JR四国は2022年8月26日、プレスリリースにて2023年春の運賃改定に向け上限変更認可申請を行った公表した( 運賃改定の申請について 鉄道事業の旅客の運賃の上限変更認可申請 )。またJR四国は2022年9月2日、プレスリリースにて2023年春に山陽新幹線や寝台特急サンライズ瀬戸との乗継割引を廃止すると公表した( 乗継割引の廃止及びJR西日本に跨る場合のおトクな特急料金の廃止について )。今回はこれについて見ていく。
全線にわたり運賃値上げへ
今回の2023年4月JR四国運賃改定では、全線にわたり運賃の引き上げを行う。
JRグループ企業の税抜き本体価格の運賃値上げは2019年10月1日JR北海道運賃改定以来約3年6か月ぶり、JR四国単体では1996年1月10日改定以来約27年2か月ぶりに本体価格の値上げを実施する。
JR四国では過疎化や高速道路網の拡大により年々利用者数が減る中毎年少しずつ減便を行い、2020年10月1日JR四国ダイヤ改正以降終列車の繰り上げを順次行うことで経費節減を行ってきたが、2019年以前から社長会見でときおり話題に上がっていた運賃値上げを2023年4月1日に行うこととなった。
なぜ4年以上も経過してから行うこととなったのかというと、2020年から世界的に利用者数が大きく減ってしまい運賃値上げ幅が読めなくなってしまい、運賃上限変更に必要な認可申請書を記載できなかったためである。今回はその運賃上限額をこのご時世での減収も反映して上乗せすることとしたようだ。
今回の2023年4月1日JR四国運賃改定では、定期と定期外合わせて15.2%の運賃改定を行うこととなった。それでは次に実際にどのような運賃となるのか、見ていこう。
運賃改定前後の運賃比較
それでは2023年3月31日までの運賃と2023年4月1日以降の運賃を並べて比較しよう。
以下の運賃はJR四国管内幹線運賃である。地方交通線の場合は営業キロに1.1倍を掛けて算出する。
営業キロ (1km未満端数切り上げ) |
JR四国 改定前 |
JR四国 改定後 |
値上げ率 |
1~3 | 170 | 190 | 11.8% |
4~6 | 210 | 240 | 14.3% |
7~10 | 220 | 280 | 27.3% |
11~15 | 260 | 330 | 26.9% |
16~20 | 360 | 430 | 19.4% |
21~25 | 460 | 530 | 15.2% |
26~30 | 560 | 630 | 12.5% |
31~35 | 670 | 740 | 10.4% |
36~40 | 770 | 850 | 10.4% |
41~45 | 870 | 980 | 12.6% |
46~50 | 970 | 1,080 | 11.3% |
51~60 | 1,110 | 1,240 | 11.7% |
61~70 | 1,300 | 1,430 | 10.0% |
71~80 | 1,470 | 1,640 | 11.6% |
81~90 | 1,660 | 1,830 | 10.2% |
91~100 | 1,830 | 2,010 | 9.8% |
101~120 | 2,130 | 2,310 | 8.5% |
121~140 | 2,460 | 2,750 | 11.8% |
141~160 | 2,790 | 3,190 | 14.3% |
161~180 | 3,230 | 3,630 | 12.4% |
181~200 | 3,560 | 3,960 | 11.2% |
201~220 | 3,890 | 4,400 | 13.1% |
221~240 | 4,220 | 4,730 | 12.1% |
241~260 | 4,660 | 5,170 | 10.9% |
261~280 | 5,000 | 5,500 | 10.0% |
281~300 | 5,330 | 5,830 | 9.4% |
301~320 | 5,660 | 6,160 | 8.8% |
321~340 | 5,880 | 6,380 | 8.5% |
341~360 | 6,210 | 6,710 | 8.1% |
361~380 | 6,540 | 7,040 | 7.6% |
381~400 | 6,760 | 7,260 | 7.4% |
単位:円
