傾向分析!2019年10月1日消費税増税に伴う運賃改定まとめ

日本全国の鉄道事業者は、2019年10月1日の消費税8%から10%への引き上げ(うち国税分6.3%から7.8%へ、地方税分1.7%から2.2%へ)に伴い、運賃改定を行う。今回はこれについて見ていく。

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1円単位運賃は東日本エリアに留まる

今回の運賃改定では、2014年4月1日運賃改定にて東日本エリアに導入された1円単位運賃のエリア拡大が考えられたが、今回の運賃改定でも東日本エリアに留まることとなった。

基本運賃の計算式に変更はなく、JR東日本以外の場合は消費税5%時の運賃から本体価格を計算し、消費税相当額を転嫁している。基本運賃は以前の記事に記載した通りなので、こちらを参照されたい。

ゆりかもめのきっぷ運賃算出方法変更へ

ただ、変更点はいくつかある。今回の運賃改定よりゆりかもめのきっぷの運賃が10円未満四捨五入から10円未満端数切り上げに変更した。関東地方1円単位運賃導入事業者では10円未満端数切り上げにして必ずIC運賃の方がきっぷの運賃より安くなる(か同額になる)ように設定されているが、2014年4月1日改定時点で10円未満端数切り上げとせず四捨五入としたのは、ゆりかもめの最大普通きっぷ運賃と東京臨海速速鉄道りんかい線の最大普通きっぷ運賃が390円で同額になってしまいかねなかったためである(ゆりかもめ:IC381円、りんかい線:IC390円)。

しかし今回の2019年10月1日運賃改定では最大普通きっぷ運賃が10円差がつくことになったため、周辺鉄道事業者と同じく10円未満端数切り上げに変更するようだ。

これにより1円単位IC運賃を採用してきっぷの運賃を10円未満四捨五入としているケースは、JR東日本の電車特定区間外及び伊豆急行、仙台空港鉄道(見込み)のみに絞られることとなった。

みなとみらい線と多摩都市モノレール、横浜シーサイドラインで1円単位運賃導入へ

そしてもう1つの変更点は、横浜高速鉄道みなとみらい線での1円単位運賃導入である。

直通する東急東横線では1円単位運賃を2014年4月1日改定より導入していたが、みなとみらい線は据え置かれる形となった。おそらく渋谷~桜木町・みなとみらいの運賃がJR東日本の特定運賃より高くなりかねなかったためであると思われるが、今回の運賃改定では渋谷〜桜木町・みなとみらい間のきっぷの運賃がみなとみらい線で初乗り10円値上げしても10円差で確実に安くなると踏んだため、みなとみらい線でも1円単位運賃が導入され、きっぷの運賃はIC運賃の1円未満端数切り上げで算出することとなった。

また多摩都市モノレール及び横浜シーサイドラインでも今回の2019年10月1日運賃改定より1円単位運賃を導入することとなった。

ただ各社とも1円単位運賃の採用時期が他の鉄道事業者と異なるため、計算式が少し異なる。関東地方の鉄道事業者の多くでは消費税5%運賃を基に本体価格を計算し(1.05で割り1円未満端数切り上げ)、そこに消費税相当額を掛けることとしているが、みなとみらい線は消費税8%時は10円単位運賃であったため、消費税8%運賃を基に本体価格を計算し、そこに10%を掛けることとなった。




全国的に消費税5%時運賃を基準に運賃改定へ

今回の2019年10月1日運賃改定で特筆すべきは、消費税8%時の運賃から単純に1.8%を掛けて10円単位で四捨五入して消費税10%時運賃を求めるのではなく、消費税5%時運賃を基にして4.8%相当を掛けて10円単位で四捨五入して消費税10%時運賃を算出した事業者が多いことだ。

これは消費税が5%から8%に増税した2014年4月1日以降に運賃改定を行った鉄道事業者が少なく、かつ増税までの期間が短期間で消費税8%増税時には既に将来的に税率10%への引き上げが実施されることが決定していたためであるものと思われる。

このため、消費税8%への引き上げ時には消費税を転嫁しようと計算しても増加額が5円に届かず10円単位で四捨五入する関係で運賃値上げを行わなかった初乗り運賃が、ICカードでも10円単位運賃で扱うほとんどの事業者で値上げしている。

これにより、阪神電鉄の初乗りは140円から150円に、阪急、京阪、近鉄、南海、西鉄の初乗りは150円から160円に値上げすることとなった。

なお、多くの関西私鉄と西鉄では2区〜4区程度まで運賃を据え置いているが、今回運賃を据え置いた区間は全て2014年4月1日運賃改定で10円値上げした区間となっている。つまり、消費税5%時の運賃と比べて消費税10%時運賃はどの区間も10円は値上げしていることになる(例外は阪神・阪急神戸高速線の2区150円くらい)。

ちなみに名鉄の初乗りは170円となり10円単位運賃導入大手私鉄で唯一据え置かれているが、これは2014年4月1日運賃改定で160円から170円に値上げしたためで、結局大手私鉄のきっぷ運賃の初乗りは消費税5%時と比べて10%時には10円値上げすることとなった(ちなみに2018年4月1日に発足したOsaka Metroは3区まで運賃据え置きとなっている)。

