東海道新幹線にグリーン個室復活とファーストクラス座席設定か 東海道新幹線新座席導入(2025年以降予定)

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東海道新幹線にグリーン個室復活とファーストクラス座席設定か! 東海道新幹線新座席導入(2025年以降予定)

JR東海は2022年10月31日、プレスリリースにて東海道新幹線にグリーン車の上級クラス座席や、ビジネス環境を一層高めた座席の設定などを検討すると公表した( 最新の技術を活用した経営体力の再強化~より安全で、より便利で、より快適な鉄道を目指して~ )。今回はこれについて見ていく。

貧民列車と化した東海道新幹線の車内座席拡充へ!

今回のJR東海プレスリリースでは、東海道新幹線にて「移動時間を一層快適にお過ごしいただけるようなグリーン車の上級クラス座席や、ビジネス環境を一層高めた座席の設定などを検討します」と記載している。

東海道新幹線は全営業列車が16両編成で山陽新幹線とも直通運転を行っていることから、東海道新幹線に座席サービスを変更するとなると山陽新幹線にも影響を及ぼす。つまり東京から大阪を越えて九州まで影響を及ぼし得るのだ。

日本国有鉄道を引き継いだJR旅客6社の座席グレードはグリーン車(旧1等車)と普通車(旧2等車)の2種類である。ただ、航空機ではファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスの基本3種類のほか、航空会社によってはプレミアムエコノミーやお坊さんクラスなど新たな座席グレードを設けている。




そもそも上位クラスの座席とは何だろうか。ただカネを払っていい椅子に座るためのものと思ったら大間違いである。上位クラス座席の最大の目的は移動中に商談を行う・または商機をうかがうためのもの、つまりビジネス目的のためのものである。というか航空機におけるビジネスクラスの語源そのものであり、それに相当する新幹線を含むJRの座席グレードはグリーン車なのである。このためグリーン車はただカネを積めば乗っていいというものではないし、間違ってもポイントプログラムでグレードアップしていいような座席ではない。

が、東海道新幹線では100系新幹線以降普通車のシートピッチ(前後間隔)を94cmから104cmに拡大した一方グリーン車は116cmのまま変えなかったことからグリーン車の座席そのものの地位が相対的に落ちたほか、16両中グリーン車を3両も連結してしまったことから供給超過となってしまい、2003年10月1日の第2次のぞみ大増発によるのぞみ平時毎時3本、最大毎時7本化て顕著化、グリーン車の空席を埋めるためにエクスプレス予約サービスで気軽にグリーン車にアップグレードできるようにしてしまった。このためカネどころかポイントさえ積めば乗ってもよいというグリーン車の乗り方・使い方を知らない9割以上の勘違い者を発生させてしまい、グリーン車がビジネスクラスからプレミアムエコノミー相当に降格してしまった(もっともJR東海の自業自得と言われればそれまでだが)。

しかもその東海道山陽新幹線グリーン車の実質降格をチャンスと見た全日本空輸ANAは2004年12月にスーパーシートをスーパーシートプレミアムにグレードアップし2008年4月にプレミアムシートに変更しラウンジ提供を開始、日本航空JALでも2007年12月より国内線ファーストクラスの提供を開始、車内・機内ビジネス目的の真のビジネスクラスでの東京~大阪間利用者を東海道新幹線から吸い上げることに成功したのである。おかげさまで羽田~伊丹間の航空機は普通席は空席があることが多いが、お金持ちのファーストクラスないしプレミアムシート利用者でにぎわっているためJALとANAが未だに毎時1本ずつ運航し続けても採算に乗せることができるのである。

もっとも超富裕層はプライベートジェットになるのだが、かくして東海道新幹線は富裕層に選ばれない貧民列車となったのである。富裕層が新幹線を選ばなければ航空機は残るし、リニア中央新幹線全通で羽田~伊丹間の航空機の完全移行を目指すJR東海にとって大きな障壁となる。

このため真のビジネス目的の座席の復活と富裕層の取り込みを含む増収目的と、リニア中央新幹線全通に際し富裕層を航空機から引上げさせて羽田~伊丹間の航空機を全滅させる目的で行うのが今回の東海道新幹線の新座席導入である。

では東海道新幹線車内にどのような座席空間を設けるのか、考えてみよう。




東海道新幹線にファーストクラス相当の座席設置へ!

