エクスプレス予約値上げと1年前予約化は座席予約システムのマルス分離狙いか! 東海道山陽新幹線エクスプレス予約価格改定(2023年秋)

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エクスプレス予約値上げと1年前予約化は座席予約システムのマルス分離狙いか! 東海道山陽新幹線エクスプレス予約価格改定(2023年秋)

JR東海・JR西日本は2023年5月30日、プレスリリースにて2023年秋にネット予約エクスプレス予約の価格改定を行うと公表した( 「エクスプレス予約」・「スマートEX」における価格体系の見直し及び新早特商品の発売について )。今回はこれについて見ていく。

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エクスプレス予約基本利用で価格値上げへ

今回の2023年秋東海道山陽新幹線エクスプレス予約価格改定では、東海道新幹線・山陽新幹線区間で価格を改定する。

そもそもエクスプレス予約は年会費1,100円の専用クレジットカードエクスプレスカード利用のみで利用できる商品で、東海道山陽九州新幹線の相互駅間利用時のみに利用できる。年会費を徴収することから商品自体を安く抑えることで多く使えば使うほど割安になるようにしている。

今回の価格改定ではそんなエクスプレス予約の価格を値上げすることとしたのだ。




まず、今回のエクスプレス予約価格改定ではエクスプレス予約の原則である全列車同一区間全日同一料金を撤廃する。きっぷや年会費無料のスマートEXで東海道新幹線を利用する場合、グリーン車や普通車指定席では最速達の「のぞみ」は「ひかり」「こだま」と比べて210円~320円価格を上乗せしているが、エクスプレス予約では全列車同一価格としていた。が今回の価格改定で「のぞみ」「みずほ」と「ひかり」「さくら」「こだま」できっぷ購入時と同様の差額を導入することとした。

また合わせて通年同額だったエクスプレス予約にもきっぷ購入時や年会費無料のスマートEX同様最繁忙期400円増、繁忙期200円増、閑散期200円増を導入する。これにより同一区間同一列車愛称でも日によって最大600円の差が生まれる。

さらに今回の価格改定では線区によって傾向が変わる。東海道新幹線及び東海道山陽新幹線相互利用では遠くなるにつれ割引額が高くなっている。東海道新幹線内では指定席新幹線特急料金の1割引となっているようだ。

なんだか運賃や特急料金が営業キロではなく実キロベースに沿っているように見えるのは気のせいだろうか。

一方山陽新幹線および山陽九州新幹線相互利用ではきっぷの場合の一律380円引きとなっている。

なお博多~鹿児島中央間のみの利用の場合は価格を変更しない。おそらく2021年6月25日のエクスプレス予約導入時から今回の東海道山陽新幹線での価格改定を見据えた割高なものとしていたのだろう。




なおエクスプレス予約専用商品であるe特急券は割引率が高くなかったが、今回の価格改定で東海道山陽新幹線で乗車券+e特急券がエクスプレス予約価格と同額となる。つまり、JR在来線と乗り継いで利用する場合、通しの乗車券をあらかじめ買ったうえでe特急券を買うことで、新幹線相互駅以外の利用でもe特急券利用でエクスプレス予約相当の割引が受けられるようになる

このためe特急券も東海道新幹線完結区間は特急料金の1割引き相当だし、山陽新幹線完結区間では普通車指定席の380円引きとなる。

これで興味深いのが、東京~新大阪間および東京~新神戸間の「ひかり」「こだま」の通常期指定席特急料金は5,490円だが、東京~新大阪間のe特急券は東海道新幹線完結区間のため1割引した5,000円となるのに対し、東京~新神戸間は山陽新幹線区間を含むため380円引きしかされずe特急券は5,110円となる。つまりきっぷの特急料金が同額の区間でもe特急券やエクスプレス予約の特急料金相当額が異なることがあるのだ

なお山陽新幹線区間のみの利用であればe5489から年会費無料J-WESTカード専用のeきっぷ(特急券のみ)利用と同額になるので、年会費を支払ってまでエクスプレス予約を利用する必要はなさそうだ。

一方、一般的なクレジットカードから登録できる年会費無料のプラスEXでは、普通車指定席はきっぷの200円引きには変わらない。なお2023年4月1日に新大阪~博多間の「のぞみ」「みずほ」新幹線特急料金改定を行ったが、その値上げ分反映を今回のエクスプレス予約価格改定と同時に行う。

なおのぞみファミリー早特やEX早特、EX早特21などの先行予約商品は今回は価格を据え置く。もっとも今回のプレスリリースにはEX早特28の発売開始も告知されているが、これらの商品も2021年に価格改定を行っているため、この5年でみれば少しずつ価格が上昇しているのは否めない。




東海道山陽新幹線のぞみ値上げへさらに進展へ!

