崎間では通常期2,290円となる。ただ記載を見る限り繁忙期の設定はあるが、九州新幹線のような閑散期は設定しない見込みだ。これは後述する在来線特急「リレーかもめ」との乗り継ぎを考慮したのだろう。
自由席特急料金では特定特急料金を隣駅全駅間で870円で設定するほか、2駅間ある新大村~長崎間の自由席特定特急料金も870円で設定する。どうやら大村線快速・区間快速シーサイドライナーや競合する長崎県営バス高速シャトルバスから新幹線利用に移動させて少しでも増収を図りたいようだ。
なお西九州新幹線はN700S6両編成で全車普通車での運転となるため、グリーン料金の設定はない。
新幹線と在来線の乗継割引縮小へ
今回の2022年9月23日JR九州料金改定では、西九州新幹線「かもめ」と長崎本線特急「リレーかもめ」の乗継特急料金を設定することとなった。
自由席特急料金は西九州新幹線及び在来線特急「リレーかもめ」のそれぞれの特急料金を1割引することとなった。この連絡特急券は1本の列車扱いとして発券し、券面には幹特在特の表示を打つ。
ただ、2004年3月13日に部分開業した九州新幹線と在来線特急「リレーつばめ」の乗継特急券は、それぞれの指定席特急料金から2割引したものとしていた。この際は1本の列車扱いとしたため自由席は500円引きとしたものの、基本的には割引は縮小している(もっとも近距離では熊本~川内間では自由席特急料金は7.0%、熊本~鹿児島中央間でも10.3%しか割り引いていなかったので近距離ではほぼ同額そうではあるが)。
博多~長崎間では460円しか値上げしないとしているが、そもそも本年2022年4月1日JR九州特急料金改定で790円も特急料金を値上げしているのである。
つまり博多~長崎間では紙のきっぷで普通車自由席を利用する場合、運賃と自由席特急料金を合わせて2022年3月31日までは4,270円で利用できていたが、2022年9月23日以降は5,520円にまで値上げし、たった半年で1,250円、29.3%も値上げすることになる。しかも対面とはいえ武雄温泉での乗り換えが必要になるなど利便性は必ずしも向上しているとは言えない中、3割もの値上げを受け入れられるとは思えない。というか2022年から世界情勢の変化により物価が上がっているが、それを踏まえても3割も値上げするのは尋常ではない。
なお座席指定料金は西九州新幹線「かもめ」と在来線特急「リレーかもめ」を乗り継いでも1列車分の530円のみの徴収となる。このため博多~長崎間は普通車指定席で通常期片道6,050円となる。
ちなみに福岡市内~長崎市内を運行する高速バス九州急行バスはこのJR九州の値上げを受け、普通運賃を2,620円から2,900円に値上げしている。もっとも九州ネットきっぷの当日発売分よりは安いままの低価格だし、直通で2時間30分程度で到着できること、天神からも乗れるとなれば依然利便性は高そうだ。
九州ネットきっぷでも値上げへ!
(2022.06.17. 追記)今回の2022年9月23日JR九州料金改定では、ネットきっぷでも大幅な値上げを行う。
2022年6月現在、JR九州管内のネット予約きっぷは九州新幹線でもその他在来線特急でも九州ネットきっぷの名称で発売しているが、西九州新幹線開業に伴い大幅な値上げもあってか、西九州新幹線に絡むネット予約をかもめネットきっぷとして分離することとした。
では長崎本線特急「かもめ」の九州ネットきっぷと2022年9月23日以降の西九州新幹線「かもめ」と在来線特急「リレーかもめ」を乗り継ぐかもめネットきっぷを比較しよう。
まずは当日購入可能なネットきっぷ。特急「かもめ」の場合は3,150円であるが、西九州新幹線開業後のかもめネットきっぷは4,200円と1,050円、率にして33.3%も値上げする。
次に3日前までに購入の九州ネット早特3改めかもめネット早特3。特急「かもめ」では2,550円であるが、西九州新幹線開業後のかもめネットきっぷは3,600円とこちらも1,050円、率にして41.2%も値上げしている。
最後に7日前までに購入の九州ネット早特7改めかもめネット早特7。特急「かもめ」では2,340円であるが、西九州新幹線開業後のかもめネットきっぷは3,200円と860円、率にして36.8%も値上げしている。しかもおためし!かもめネット早特7と言っている当たり、発売期間を2022年12月31日乗車分までとしているほか、その後は廃止するのか値上げするのかすら不透明である。
おいおい紙のきっぷよりネット予約の方が値上げ率が高いとはどういうことだいJR九州。
ただ朗報が2つ。1つは長崎発着のネットきっぷすべてが浦上での乗降に対応している。つまり、西九州新幹線「かもめ」で終点長崎まで行った後、長崎本線の気動車で折り返して浦上まで行っても良いようだ。
また西九州新幹線開業に伴い所要時間が短縮することに伴い福岡以外の高速バスとも競合し始めようとしているのか、はたまた特急料金が大きく値上げするのを防ぐ激変緩和措置なのかは判然としないが、長崎からのかもめネット予約発売区間が博多のみならず佐賀、小倉、熊本、鹿児島中央、大分と大きく数を増やしている。
このほか新大阪~長崎間のスーパー早特21は、14,800円から15,850円に1,050円値上げすることとなった。
なお佐賀~長崎間のかもめネットきっぷは普通車指定席の530円引きであり、普通車自由席利用と同額となっている。
なお博多~長崎間で九州ネットきっぷと同水準の価格で設定していた2枚きっぷ指定席用は西九州新幹線には適用されず、廃止することとなった。
結び
今回の2022年9月23日JR九州料金改定では、西九州新幹線の開業により博多・佐賀~長崎間などで特急料金を値上げすることとなった。
今後どのように競合交通機関と競るのか、見守ってゆきたい。
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