まず今回のプレスリリースにて直接的に書かれているのが、「グリーン車の上級クラス座席」である。

JR旅客各社では原則グリーン車と普通車の2クラス制であるが、JR九州ではグリーン車より料金の高いDXグリーン席を設けているほか、JR東日本ではE5系とE7系にグランクラスを設置、ファーストクラス相当の座席提供を行っている。そう考えると日本一遠距離利用の多い線区である東海道新幹線でもファーストクラス相当の座席を用意しても何らおかしくない。

もし東海道新幹線にファーストクラス相当の座席を設置しようとするとどうなるだろうか。

先述したように東海道新幹線の営業列車はすべて16両編成で、うちグリーン車は3両も連結している。2000年以降全国的にグリーン車利用者が減っており車両更新のたびに座席数が減っている中、1986年からグリーン車の座席数を変えていない東海道新幹線は異常と言わざるを得ない。グリーン車3両中1両、8号車をファーストクラス相当の座席にしてもおかしくはない。

ただ、一般的にビジネスクラスは商談・商機のための座席なので座席数や運転本数を絞ってできるだけ同じ部屋に集めた方がいい。平常時でも毎時4本~毎時6本も運転している「のぞみ」すべてに連結するのは多すぎやしないか。

そう考えると、博多乗り入れ「のぞみ」毎時2本~毎時3本にだけファーストクラス相当の座席を設け、あとの列車は必要ないともいえそうだ。

ほかに、そもそもファーストクラス相当の座席を1両の半室として1列車あたり20~30席程度しか設けない方法もあるだろう。東海道新幹線の車両は胸痛運用できた方が車両効率は良いので、全車両8号車の半分をファーストクラスシート相当として運転する可能性も考えられる。




東海道新幹線ファーストクラス座席仕様・サービスはいかに

では東海道新幹線ファーストクラス相当の座席仕様・サービスはどのようになるのか。

座席グレードの比較を見ると、東北新幹線・上越新幹線・北陸新幹線グランクラスはJAL国内線ファーストクラスとほぼ同格のシートピッチ(前後間隔)130cm、座席幅52cmとなっている。

ただ新幹線車内は航空機機内より狭いことが多いため、2人掛け&1人掛けとなるだろう。

東海道新幹線ファーストクラス座席料金はいかに

また東海道新幹線のファーストクラス相当座席の料金はどうなるのだろうか。

日本航空JALファーストクラスは普通座席運賃の一律8,000円増し、全日本空輸ANAのプレミアムシートは羽田発着の場合普通座席運賃の7,000円~1万円増しのことが多い。ただ、航空機の通常普通運賃は新幹線のグリーン車並みの値段がするほど高いので新幹線の普通車指定席との差額はより多く設けても総額で航空機より安くなることもしばしばある。

実際JR東日本東北新幹線のファーストクラス相当座席グランクラスは2010年3月5日の運転開始当初はグリーン車の一律5,000円増しで設定しており、「はやぶさ」普通車指定席との差額は東京~仙台間で7,000円、東京~新青森間で10,000円としていた。まさに全日本空輸ANAのプレミアムシートの差額とほぼ同一である。その後消費税増税と2022年3月12日のJR東日本グリーン料金値上げにより差額は東京~仙台間で9,430円、東京~新青森間で11,840円にまで広がり、その後開業した北陸新幹線東京~金沢間は15,370円、北海道新幹線東京~新函館北斗間は17,780円とかなりの差額だが、今回の東海道新幹線ファーストクラス相当の座席設置の料金の参考にはなりそうだ。

では東海道新幹線のファーストクラス座席の料金はどのようになるのか。

そもそも羽田~伊丹間のJALファーストクラス運賃は34,250円だが、東海道新幹線東京~新大阪間の2023年9月現在のぞみ通常期普通車指定席は14,720円、のぞみ通常期グリーン車は19,590円となっている。

