東京から品川、新横浜、名古屋、京都、新大阪へと向かい、半分程度の列車がその先新神戸、岡山、広島、小倉、博多へと乗り入れる東海道新幹線のぞみ号。
東京・名古屋・大阪の一千万都市圏3つをまたぐことから利用者も多く、終日16両編成最大毎時12本で運転するなどもはや285km/hで走る通勤電車と言っても過言ではありません。
が、実は東海道新幹線のぞみ号で所定の最高速度285km/hで運転している列車はごくわずかで、ほとんどの列車は265km/hまでしか出していません。
今回はこれについて見ていきましょう。
そもそも東海道新幹線のぞみ号とは
東海道新幹線のぞみ号は、JR東海の運転する看板列車です。
JR東海の収入の90%以上が東海道新幹線と言われており、その中の80%以上が最速達列車ののぞみ号が占めています。
東海道新幹線のぞみ号は東京から品川、新横浜、名古屋、京都、新大阪へと向かい、半分程度の列車がその先山陽新幹線の新神戸、岡山、広島、小倉、博多へと乗り入れる。
東京・名古屋・大阪の一千万都市圏3つをまたぐことから利用者も多く、終日16両編成最大毎時12本で運転するなどもはや285km/hで走る通勤電車と言っても過言ではありません。
東海道新幹線のぞみ号の東京~新大阪間の所要時間は最短で2時間21分ですが、たいていの列車で2時間27分~2時間30分となっています。
また東海道新幹線の最高速度は285km/h、山陽新幹線の最高速度は300km/hとなっています。もっとも列車の運転速度が線路最高速度を1km/hも超えようものなら日本では処分案件ですから通常ダイヤは最高速度よりやや低めに設定し5km/h程度下げて列車時刻を設定することが通例です。山陽新幹線ではほとんどののぞみが290km/h程度で運転していますが、東海道新幹線ではたいていののぞみが265km/h、出しても270km/hまでしか出しません。なぜでしょうか。
所要時間ごとの最高速度
東海道新幹線のぞみ号は、時間帯によって所要時間が異なります。
最速列車は東京~新大阪間を2時間21分で結びますが、そんな速い列車は1日10往復も運転がなく、たいてい2時間27分~2時間30分運転となっています。
東京~新大阪間所要時間 | 最高運転速度 | 運転時間帯 | 備考 |
2時間21分 | 282km/h | 7時まで、21時以降 | 東海道新幹線最速、特に遅延時の「のぞみ64号」東京行き最終の回復運転は神 |
2時間24分 | 275km/h | 7時まで、20時以降 | 東海道新幹線に44か所点在するR2500カーブでの制限速度。カーブから直線に戻るときの加速がほとんどないため電力的に効率よく運転できる速度 |
2時間27分 | 270km/h | 7時から20時まで | 昼間ののぞみ号の半分がこれ。ただし230km/h~270km/h運転を左右するので高速運転時は実は平均265km/hしか出していない |
2時間30分 | 265km/h | 7時から20時まで | 昼間ののぞみ号の半分がこれ。ただし230km/h~265km/h運転を左右するので高速運転時は実は平均255km/hしか出していない |
以上が所要時間別の最高運転速度です。
たいていの列車で270km/hも出さないほか、265km/hでの運転も多くなっています。
他新幹線との比較
では東海道新幹線のぞみ号の最高運転速度、高速走行時の平均運転速度は他新幹線と比べどれくらい遅いのでしょうか。比べてみましょう。
列車名 | 表記上最高速度 | 最高運転速度 | 備考 |
東北新幹線「はやぶさ」「こまち」 | 320km/h | 315km/h | |
東北新幹線「やまびこ」「つばさ」および臨時「はやぶさ」(単独運転) | 300km/h | 295km/h | 順次引上げ中(E3系「つばさ」と盛岡発着「やまびこ」の東京~福島間は表記上最高速度275km/h、最高運転速度270km/h) |
山陽新幹線「のぞみ」「みずほ」「さくら」 | 300km/h | 290km/h | JR西日本がゆとりダイヤを導入しているためやや運転速度が遅い(東京行き最終「のぞみ64号」を除く) |
東海道新幹線「のぞみ」(2時間21分運転) | 285km/h | 282km/h | |
東海道新幹線「のぞみ」(2時間24分運転) | 285km/h | 275km/h | |
上越新幹線「とき」「たにがわ」 | 275km/h | 270km/h | |
東海道新幹線「のぞみ」(2時間27分運転) | 285km/h | 270km/h | 高速走行時は平均265km/h程度しか出てない |