なお、伊豆箱根鉄道や和歌山電鐵など中小私鉄では消費税8%時の運賃を108で割り110を掛け10円未満を四捨五入した事業者もある。

JRグループ各社も10km以内で消費税5%時の運賃を基準に値上げへ

また今回の2019年10月1日運賃改定では、JRグループ各社でも初乗り運賃が値上げされた。

これも多くの関東私鉄・関西私鉄同様消費税5%時の運賃を元に消費税10%時の運賃を計算しているためである。

JR本州3社(JR東日本・JR東海・JR西日本)の運賃は国鉄最後の運賃改定である1986年9月1日運賃改定以降本体価格を変更しておらず、かつ賃率(1km当たりの運賃)から各区間の運賃を計算しており、この運賃を本体価格として消費税を転嫁して運賃を計算している。

しかしこれまでJRグループの10kmまでの運賃は特に決まった計算方法がなく、消費税が改定される度にその都度改訂前税率を割り改定後税率を掛け、10円未満四捨五入をしていた。

そのため、これまで幹線2区6kmまでは消費税率の改定ごとに160円→170円→180円→190円と四捨五入の関係で10円ずつ値上げし、消費税が8%しかないにもかかわらず18.75%値上げしている。

一方幹線・地方交通線初乗り3kmは消費税を転嫁しようとしても毎度5円未満で端数を切り捨てられていたため、3度の消費税引き上げにもかかわらず140円のままとなっていた。

しかし今回の運賃改定では、幹線・地方交通線初乗りを140円から150円に値上げし、幹線・地方交通線2区及び3区を据え置かかととなった。

一番の原因はJR東日本の幹線・地方交通線の多くで1円単位のIC運賃を導入しており、きっぷの運賃を四捨五入で対応するために行う必要があったものと思われる。

結局、消費税5%時の運賃と比べて消費税10%の運賃は、JR西日本の電車特定区間2区160円と本体価格を改定するJR北海道以外は全てきっぷの運賃で10km以内で10円値上げすることとなった。これによりJR東海とJR西日本では国鉄分割民営化以降初となる初乗り運賃の値上げが実施されることとなった。

なお、JR本州3社の10kmを超える区間については引き続き賃率に基づいて計算し、10円未満は四捨五入することは続くこととなった。

JR東海やJR西日本で2019年までにICカード利用可能エリアが拡大したが、1円単位運賃の導入は見送られた。よって国鉄継承事業者ではJR東日本のみがICカード利用できっぷの運賃より高くなる可能性があるようだ。

ちなみにJR九州の運賃も100kmまで対キロ区間制で、消費税率3%時の運賃から算出したようだ。JR本州3社の消費税導入前の運賃からの計算とは計算式が異なることから、JR本州3社の運賃との差額が今回の運賃改定で減額した区間がある(46~50km、61~70km)。

なお今回の消費増税に関する運賃改定も、7月8日から7月21日まで国土交通省でパブリックコメントを受け付けている。インターネット経由なら匿名提出可能であるが、会社の区分により提出先が異なるので、注意していただきたい。

運賃改定に伴い加算運賃減額へ

また今回の2019年10月運賃改定では、一部鉄道事業者で加算運賃の引き下げも実施される。

京急電鉄では羽田空港発着に対して170円の加算運賃を設定しているが、今回の運賃改定に合わせ50円に引き下げ、120円安くするとしている。

また京王電鉄では相模原線に適用している加算運賃を40円値下げすることにより、橋本発着利用かつ京王稲田堤以遠の利用でなければ加算運賃が発生しないことになる。

さらにJR北海道では新千歳空港発着の加算運賃を140円から20円に引き下げし120円安くするとしてるが、代償として後述するように全線での運賃値上げが実施される。特に100km以内で対キロ区間制を導入したことにより賃率によらない運賃設定が可能となり、札幌~新千歳空港間46.6kmに相当する運賃区分から大幅な値上げが実施されている。

そう考えると、建設費完済時点で設定を廃止しなければならない加算運賃の一部を基本運賃に移し、恒久的に実質加算運賃を得ようとしているようにも見受けられる(というパブリックコメントを国土交通省にお送りしたので、現在調査のため認可が滞っている。新千歳空港駅から虎杖浜間の運賃表記が異なっているのが発見されたのもおそらくこの調査活動の過程で発見されたものかと)。

一方、JR西日本関西空港線日根野~りんくうタウン間の加算運賃は150円から160円に、JR四国瀬戸大橋線児島~宇多津・坂出間の加算運賃は100円から110円に値上げする。加算運賃は回収が終了すれば徴収できなくなってしまうことから、利子が増えないというメリットはある一方、加算運賃が早く終了してしまうリスクがある。私鉄各社は定期外利用の加算運賃の値上げはしていないが、果たして。

消費税増税と同時に一部事業者で本体価格も値上げへ

今回の2019年10月1日運賃改定では、消費税増税と合わせて本体価格も値上げする鉄道事業者がある。本体価格値上げ各社は以下の通り。

このほか長崎電気軌道でも、2019年10月1日の運賃改定を実施しないことを前提に2019年4月1日に運賃改定を行っている。

ちなみにバスにも広げると、川崎市営バスがIC206円からIC220円に値上げする見込みだ。

結び

今回の2019年10月1日運賃改定では、消費税率改定に伴い日本全国の鉄道事業者で運賃改定が行われることとなった。

一方、今回の運賃改定に合わせ加算運賃を引き下げる事業者もあるほか、本体価格を値上げするなど、増税による変化しかなかった2014年4月1日運賃改定と比べ多様性がある。

次回の消費税率改定は未定で引き上げのないことを祈りたいが、今後どのように変化していくのか見守って行きたい。


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