また羽田~広島間のJALファーストクラス運賃は43,200円なのに対し東海道山陽新幹線の東京~広島間の2023年9月現在のぞみ通常期普通車指定席は19,440円、のぞみ通常期グリーン車は26,700円となっている。

さらに羽田~福岡間のJALファーストクラス運賃は50,300円である一方、東海道山陽新幹線の東京~博多間の2023年9月現在のぞみ通常期普通車指定席は23,390円、のぞみ通常期グリーン車は30,650円となっている。

つまりJALファーストクラスやANAプレミアムクラスと比べて東海道山陽新幹線のグリーン車は安すぎるのである。もっとも新幹線のグリーン車はプレミアムエコノミー相当だからそりゃあそうなのだが。

正直普通車指定席とファーストクラス相当の座席との差額は、東京~新大阪間では1万8千円設けても圧倒的な運転本数を誇る東海道新幹線なら勝負になるし、広島空港が広島市街地からあまりにも遠すぎて新幹線が有利な東京~広島間で2万3千円の差額を設けてもいける。東京~博多間は表面上2万6千円の差額を設けると航空機と値段は互角だが、福岡空港が福岡市街地から至近で博多駅から地下鉄で5分で着いてしまうこと、新幹線は約5時間かかることから同額ではさすがに不利だ。

そう考えると、東海道山陽新幹線全線でファーストクラス相当の座席はグリーン車の約1万円増しで設定するのではないか。もしこの場合、東京~新大阪間は約3万円、東京~広島間は約3万7千円、東京~博多間は約4万1千円でのぞみファーストクラス相当座席を利用できる見込みだ。




東海道新幹線にビジネス環境座席も設定へ!

また今回のJR東海プレスリリースでは、ビジネス環境座席も設定するとしている。

が、これは2021年10月より一部の「のぞみ」7号車で車内仕事用S work車両として導入しているほか、全駅停車の「こだま」でも2023年10月20日より一部の列車で7号車をS work車両とする。おそらくビジネス環境座席とは普通車指定席と同額で利用できるS work車両のことを指しているのだろう。




グリーン個室復活なるか

このほかJR東海ではS work車両導入列車の7号車にあった多目的室を改修、ビジネスブースとして有料開放している。

利用時間は1回30分までとしているが、環境空間は2人用個室である。

近年JR東海のみならず鉄道各社がこぞって駅の改札口付近に個室のビジネスブースを設置しているが、それの車内版ともいえよう。

1986年3月~2003年8月まで東海道新幹線を運転していた16両編成の100系新幹線には2階建て車両の9号車1階に1人用~4人用のグリーン個室を設定していた。定員人数と同じ人数で利用する場合グリーン車座席利用時と同額で利用できた。このうち1人用グリーン個室が快適に1人で作業できるワークスペース環境にそっくりなのである。当時はノートパソコンが普及しておらず携帯電話もほとんどなかったためビジネス用に使われることはあまりなかったが、2023年時点で各駅に個室のビジネスブースがあり日本一長距離移動の需要が多い東海道新幹線でも個室が求められていることを考えると、100系新幹線は時代を先取りしていたと言えよう。

そうなるとかつて東海道新幹線に存在したグリーン個室が復活してもおかしくはない。




東海道新幹線グリーン個室料金はいかに

では東海道新幹線グリーン個室料金はどのようになるのだろうか。

東海道新幹線の1人用個室はまさに自分だけのワーキングスペースであることから普通車指定席より価値が高いのは当然だし、3人用個室や4人用個室は商談・商機用スペースであるからグリーン料金またはそれ以上の料金を徴収してしかるべしである。

そうなるとグリーン料金以上になることはほぼ確実で、グリーン料金+1人当たり5,000円程度徴収する(つまりグリーン車座席とファーストクラス相当の座席の中間くらいの値段)としてもおかしくはないのではないだろうか。


結び

JR東海では、増収目的や東京~大阪間の移動方法の独占化を図るためにファーストクラス相当の座席のほか様々な座席を用意することで囲い込みを図ろうとしている。

今後東海道新幹線やリニア中央新幹線でどのような座席を設定していくのか、楽しみにしたい。

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