また今回の2023年秋エクスプレス予約改定では、普通車自由席利用時は価格をほぼ据え置く。

これまでエクスプレス予約は普通車なら指定席でも自由席でも同額なのがウリだったが、今回の価格改定で普通車指定席は値上げするものの普通車自由席はほとんどの区間で値段を据え置くどころか一部区間では値下げするため、普通車自由席利用の方が安くなる。

これによりエクスプレス予約の普通車指定席と普通車指定席の差額は「ひかり」「さくら」「こだま」利用時でも100円~300円程度の差額が発生する。

もっとも普通車指定席やグリーン車にさらなる割増特急料金を設定している「のぞみ」「みずほ」は普通車指定席と普通車自由席の差額がさらに広がることになる。これでは自由席利用者が増えるではないか。

とはいえ、JR東海では2024年3月までにすべての営業列車のブレーキ力を高め東海道新幹線内で300km/h運転をできるようにする見込みだ。その際に「のぞみ」新幹線特急料金値上げに合わせ全車指定席化すれば「のぞみ」自体に自由席の設定がなくなるため同一列車内での差額を気にする必要自体がなくなる。

そう考えるとエクスプレス予約での「のぞみ」「みずほ」と普通車自由席利用の価格に差が開くのはあくまで一過性のものと言えるだろう。




東海道山陽九州新幹線の1年前予約開始で航空機と競合・協力へ!

ただ、今回のエクスプレス予約価格改定のもくてきは値上げだけなのだろうか。

今回のプレスリリースを見ると、「新幹線と、ホテルや旅先での交通手段、観光プラン等のご旅行全体をシームレスに予約・決済いただく「EX-MaaS(仮称)」の導入や、ご乗車日の約1年前から指定席をお申し込みいただけるようになる」としている。

もし東海道山陽新幹線の新幹線特急券を1年前から予約できるようになれば、航空機からのシェアをより一層奪えるようになり、環境にもやさしくなる。

また2020年以降国際航空路線と高速鉄道のセット搭乗券を発売する動きが主流となってきており、フランス国鉄SNCFやDBドイツ鉄道、スペイン鉄道RENFEなどヨーロッパの鉄道で導入したほか、アジアでは韓国鉄道KIRAILでも2023年より導入した。もし1年前から東海道山陽九州新幹線の座席を予約できるようになればJALやANAなどの日系航空およびコードシェアしている国際線から新幹線への連絡きっぷを発売することができるようになり、成田・中部・関空の各空港のみでカバーできないエリアへの乗車券も一括購入できるようになる。

そうなればJR東海やJR西日本、JR九州の増収増益につながるだろうし、日本国内では競合しているJALやANAにとっても悪い話ではないだろう。




今回のエクスプレス予約価格改定の真の目的は、マルスからの分離による予約システムJR東海内製化か!

2022年現在、東海道山陽九州新幹線の座席予約は、JRシステムのマルスを使用している。現状列車の座席予約は1か月前からだが、1年前発売開始に繰り上げるとなると単純計算で12倍の座席指定状況を入れなくてはならなくなる。そんなことはできるのだろうか。

JRシステムのマルスは機器の老朽化の対処にはしているものの原理は1960年に開発したシステムから変わっておらず、60年以上にわたり全国の新幹線・JR特急の座席予約機能のほか、乗車券経路設定や販売などの機能を稼働させている。

とはいえ機械には性能の限界がある。全国の新幹線・JR特急の座席予約管理の他にも複雑な乗車券経路や特例なども盛り込んでしまっているほか、ダイヤ改正により座席指定列車の運転本数が増加しているため、1980年10月1日に指定席の予約開始を乗車日1か月前発売にして以来発売日繰り上げができていない。これはすでに扱うデータ数がすでに多くなっているため、定期列車本数×日数分のデータ増加を行わなければならない予約開始日前倒しが容量的にできないためである。

この間に新幹線と競合する航空各社はそれぞれ独自の予約システムを構築したことから、航空券の半年前発売が可能となり早期予約シェアを一手に引き受けている。

もっともJR旅客各社もだまってはおらず、JR東日本のえきねっと、JR東海のエクスプレス予約、JR西日本のe5489などの各種ネット予約では1か月と1週間前から事前予約はするようにしたが、航空機の半年前発売には到底及ばない。