JR四国ではこれまで100kmまでは1kmあたり税抜18.21円、100km~300kmはJR西日本など本州各社と同じ1kmあたり税抜16.20円としてきた。が、今回の運賃改定で100kmまではJR九州やJR北海道と同様の対キロ区間制を採用したほか、100km~200kmの1kmあたりの賃率も税抜19.20円として値上げを図った。
100km以内は賃率に関わらず対キロ区間制としているが、対キロ区間制による賃率を超えた大幅な値上げは20km程度までで、25km以遠は比較的賃率+10円程度で済んでいる区間が多い。あくまで20kmまでの大幅な値上げに対する緩衝区間ということなのだろう。
また今回の運賃改定でJR四国管内の地方交通線のみ利用時の特定運賃表(JTB時刻表でいうC-2表)および幹線と地方交通線を連続で利用時の特定運賃表(JTB時刻表でいうC-3表)を廃止する。これによりこれらの特定運賃区間でも地方交通線では営業キロを1.1倍にして上記の運賃表に当てはめて算出することとなることから、地方交通線(幹線乗継含む)で営業キロ11kmまでの240円区間は330円に(値上げ率37.5%)、地方交通線で営業キロ15km以内かつ擬制キロ17km以内の290円区間は430円(値上げ率48.3%)に、それぞれ値上げすることとなった。
このほか前回2019年10月1日運賃改定で瀬戸大橋線にかけていた割安な特定運賃を縮小しつつも存続はしていたが、今回の運賃改定で全廃することとなった。これにより児島~坂出間は530円(所定570円から40円割引)から640円に値上げする。
これらの運賃改定により普通運賃は12.51%、通勤定期は28.14%、通学定期は22.43%の値上げとなる。おいおい、普通運賃より通学定期の方が値上げ率が高いということは子育て家庭への影響が大きくないか?いやそれより瀬戸大橋線を値上げして増収を図った方がよいのではないかとさえ思うが。
しかも先述したようにJR四国管内の地方交通線のみ利用時の特定運賃表および幹線と地方交通線を連続で利用時の特定運賃表を廃止したことにより、通勤定期では最大74%の値上げを図っている。さすがにこれには見かねたようで、救済措置として通勤定期値上げ率が50%を超える区間ではアプリしこくスマートえきちゃん経由の見せる定期券とすることで2024年5月19日までの時限措置として値上げ率を最大47.6%にまで緩和する
本州3社との加算額の運賃改定前後の比較
運賃改定前後の変化について見たが、せっかくなのでJR本州3社(JR東日本・JR東海・JR西日本)との運賃差額でも比べてみよう。
なおJR本州3社の消費税10%時運賃は、JR東日本ICカード運賃のうち幹線運賃を10円単位で四捨五入したものになると仮定する。これは10km超では現在のJR6社旅客営業規則に基づく計算が今後も踏襲されると見越して採用した。
営業キロ | 改定前 加算額 |
改定後 加算額 |
1~3 | 20 | 40 |
4~6 | 20 | 50 |
7~10 | 20 | 80 |
11~15 | 20 | 90 |
16~20 | 30 | 100 |
21~25 | 40 | 110 |
26~30 | 50 | 120 |
31~35 | 80 | 150 |
36~40 | 90 | 170 |
41~45 | 100 | 210 |
46~50 | 110 | 220 |
51~60 | 120 | 250 |
61~70 | 130 | 260 |
71~80 | 130 | 300 |
81~90 | 140 | 310 |
91~100 | 140 | 320 |
101~120 | 150 | 330 |
121~140 | 150 | 440 |
141~160 | 150 | 550 |
161~180 | 150 | 550 |
181~200 | 150 | 550 |
201~260 | 150 | 660 |
261~ | 160 | 660 |
単位:円
このようにJR西日本とJR四国の運賃差が拡大し差額が2~3倍程度に広がる。
なお本州と跨ぐ場合には瀬戸大橋線児島~宇多津間加算110円がさらにかかる。よってJR西日本などと乗り通す場合は瀬戸大橋線加算と合わせて差額最大770円となることから、JR東日本とJR北海道の乗り通す場合の差額770円と合致する。
