名古屋鉄道は2023年5月26日、プレスリリースにて2024年3月の運賃改定に向け上限変更認可申請を行った公表した( 鉄軌道旅客運賃の改定を申請しました 鉄軌道事業の旅客運賃上限変更認可申請書 )。今回はこれについて見ていく。
全線にわたり運賃値上げへ
今回の2024年3月名古屋鉄道運賃改定では、全線で運賃を引き上げることとした。
ほぼ同時期に同じく愛知県内で営業するJR東海が鉄道駅バリアフリー料金制度10円加算を導入することから、その措置だろう。
2023年3月18日名古屋鉄道ダイヤ改正で減便を図ったが、大減便のち運賃値上げである。おそらく国土交通省も運賃の上限認可について大幅な減便を行わなければ認可しない方針なのだろう。
普通運賃の改定は以下の通り。
改定日 営業キロ(km) |
2019/10/1 消費税率改定 |
2024/3 改定後 |
値上げ率 |
---|---|---|---|
1~3 | 170 | 180 | 5.9% |
4 | 190 | 210 | 10.5% |
5~7 | 230 | 250 | 8.7% |
8 | 240 | 270 | 12.5% |
9~12 | 300 | 330 | 10.0% |
13~16 | 360 | 400 | 11.1% |
17~20 | 410 | 460 | 12.2% |
21~24 | 460 | 510 | 10.9% |
25~28 | 510 | 570 | 11.8% |
29~32 | 570 | 630 | 10.5% |
33~36 | 620 | 690 | 11.3% |
37~40 | 680 | 750 | 10.3% |
41~44 | 750 | 830 | 10.7% |
45~48 | 810 | 900 | 11.1% |
49~52 | 880 | 980 | 11.4% |
53~56 | 950 | 1050 | 10.5% |
57~60 | 1010 | 1120 | 10.9% |
61~64 | 1070 | 1190 | 11.2% |
65~68 | 1140 | 1270 | 11.4% |
69~72 | 1190 | 1320 | 10.9% |
73~76 | 1240 | 1380 | 11.3% |
77~80 | 1290 | 1430 | 10.9% |
81~85 | 1350 | 1500 | 11.1% |
86~90 | 1400 | 1550 | 10.7% |
91~95 | 1450 | 1610 | 11.0% |
96~100 | 1500 | 1670 | 11.3% |
101~110 | 1590 | 1760 | 10.7% |
111~120 | 1680 | 1860 | 10.7% |
121~130 | 1760 | 1950 | 10.8% |
131~143 | 1850 | 2050 | 10.8% |
単位:円
これにより普通運賃を10.5%、通勤定期運賃を11.6%値上げする。なお通学定期は据え置く。
初乗り運賃は170円から180円に引き上げる。ほかの運賃区分は10~12%程度引き上げているのに対し初乗り運賃の値上げが抑えられているのは、名古屋に乗り入れる大手私鉄である2023年4月1日に運賃改定をした近鉄の
運賃表を見る限り、賃率は2023年4月1日に運賃を改定した近畿日本鉄道とほぼ同一である。
が、営業キロをそのまま運賃計算キロに置き換えるのは名古屋本線のみであり、そのほかの区間は営業キロを1.15倍ないし1.25倍した運賃計算キロを営業キロ表にあてはめる。
つまり、犬山線や常滑線などの主要線区は近鉄よりも割高な運賃となる。
おいおい名古屋本線ってそんなにえらいのか。いやむしろ名古屋本線の急行通過駅で犬山線や常滑線より需要が低いところなんていくらでもあるし、2両編成でもワンマン化していないことを考えたら維持費は意外と高い。
そうなると、そもそも名古屋本線も犬山線や常滑線と同じB線区に落としてJR東海東海道線との競合区間は特定運賃をがんじがらめに設定すればいいだけの話ではないだろうか。
また、もう20年以上も存続を議論しているmanaca非対応区間の広見線新可児~御嵩間や蒲郡線吉良吉田~蒲郡間は営業キロの1.5倍程度のさらなる加算料率を徴収してもよいのではないだろうか。
駅移設に伴う特定運賃廃止へ
また今回の2024年3月名古屋鉄道運賃改定に合わせ、駅移設に伴い営業キロが増えていた3駅に関して従来通りの運賃とする据え置き阻止を廃止し、移設後の営業キロに合わせる。
対象となるのは小牧線上飯田駅、常滑線西ノ口駅、竹鼻線柳津駅の3駅である。
これらの3駅は前回本体価格を改定した1995年9月1日名古屋鉄道運賃改定以降に駅移設を行った駅であり、駅移設により営業キロが短くなった場合は運賃を安くしたが、長くなった場合は運賃を据え置くことで値上げを防いでいた。
これにより小牧線上飯田~味鋺間は本来営業キロ2.3kmのところを2.1kmとしていたほか、常滑線西ノ口駅利用の場合西ノ口~大野町間の営業キロ1.3kmのところ1.0kmに、竹花線柳津駅を利用の場合柳津~南宿間の営業キロ2.3kmのところ2.1km扱いとしていた。これらの特例措置を廃止し駅移設後の営業キロから運賃計算キロを算出す形に改める。
とはいえおおむね4kmきざみで設定している普通乗車券ではほとんど影響がない。影響が出るのは1km刻みで設定している通勤定期や通学定期である。
上飯田~名鉄春日井間は運賃計算キロ5.98kmから6.21kmに延びる。これにより通勤1か月は8,140円から9,720円に19.4%値上げするほか、運賃を据え置くはずの通学定期も1か月3,220円から3,530円に9.6%値上げする。しかも上飯田から先名古屋市営地下鉄との連絡利用も多いから、名鉄春日井から名古屋市営地下鉄利用でも定期券が大きく値上げとなるため影響は大きい。同様の現象が小牧線楽田でも起きている。
そう考えると名鉄春日井や楽田では通勤定期・通学定期の大幅な値上げに注意する必要がありそうだ。
特別車ミューシート値上げも昼間に割安措置設定へ!
また今回の2024年3月名古屋鉄道料金改定では、「ミュースカイ」や快速特急、特急に連結している特別車ミューシート料金を値上げする。
ミューシート料金は2023年現在全区間一律360円となっているが、これを事前購入450円、車内購入500円に値上げする。
事前購入と車内購入で料金を分けるのは2020年以降のはやりではあるが、たいてい差額を200円程度つけることが多い。車内での料金収受の簡便性から車内料金500円としたのだろうが、50円差では効果が薄いように感じる。
一方、平日9時台~16時台の昼間または土休日終日に、中部国際空港発着以外の区間で、名鉄ネット予約サービスを利用した場合に限り300円に割り引く。
つまり観光客や出張利用が多い中部国際空港発着は値上げするが、それ以外の利用は基本運賃が上がることもあり、空いている時間帯はネット予約利用で値下げすることにより着席率を上げたいのだろう。
結び
今回の2024年3月名古屋鉄道運賃・料金改定では、名古屋本線の運賃を近鉄と同レベルに値上げすることになったほか、犬山線や常滑線など主要線区ではさらなる値上げを図ることとなった。
今後名古屋鉄道でどのようなダイヤ改正を実施していくのか、そしてmanaca非対応区間の広見線新可児~御嵩間や蒲郡線吉良吉田~蒲郡間は今後はどうなるのか、見守っていきたい。
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