JR東日本は2024年11月6日、プレスリリースにて2025年1月に会社分割を行い不動産事業を分離すると公表した。今回はこれについて見ていく。
相次ぐ鉄道会社の会社分割
2025年1月、東日本旅客鉄道は不動産事業を会社分割する。
また南海電鉄では2026年4月をめどに鉄道事業を分社化するとしている。
過去に伊予鉄道が2018年4月1日に鉄道事業分社化、東京急行電鉄が2019年10月1日に鉄道事業分社化、富士急行が2022年4月1日に鉄道事業分社化を図るなどしているが、鉄道を含む複合事業を行っていた会社が鉄道事業を分けることでどのようなことをねらっているのか見ていこう。
会社分割最大の目的は運賃値上げ!
鉄道事業分社化の最大の目的は、鉄道運賃の値上げである。
鉄道会社は沿線に宅地を建築し需要を増やすために不動産業を併せて行うことも多い。不動産は値段が高いので儲かりやすい。一方鉄道運賃は国土交通省への上限変更認可申請を行い認可が行われないければ値上げができないし、その値上げには今後3年間の赤字見込みである証明が必要などハードルが高い。
そこで儲かっている不動産事業を鉄道事業と別会社とすることで赤字の鉄道事業の収支を見やすくし運賃値上げに必要な国土交通省への運賃上限変更認可申請による認可を受けるのに必要な今後3年間の赤字見通しを立てやすくしている。
実際東急電鉄は2019年10月1日の鉄道事業分社化後2023年3月18日に大幅な運賃改定を実施しているし、伊予鉄道は2018年4月1日の鉄道事業分社化後2020年10月1日、2021年12月1日、2023年10月1日、2024年11月1日の4回にわたり値上げしており、運賃が25%~40%も値上げしているのである。
このため鉄道事業と不動産事業を2つに分けることは、運賃大幅値上げへの布石とみてよさそうだ。
なぜ東日本旅客鉄道は鉄道事業単体を分社化できなかったのか
鉄道会社の鉄道事業分社化は基本的に親会社から鉄道事業を切り離し子会社化させることで鉄道事業単体会社を成立させることによる。これにより赤字の鉄道事業を別会社として切り離すことで鉄道事業単体での収支を見やすくしつつ株主配当を増やすことができる。
が、東日本旅客鉄道は利益の出る不動産事業を切り離し、親会社本体に鉄道事業を残すこととした。
これは東日本旅客鉄道は1987年4月1日に日本国有鉄道から分社化した国策会社であり、その分割により成立した東日本旅客鉄道の鉄道事業子会社化は国策に触れてしまうという懸念があったのだろう。このため鉄道事業を親会社から切り離せないことから、収益性の高い不動産事業を子会社化するに至ったのだろう。
結び
今回の2025年1月東日本旅客鉄道会社分割では、鉄道事業と不動産事業を別会社化することにより鉄道事業の収支を見やすくし値上げを図りやすくすることとした。
今後鉄道事業の分社化は進むのか、そしてJR東日本でどのような運賃改定を行うのか、見守ってゆきたい。
関連情報:会社分割(簡易吸収分割)による事業の承継に関するお知らせ – JR東日本
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