しかも、JR北海道の200kmまでの賃率1kmあたり税抜19.70円とJR四国の200kmまでの賃率1kmあたり税抜19.20円の差は1kmあたり0.50円で、賃率がJR東日本やJR西日本と同等に戻る200km時点での差額は税抜100円となる。消費税10%をかければ110円となるが、この差額が瀬戸大橋線運賃加算額と同一である。
そう考えると、本州から乗り通してJR四国を利用する際の運賃は、本州から乗り通してJR北海道を利用する場合とほぼ同等とになると考えてよいだろう。
なおこれらの2023年4月1日JR四国運賃改定に関するパブリックコメントはこちらで9月11日まで受け付けている。
近距離特急料金値上げへ
また今回の2023年4月1日JR四国特急料金改定では、近距離の特急料金引き上げを行う。
JR四国管内では1990年代に新型特急型車両を投入することで急行を順次特急に格上げしてきたが、その救済措置として特急のうち50kmまでの近距離利用時には急行料金と同程度かそれよりも安い特定特急料金を設定している。今回の2023年4月1日JR四国特急料金改定では、この割安な特定特急料金も値上げすることとした。
まずJR四国管内の25kmまでの普通車自由席特急料金は330円だったが、今回の運賃改定で450円に引き上げる。合わせて普通車指定席利用時の通常期特急料金を1.070円から1,290円に引き上げ、25km~50km利用時の普通車指定席特急料金と同額のA特急料金とする。
また岡山発着を含むJR四国特急を50kmまで利用する場合の自由席特急料金を530円から760円に引き上げ、通常期指定席特急料金の530円引きとする。
なお50kmを超える区間でのJR四国管内の特急料金の引き上げはない。
新幹線や寝台特急との乗継割引廃止へ
また今回の2023年4月1日JR四国特急料金改定では、山陽新幹線や寝台特急サンライズ瀬戸との乗継割引を廃止する。
JR四国では前身である日本国有鉄道の旅客営業規則にならい、JR四国設立後に開通した瀬戸大橋線営業開始後も岡山で山陽新幹線に乗り継ぐ場合および寝台特急サンライズ瀬戸と四国島内の列車を乗り継ぐ場合に、JR四国管内の特急料金が半額となる乗継割引を適用してきた。今回の料金改定でJR四国に関わる乗継割引を全て廃止することとなった。これにより新幹線とJR四国特急を乗り継ぐ場合最大で1,590円の料金値上げとなるほか、運賃も最大500円値上げする。しかも2023年4月1日には山陽新幹線「のぞみ」「みずほ」指定席も値上げを図ることから、三重の値上げが一気に押し寄せることになる。
これにより新大阪・大阪~松山間を山陽新幹線「のぞみ」と予讃線特急「しおかぜ」で通常期に普通車指定席で乗り継いだ場合、2022年時点では11,600円(乗車券6,860円、のぞみ新幹線特急券3,270円、乗継割引適用しおかぜ特急券1,470円)のところ、2023年4月1日以降は13,590円(乗車券7,260円、のぞみ新幹線特急券3,380円、しおかぜ特急券2,950円)に1,990円も値上げする。おかげさまで値上げ率17.1%と、かなりの引き上げるとなる。
なお新大阪・大阪~高知間も約1,900円程度の値上げとなっており、かなりの値上げとなりそうだ。
値上げ対策として、通常期で1列車当たり530円以上安い自由席を利用する(新大阪・大阪~松山間で全て自由席利用にした場合、所要時間は変わらず2023年4月1日以降は普通車指定席より1,390円安い)、快速列車の運転の多い岡山~児島間は快速マリンライナーに乗り換えることで特急料金を安く済ませるなどの方法があるが、いずれの方法を採っても2,000円の値上げ全てを吸収できるわけではない。
JR四国では前回本体価格を変更した1996年1月20日運賃改定で瀬戸大橋線利用加算料金を設けて本州と行き来する場合に割高になるように設定することでJR四国管内での運賃値上げを最小限に留めた。今回の乗継割引廃止も本州と往来する人たちを大きく値上げすることにより極力四国島内から出ない場合に運賃や料金を値上げしないように組んだのだろう。
結び
今回の2023年4月JR四国運賃改定では、200kmまでの運賃賃率を引き上げ最大500円の運賃値上げを図ることとなったほか、近距離特急料金の値上げや山陽新幹線や寝台特急サンライズ瀬戸との乗継割引廃止によりJR四国管内のみ利用者も本州と跨ぐ利用者も大きく値上げを図ることとなった。
今後JR四国でどのような列車運転体系を組むのか、見守ってゆきたい。
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