汎用特急車両とは、フラッグシップ車両ではない、つまり目玉車両ではない特急型車両のことである。
線区を問わず運転することが多いため、ある一定数以上の本数を必要とする。
近畿日本鉄道では公式に使用している用語であるが、これに相当する車両は日本中、いや世界中にあると言ってみ過言ではない。
もっとも当初から汎用特急車両として投入した車両もあるほか、当初フラッグシップ車両として投入したものの経年が経ち新型車両が出た際に汎用特急車両となった車両も存在する。
では日本にどのような汎用特急車両があるのか、見ていこう。
国鉄185系
国鉄185系は1980年に東海道線特急「踊り子」号用車両として、その後1982年には東北・上越新幹線連絡列車「新幹線リレー号」として投入した車両。1985年の東北・上越新幹線延伸に伴い高崎線を中心とした新特急として運転を開始する。
1987年に国鉄分割民営化以降、新特急の運用を減らしたことで運用が余るようになり各種臨時列車・団体列車に使用するようになり汎用特急化。2015年以降順次新汎用特急型車両E257系に運用を置き換えられている。
JR北海道キハ261系
一応形式上は1999年から存在する車両。当初は宗谷本線特急「スーパー宗谷」向け車両として投入した。
が、2006年から北海道内特急各線に投入し順次キハ183系を置き換えた。これにより北海道の気動車特急のほとんどがキハ261系運転となってしまったため汎用特急化。
一応1999年に投入した特急「スーパー宗谷」向けキハ261系と2006年以降に投入したキハ261系は同一形式となっているが、投入経緯を考えればもはや別ものなのかもしれない。
JR東日本E257系
JR東日本が2001年の導入当初から汎用特急目的で投入した車両。中央本線特急「あずさ」「かいじ」や内房線特急「さざなみ」、外房線特急「わかしお」などに使用。
が、房総特急の利用者減少による減便で運用が余ったため、臨時列車や団体臨時列車に使われることも多い。
小田急電鉄30000系EXE
小田急電鉄が1996年から投入した特急型車両。当時通勤利用が増えていたことから特急ロマンスカーの停車駅を増やし観光向けの展望席を設置しない斬新な車両としてフラッグシップ列車として設定したつもりだった。
が、展望席がないことから小田急の特急車両で唯一ブルーリボン賞を逃したほか、乗客アンケートにより小田急ロマンスカーと言えば展望車というのが最多得票に達したため、広告などに使う特急型車両を旧型の10000系HiSEに差し替えるに至った。
また新時代の特急型車両として意気揚々と大量投入してしまったため30000系EXEが汎用特急化したに至る。
西武鉄道10000系ニューレッドアロー
1993年より特急レッドアローの置き換え用車両として投入した車両。池袋線特急・新宿線特急を全て置き換えたのち、2019年より池袋線特急に001系Laviewを投入したことでふたっぐシップ特急から落ち汎用特急化。
東武鉄道200系りょうもう
東武1800系の特急格上げ目的で投入した車両。ビジネスライナーという愛称も付けられていた。
ただ、ほぼ同時期に投入した日光線特急向け100系スペーシアをフラッグシップ車両としておいたため、200系はフラッグシップ車両として扱われることはほとんどなかった。
東武鉄道500系
分割併合のできる特急列車として2017年4月21日東武鉄道ダイヤ改正より運転を開始した車両。
ただ、2022年に特急各線に運用を大きく拡大したほか、2023年に登場するN100系スペーシアXがフラッグシップ列車を担うこととなったため汎用特急化しつつある。
JR東海373系
1995年よりJR東海が投入した特急型車両。目的は定期急行列車の特急格上げだが、臨時列車として運転する際には急行として運転することが多い。
身延線特急「ふじかわ」や飯田線特急「伊那路」のほか、快速「ムーンライトながら」やホームライナー各種臨時列車(主に急行)として運転するなど、種別を問わず使われることが多い。
近畿日本鉄道汎用特急車両各種
汎用特急車両の名づけの元祖。特に愛称のない特急型車両に付けることが多い。新製当初より汎用特急車両として投入することが多い。
最新型汎用特急車両のAceは客室内にコンセントがあるなどアーバンライナーや伊勢志摩ライナーより設備がいいものもある。
JR西日本287系
2010年より特急「こうのとり」や「きのさき」、「くろしお」などで183系(485系からの改造車)や381系の置き換え目的に入れた車両。新製車両であるが10年以上前に投入した289系(元683系)と運転線区がほぼ同一で前面形状もあまり遜色ない。
JR西日本キハ187系
2000年から投入した鳥取県・島根県向け汎用特急型気動車にして唯一のJR西日本所属の特急型気動車。
JR九州783系
1988年にJR九州のフラッグシップ列車として登場し、鹿児島本線特急「ハイパー有明」や日豊本線特急「にちりんシーガイア」などに投入した。
が、高速バスとの競合のために振り子式車両883系・885系を投入することとなったため日豊本線から離脱、2004年3月13日の九州新幹線部分開業により鹿児島本線でのほとんどの運用を失い九州各地を転々とすることに。
しまいには中間運転台改造までして分割併合特急として「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」を運転するに至った。
JR九州787系
1992年にJR九州のフラッグシップ列車として登場し、ビュッフェ付き車両付きの特急「かもめ」として運転し続けた。
2004年3月13日の九州新幹線開業に伴い特急「つばめ」を特急「リレーつばめ」に短縮したことからビュッフェ車の価値が低下、2011年3月12日の九州新幹線全通に伴い鹿児島本線での運用をほとんど失い九州各地に転属し汎用特急化した。
4両・6両・7両・8両と細かに編成両数を変えられることから九州各地になじみやすいようだ。
東海道新幹線N700系
2007年7月1日東海道新幹線ダイヤ改正で運転を開始した。当初は新幹線初の車体傾斜装置搭載と高加速度による所要時間短縮を図ったほか、2015年3月14日ダイヤ改正で最高速度を285km/hに引き上げたフラッグシップ車両。
その後2020年3月14日東海道新幹線ダイヤ改正で全列車がN700系運転になったほか、すぐ後に最新型車両N700Sが出てきてしまったため汎用特急ならぬ汎用新幹線車両化してしまった。
上越新幹線・北陸新幹線E7系・W7系
2014年3月15日ダイヤ改正で長野新幹線(北陸新幹線)で運転開始。当初は2015年3月14日の北陸新幹線金沢開業に向けた北陸新幹線用車両だった。
が、そもそも北陸新幹線の最高速度は260km/hまでしか出さないため、既に投入していたE5系やE6系のような320km/h運転や車体傾斜装置の搭載を見送っている。
また北陸新幹線の複周波数に対応していることから、JR東日本管内のフル規格新幹線各線にほぼ乗り入れできるなど汎用性が高く、実際に団体臨時列車として仙台まで乗り入れたことがある。
また2019年3月16日上越新幹線ダイヤ改正より上越新幹線にもE7系を投入しており、2023年3月までに統一する見込みだ。これによりさらに汎用特急ならぬ汎用新幹線車両化が進む見込みだ。
結び
このように、汎用特急型車両は日本全国にあります。
が、日本の新幹線や特急列車の大半は汎用特急型車両による運転です。この汎用特急型車両がいなければ日本の旅客輸送は支えきれない、つまり縁の下の力持ちと言っても過言ではないでしょう。
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