北陸新幹線「かがやき」「はくたか」「あさま」 | 260km/h | 255km/h | 一見東海道新幹線より遅そうだが、大宮~高崎間は上越新幹線区間のため270km/h走行をしている |
東海道新幹線「のぞみ」(2時間30分運転) | 285km/h | 265km/h | 高速走行時は平均255km/h程度しか出てない |
北陸新幹線「つるぎ」・九州新幹線・西九州新幹線 | 260km/h | 255km/h | いわゆる整備新幹線。255km/h運転を継続してできる |
つまり東海道新幹線は285km/h出せるとはしているものンそんな高速運転を行っている列車はごくわずかで、実はたいていの東海道新幹線「のぞみ」は整備新幹線の九州新幹線「みずほ」と大して変わらないし、何なら東北新幹線「やまびこ」や北陸新幹線「かがやき」よりも遅いと言って過言ではないのです。
なぜ東海道新幹線「のぞみ」はここまで遅いのか
ではなぜ東海道新幹線「のぞみ」はここまで遅いのでしょうか。
もっとも東京~新大阪間2時間21分運転ともなると、275km/h制限のかかる44か所あるR2500カーブを通過したとたん加速をし、また次のR2500カーブ手前で減速しなければならずいちいち電力が多くかかります。これを毎時12本の「のぞみ」でやられると電力不足で運転できなくなりますから終日行うには現実的ではありません。
ただ、2時間24分運転であれば熱海駅カーブや浜松駅カーブを除いて275km/h運転を定常で続けていればいいので、そこまで加速や減速をする必要はありません。つまり走行するに際しそこまで電力を消費しなくて済むわけです。
が、実際にはほとんどの東海道新幹線「のぞみ」がそれより遅い2時間27分~2時間30分運転を行っています。なぜでしょうか。
それは、東海道新幹線には停車駅の一番少ない「のぞみ」のほか、途中停車駅のある「ひかり」、全駅停車の「こだま」も同じ線路を走行するためです。
特に「こだま」は停車駅が多いため、各駅で加減速を行います。当然「のぞみ」もほとんどで同じ線路ですから、「こだま」の加速中と減速中は後ろに「のぞみ」が詰まりやすいのです。
ただ「こだま」だって頑張っています。「こだま」をできるだけ早く運転できるように東海道新幹線用車両は起動加速度は普通の新幹線の1.6km/h/sよりはるかに高い通勤電車並みの2.6km/h/sとしているため各駅で1分ずつ所要時間を短縮したほか、「こだま」はできるだけ早く逃げ切るため駅間で平気で280km/hまで速度を上げます。つまり東海道新幹線の最高速度285km/hというのは昼間においては「のぞみ」のためではなく「こだま」のためにあるようなものです。
実際加減速の多い「ひかり」「こだま」は故障により強い最新型車両N700Sを運用することが多いのに対し、東海道新幹線「のぞみ」のうち2時間27分以上かかる新大阪始発終着列車はたいてい旧型のN700系運用が多くなっています。つまり「こだま」や「ひかり」のうち各駅停車区間で後続の「のぞみ」が詰まってしまいやすいため、まず「ひかり」「こだま」に加減速を急にかけても壊れにくい車両、「のぞみ」には古めの車両を投入しているようです。
一方他の新幹線は走っても高々毎時6本なので、前の新幹線に詰まることなく走り放題です。このため最高速度-5km/h程度での運転を行うことが可能です。
このため東海道新幹線「のぞみ」が遅い理由は「こだま」で詰まりやすいからと列車本数が多いからと言えるでしょう。
抜本的解決策はリニア中央新幹線を開業すること
では解決策はあるのでしょうか。
抜本的な対策は最速達列車「のぞみ」と全駅停車の「こだま」を別線路を走らせることです。つまり東京~名古屋~新大阪間を結ぶ別の線路を新規建設すること、すなわちリニア中央新幹線の開業です。
東海道新幹線「のぞみ」で東京~新大阪間を2時間21分~2時間30分かかるところ、リニア中央新幹線ができれば1時間07分~1時間15分程度で結ぶ見込みです。リニア中央新幹線の開業でたった半分の時間で到達できるようになるのです!
リニア中央新幹線は第一期開業区間である品川~名古屋間でも工事が遅れており2030年以降の開業となる見込みです。それまで待ちましょう。
東海道新幹線「のぞみ」は確かに遅い
東海道新幹線「のぞみ」は7時までと21時以降は最高速度285km/hに近い運転速度で運行しますが、それ以外のたいていの列車は265km/h程度までしか出せません。
が、リニア中央新幹線が開業すればさらに速く到達できるようになります。
リニア中央新幹線が早く開業することを期待しましょう。
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