とはいえ新幹線で一番利益を上げている東海道新幹線を運営するJR東海としては、何としてでも予約開始繰り上げをしたい。そこでJR東海が編み出したのが、JRシステムマルスからの東海道新幹線予約機能の分離・自社内製化ではないだろうか




もし東海道新幹線の予約システムをJRシステムのマルスから分離すれば、JR東海の開発する新予約システムは東海道山陽新幹線、最大でも九州新幹線さえ予約できれば済むようになる。このため全国の新幹線・JR特急を扱うマルスと比較して取扱駅数を大幅に減らせるため容量をあまり使う必要がなくなり、その分予約可能列車数の増加につなげられる。この予約可能座席数を単純計算で12倍すれば1か月前発売から1年前発売に繰り上げられるというわけだ

JR東海では2027年以降にリニア中央新幹線を開業数としているが、住民説明会で駅には切符売り場を設置せず、すべてネット予約で完結させるとしている。もっともエクスプレス予約やスマートEXの利用を想定しているのだろうが、どうせ新線開業に際し大量の座席予約を入れるシステム構築を行うなら東海道新幹線や直通する山陽新幹線、九州新幹線事新座席予約管理システムをJR東海自社で導入しようということになったのだろう。

またこのJR東海が自社開発した新予約システムは東海道新幹線と直通する山陽新幹線「のぞみ」「ひかり」も対象となるほか、山陽新幹線の東海道新幹線と乗り入れない列車やと2022年6月25日よりエクスプレス予約サービスを開始した九州新幹線も恐らく2023年内のエクスプレス予約価格改定前か同時にJR東海が内製化した新座席予約システムに移行するだろう。

これによりJR東海は東海道山陽九州新幹線の新幹線停車駅間のみ利用時の運賃計算のほか、座席予約システムも内製化するのだろう

おそらくスマートEXの「のぞみ」「みずほ」価格を2023年4月1日のきっぷ価格値上げ時ではなく2023年秋に実施するのも、エクスプレス予約サービス全てにおいて普通車指定席やグリーン車において「のぞみ」「みずほ」と「ひかり」「さくら」「こだま」できっぷやスマートEX利用時と同じ差額を設けて価格計算を簡素化するのも、ジャパン・レール・パスの「のぞみ」「みずほ」オプション券発券が2023年10月開始なのも、2023年秋の東海道山陽九州新幹線座席予約管理システムのJRシステムからJR東海移管に合わせて行うためなのだろう。




JR東海のJRシステムへの支払手数料削減で利益確保か!

またこれらの東海道山陽九州新幹線座席予約システムのJR東海内製化によるメリットはほかにもある。

そもそもJR旅客6社の座席予約システムを一括管理しているJRシステムのマルスだが、座席予約件数に応じてにJRシステムにマルスシステム利用料を支払っている。しかも1件あたりで均等に割っているのであれば、利用者が多いにもかかわらず駅数があまり多くないJR東海からすれば割高な手数料を支払うことになる(もじかしたらJR北海道・JR四国の収支対策で2社にはマルス利用手数料を割り引いている可能性すらある)。

もっともJR東海も中央本線特急「しなの」や高山本線特急「ひだ」などの在来線列車は引き続きJRシステムのマルスでの座席予約となるほか、新幹線と在来線を乗り継ぐ乗車券発券でもJRシステムのマルスを引き続き使用する(なお乗継割引特急券は在来線特急のみでの単独発券が可能なため、東海道山陽新幹線分はJR東海が構築した新座席予約システム、在来線特急分は従来通りJRシステムのマルスで分けることで対応可能)。このためJR東海とJRシステムの縁が切れるわけではないが、JR東海で圧倒的に利用の誇る東海道新幹線で予約システムを内製化してしまえば、JRシステムに支払う手数料が大幅に減少するのは間違いない。




むしろJR東日本各駅やJR西日本各駅のみどりの窓口や指定席券売機、みどりの券売機などで発売した東海道山陽新幹線の座席予約にかかわるシステム利用手数料もJRシステムの収入からJR東海の収入へと切り替わる。そうなればJR東海はさらなる増収が期待できる。

そもそもJR東海では2027年以降に開業するリニア中央新幹線の価格を東京~新大阪間で「のぞみ」の3,000円増で想定していたが、国土交通省からの強い要望(ほぼ指示に近い)により「のぞみ」の1,000円増でしか設定させてもらえない。もっとも2024年3月に「のぞみ」新幹線特急料金を多少値上げしても3,000円の値上げには届かない。このためJR東海が新幹線予約システムを内製化することで増収をは図りリニア中央新幹線の低廉価格に努めるということなのだろう。

また2022年4月1日よりえきねっと予約がJR東海管内の指定席券売機で受け取れるようになったのも、エクスプレス予約やスマートEXの予約受け取りが2022年5月22日からJR東日本管内の一部の駅の指定席券売機でできるようになったのも、今回の東海道新幹線座席予約システム内製化ときっと関連があるのだろう。

もっとも山陽新幹線や九州新幹線の座席予約もJR東海が作り上げた新予約システムに移行するが、JRシステムのマルスより維持費が安くつくはずなのでおそらく利用手数料は数%下げるのではないだろうか。そうなれば2020年以降の旅客削減で収益が減ってしまったJR西日本やJR九州にとっても朗報と言えよう。

そうなると今回の東海道山陽九州新幹線予約システムのJR東海内製化に伴い割を食うのがJRシステム、JR東日本、JR四国、JR北海道である。




まず、JRシステムは東海道山陽九州新幹線予約に関してマルス利用料を取れなくなる。東海道新幹線は日本で一番売れている座席指定券であることからこれがなくなるだけで収入が半減程度になると見込まれている。そうなると座席指定処理数が大きく減りメンテナンスコストが多少抑えられるとはいえ減収しすぎて維持ができない。その維持費負担を列車1件あたりで均等に割るとした場合、JR東日本は確実に負担が増えることになる。しかも値上げしすぎた場合はJR東日本も座席予約を内製化する可能性がゼロではないのでJRシステムの収入を同額で維持するほどには値上げができない。

またJRシステムは未だに完全民営化できていないJR北海道やJR四国の経営維持のために両社に対して予約手数料を他社より安くしている可能性もある。が、今回大所帯である東海道山陽九州新幹線の予約が取れなくなることでこのJR北海道やJR四国へのシステム予約割引制度の維持があやうい。そう考えるとJR北海道やJR四国のシステム利用負担が大きく上がっている可能性が高い。これもああって2023年5月20日のJR四国運賃改定に先立って2023年4月1日に東海道山陽九州新幹線との乗継割引を廃止し増収してシステム利用料負担増額分を賄えるようにしたのかもしれない。

またJR東日本でも2021年から2025年にかけてみどりの窓口を7割削減し、140駅程度にまで減らす。JR東日本のみどりの窓口は2000年代には700以上の駅にあったのに2割しか残らない。これは人件費削減も大きいところだが、おそらく各みどりの窓口に東海道新幹線用JR東海の座席予約システムを導入しなければならず、その機器設置費用を縮減する目的もあるのだろう。これもあり、JR東日本管内ではみどりの窓口のみならず大きい駅の指定席券売機の設置数を減らしつつある。

一方JR西日本ではみどりの券売機の削減はあまり見受けないが、みどりの窓口は数を減らしつつあり、2020年から2022年までに半減するとしている。もっともJR西日本は人件費削減の方が大きいような気もするが、JR東海でJR全線きっぷうりばの縮小があまり進んでいないことを考えるとやはりJR東海新座席予約システムのからみは捨てきれなさそうだ。

まあJR東日本は東海道新幹線の乗り入れる東京都市圏のみどりの窓口・指定席券売機を管理しているためJR東海の東海道新幹線座席予約システムは導入せざるを得ない。また新潟や仙台から東京乗り継ぎ東海道新幹線名古屋・新大阪利用もあることからおそらく東北甲信越のみどりの窓口・指定席券売機でも東海道新幹線の座席予約は引き続き取り扱うだろう。

ただ、北海道から東海道新幹線を今時使うかね。これを機にJR北海道では東海道山陽九州新幹線の座席予約を取りやめてもおかしくはない

そう考えると今回のエクスプレス予約の価格改定や1年前からの予約開始導入には壮絶な舞台裏がありそうだ。

これでJR東海が東海道山陽九州新幹線の座席予約システムを内製化しリニア中央新幹線が全通しようものなら、完璧で究極のJR東海が完成するのだろう。


結び

今回の2023年秋東海道山陽新幹線エクスプレス予約価格改定では、各区間で値上げしe特急券利用時と同額となるほか、予約システムを従来のJRシステムマルスから分離することで約1年前からの予約を可能とする見込みだ。また将来的に国際航空線との連絡乗車券の発行もできるようになるかもしれない。

今後リニア中央新幹線の開業を控える中、JR東海を中心に新幹線システムをどのように構築していくのか、そしてJR東海が日本国外の交通機関とどのように連携を取っていくのか、見守ってゆきたい。

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